工大生のメモ帳

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お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件 感想

【前:な し】【第一巻】【次:第二巻

※ネタバレをしないように書いています。

駄目人間ですが何か?

情報

作者:佐伯さん

イラスト:和武はざの

試し読み:お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件

ざっくりあらすじ

マンションで一人暮らしする藤宮周の隣には、学校で天使様と呼ばれる学校一の美少女・椎名真昼が住んでいる。これまで一切の関わりがなかった彼女が、雨でずぶぬれになっているところに通りかかり、傘を貸してあげたことから不思議な交流が始まっていく。

感想などなど

一人暮らしを始めて、そこそこの年月が経過した。

炊事に洗濯、料理に皿洗いといった家事は当たり前にこなしている……つもりだ。

ただ、仕事で疲れて帰宅した時は、料理なんて作りたくないしコンビニ弁当で済ませることも珍しくない。量と味のわりに高いので避けたいところではあるのだが、辛いが仕方ないという諦めの境地に達している。

さて、本作の主人公・藤宮周は高校生にして一人暮らしをしている。両親との仲が悪くて勘当されたとか、両親が変な仕事をしているとか、そういった事情ではなく、仲が良すぎる故の反抗期的なアレっぽいので心配しなくてよい(2巻にて普通に両親が家に乗り込んでくる、仲は良すぎるくらいだ)。

心配すべきはそんなことより、彼の家の汚さである。

掃除と洗濯ができない人間の家の床に何が転がっているかを想像して欲しい。下着や靴下の類の置き場が、棚ではなく床である。食事関連のゴミはないと明記されているため、コバエ育成所とはなっていないことだけが救いか。しかし足の踏み場がないという状況であることは変わりなく、これでは休まるものも休まらない。

それを掃除してくれる人がいた。隣人・椎名真昼である。

 

神は平気で二物、三物を与える。

美男美女は頭が良くて性格も良いと相場が決まっている。名が体を表し、文字には心が現れるというならば、顔には人生が反映されると思う。その点、椎名真昼という人間は完璧すぎてそら恐ろしさすら覚える。

学業成績はトップクラス、運動神経も良い。そのうえ学校一の美女であり、たくさん告白されたりしているらしい。しかも隣人の汚部屋を掃除してくれるという器の大きさは、現実で遭遇すれば感涙しむせび泣く自信がある。彼女の聖人エピソードは掃除だけに留まらず、日ごろの食事管理までしてくれるに至るのだから、現実で起これば幸せの反動で殺される気がする。

しかも、その食事がめちゃくちゃ美味い。美少女の手料理が怖いと感じたのは初めてである。

まぁ、そんな物語であるということは公式のあらすじを見れば分かること。そういう話だと知ったうえで手に取って読み始めるし、そういう展開を期待している。しかしそこに至るまでの流れがあまりに急ピッチで進み過ぎる。

冒頭は雨でずぶぬれになっている椎名真昼に傘を貸すシーンから始まる。彼女は傘をさして帰ったのだろうが、一方の男の方はというと濡れて帰って風邪をひくこととなる。そんな彼を心配し看病してくれたことで、彼と彼女の関係は一気に進展することとなる。

良い。好き。ラブコメのド定番をド直球で貫いてくれた。

そこから当たり前のように続いていく椎名真昼の通い妻。最初はあまりに生活能力が欠如した彼を心配して、傘を貸してくれたことに感謝して、という一時的な感情だったのだろう。二人の会話も堅かった。

それがいくつもの晩御飯を常に共にして、掃除も一緒にして……軽口も言い合えるくらいに、クリスマスも一緒に過ごすくらいにまで関係性になっていく。なんだこれは、砂糖はどこに吐けばいい?

この第一巻の憎いところは、椎名真昼の抱えている闇が全く明かされないことだ。冒頭、どうして雨でずぶ濡れになっていたのか? どうして一人暮らしをしているのか? てっきり明かされるものだと思って、そこが物語としての山場になるとメタ読みしていたのに、そういった展開は一切なかった。

関係性を深めることにドラマ性は必要ない。なんとなく一緒に食事して、一緒にゴミ部屋を掃除していけば良い感じになるのだろう。

そういえば、タイトルは駄目人間にされていた件となっているが、どうしようもない駄目人間生活を強制されたとでもいうべきだと思う。

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