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【漫画】あかね噺3 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

落語に魅せられ

情報

作者:末永裕樹、馬上鷹将

試し読み:あかね噺 3

ざっくりあらすじ

「可楽杯」がついに幕を開け、創作落語で一躍有名となった練馬家からしや、若手声優でありながら落語の世界に飛び込んだ高良木ひかる、そしてプロ顔負けの無名女子高生・あかね……例年を遙かに凌ぐ苛烈な争いとなる!

感想などなど

学生アマチュア限定の落語大会「可楽杯」に、寿限無のみで挑むことになった朱音は、兄弟子達に教えて貰うことになった。素直に教えを吸収していく姿勢は、社会人として見習うべきかもしれない。

そんな朱音がとりあえず見せた一席「寿限無」を見た兄弟子・こぐまは厳しい言葉を投げかけた。

君の言い立ては未だ音だね 言葉に成っていない

皆さんは「寿限無」という噺のオチをご存じだろうか。ちなみに自分は知らなかったが、どうやら寿限無という名の子供が死んでしまうようだ。川で溺れた少年二人のうち、寿限無だけ名前が長すぎるせいで助けが来るのが遅れてしまった……子供を想ってつけた長い名前に対して「過ぎたるは猶及ばざるが如し」の皮肉が込められた噺になっている。

そんなタメになる話をしてくれた兄弟子・こぐまが、朱音に見せてくれた演目は「今戸の狐」という可楽杯の名前の由来になった噺である。この噺を兄弟子・こぐまはナレーションのみで噺を展開させた。それによって「新しいことを知る」面白さが際立って得られるようになっている。

享二の突き抜けた真面目さによる面白さ、こぐまによる知識を得る面白さ……それぞれの色を出して話芸を磨いている。今回、誰もが知っている寿限無という演目に対して、どのような色を出すのか?

その答えを確認すべく第三巻を読み進めていこう。

 

落語大会「可楽杯」の予選は、落語の言い立ての巧さで勝ち上がる朱音。これは学生にしては高い技術を見せつけて、力業で抜けたということになる。しかし、本戦では技術の一本槍で勝てるほど甘くない。

そんな朱音のライバルとなりうる噺家は二人いる。

一人目は創作落語で一躍有名となった練馬家からし。

彼は「落語って難しい言葉使い過ぎじゃね?」という懸念を、創作落語という形で解決し爆笑をかっさらう。本戦で彼が選んだ噺は『転失気』という「知ったかぶりをする和尚が転失気という言葉を知らないまま恥をかく」滑稽話を、大学の研究室を舞台に変えた創作落語で勝負。

そもそも和尚という存在に馴染みがない現代社会の人間にとって、大学の研究室の学生という方が想像がしやすく、笑いやすいというのは確かかもしれない。それまでで一番の大ウケで、このままいけば優勝間違いないという空気になった。

二人目は美人女性声優でありながら落語に挑戦した高良木ひかる。

彼女の武器を全て駆使して、劇場型落語と評される落語を演じきった。彼女の選んだ噺は……なんと朱音の父が演じた最後の噺『芝浜』。妻の語りを中心にすることで、彼女にしかできない『芝浜』を演じ、観客の涙を誘うくらいに引き込まれる名演の落語となった。

そんな彼女の後、ついに朱音の出番。

彼女がする噺は決まっている。『寿限無』だ。

こぐまの指導も受けて、彼女が辿り着いた『寿限無』とは何なのか? 是非とも読んで確認してほしい。

 

第一巻からずっと語っていることであるが、本作『あかね噺』は漫画で落語を演出することが巧いと思う。朱音の演じる寿限無は二度目、しかし一度目の『寿限無』とは全く違う形に進化を遂げている。

そしてこれまでの二人――練馬家からしと高良木ひかるとは全く違うプロの姿が、そこには描かれていた。師匠や兄弟子、先生の期待も受けて彼女は大きく飛躍する噺になったと思う。

落語の見せ方や漫画としての見せ方、感心し、感嘆してしまう第三巻だった。

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