工大生のメモ帳

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くまクマ熊ベアー 感想

【前:な し】【第一巻】【次:第二巻

※ネタバレをしないように書いています。

職業:クマ

情報

作者:くまなの

イラスト:029

ざっくりあらすじ

株で荒稼ぎしながら、一人で引きこもり生活をしていたユナは、世界初のVRMMOに毎日潜って遊んでいた。そんなゲームの大型アップデートを終えて、いつも通り潜ってみると、一年の総プレイ時間に応じて『クマセット』なるプレゼントアイテムを受け取り、そのまま神なる存在に異世界へと飛ばされてしまった。

感想などなど

異世界へ行くにしても様々な方法がある。一回軽く死んでみたり、なんかゲームやってたらログアウトできなくなったり。本作は『なんか謎の存在に気に入られちゃった系』の異世界である。

また異世界に行ったとして、そこで何をするかにも色々と個性が出てくる。現実世界に何とか戻ろうとするために奮闘したり、現実世界でできなかったことを異世界で達成させたり、というように。本作は『なんかよくわかんないけど、現実に戻ったところで楽しくないから何となく残っとこう系』の主人公である。

異世界へ飛ばされるにしても、何かしたチート能力を授けられることが多い。死に戻りできる力持ちであったり、駄女神を引き連れたり、不思議な力をたくさん持っていたりする。本作におけるチートは、『クマセット』なる装備品がチートに当たる。

まとめ。『クマセット』という最強装備を手に入れた無気力系主人公が、目的もなく適当に生活するスローライフ系作品である。

 

『クマセット』

と聞いてチートを思い浮かべる人は少ないであろう。まぁ、熊という生物は強い。しかし、この装備を身につけた主人公の外観は、強さとは対極にいる可愛らしさを兼ね備えた女の子となってしまう。

だがチートだ。どうチートなのかと言われれば説明に詰まるが、物語進行上でちょっとしたつまずきポイント――例えば、アイテムが多すぎて持てない、遠い場所に移動したいが面倒、時間を潰したい、魔法を使いたいけど使い方が分からない――といった大小様々な諸問題を、それぞれ適したタイミングで解決策という名のスキルを提示してくれる。

最初はただ可愛いだけの装備に、次々とスキルなるものが付与されていき、「あぁ、これから先はスキル項目が増えていって目で追うのも面倒になってくるんだろうな」という予感をヒシヒシと感じさせてくれる。

そんなチートアイテムではあるものの、使い手がアホでは意味をなさない。宝の持ち腐れ、猫に小判では読者としても、異世界に飛ばした神なる存在としても面白くない。ゲーム慣れした主人公・ユナは、スキルの確認に余念なく、戦闘を経験する度に学習し強くなっていく。

その進歩のテンポは恐ろしいことこの上ない。同時に物語のテンポもとてつもなく早い。

まぁ、第一巻でしたことと言えば、ギルドなるゲームではよくお世話になる施設にて、ギルドカードなる身分証的な奴を作り、良く分からない内にたくさん敵を殺しまくってたら、ギルドランクなるよく見る奴が上がっていって、気付けば周りの人に恐れられていた……という一行に収まってしまった。

 

そんな本作はどこに注目すべきかを考えて見ると、ブログ主的には主人公の異様なまでの実力至上主義的な考え方だと思う。現世では株で金を荒稼ぎし、金もあるし学校に行く意味もないという理由で引きこもりゲーム三昧の日々。実力があれば何をして、結果として孤独になったとしても気にしないと考えている節がある。

そんな彼女の考え方通り、世界の住民達は彼女の実力を認め、そして全てを許すだけの寛容な心の持ち主であった。まさしくユナという少女こそが世界の中心なのである。彼女を中心に回っていく世界を、とくとご覧あれ。

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