※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
つまんない人生頑張って。
情報
作者:杉井光
イラスト:植田亮
ざっくりあらすじ
真冬がアメリカから帰ってきて、バンドのメンバーは揃う。そこで響子先輩の手腕により、記念すべき一度目のライブを開催する運びとなった。しかもその前にバンドメンバーで別荘へと赴き、皆で合宿まで開催することになるが、真冬は合宿に参加できないと言い出して……。
感想などなど
バンドはボーカルとギター、ベースにドラムスの計四人で構成されることが多い。本作においては、ギターが二人いるツインギターという形式が取られているようだ。
主人公である直巳はベース。
孤高の天才ピアニストの真冬はギター。
革命家を目指す響子はギター。
幼馴染みの千晶はドラム。
「二人いるってことは、一人欠けても大丈夫?」
いやいや、それでは駄目だ。ツインギターといえど、それぞれに役割がある(リードとかサイドとかあるらしいが、正直良く分からなかった)。バンドというのは一人だって欠けてしまえば、それは全く違うものとなってしまう。
第二巻にて彼らのバンドの名称が決定されることになる。
その名前を決めるという過程だけで、本作はかなりのページ数を割いている。響子先輩は「最後にバンドに入った人が決める」と語り、その対象者である真冬は、その名付けから逃げ続けた。
その理由に関して、彼女は言葉を濁し続けていたが、一言で言うなれば「バンドに入った理由が不純だから」ということらしい。その思いが渦巻き、その理由の渦中に居る直巳も言葉を濁し続けたことで事態はややこしくなっていくのだが、その話はまた後にさせて欲しい。
とにかく。逃げ続けた真冬が現状に向き合ってつけたバンド名は、
”feketerigo”
呼び方は『フェケテリコ』。良い名前だと思う。皆さんはどう思うだろうか?
バンドが出来れば、次はライブである。技術力に関しては、申し分なさ過ぎるほどのメンバーであるため、順当に行けば成功は約束されたようなものであろう。とはいってもバンドは皆で揃えなければ意味はない。直巳の技術が足りないという心配点もある。
そこで海の別荘で合宿を開催し、練習するという運びになった。突っ込みたい所は色々あるだろうが、得意技が脅迫という革命家・響子先輩が無茶を通したというように理解して欲しい。何をしたかはブラックボックスにしておこう。
真冬が過保護な父親によって断念せざるを得ないかと思われた合宿ではあったが、彼女の父親と直巳の間に約束――「父親とは全く会話してくれないから、代わりに色々と話を聞いて欲しい」――が交わされることで無事に開催されることになった。
それにしても直巳は父親とのパイプまで手に入れてしまった。これは順当に外堀が埋められている気が……まぁ、いいや。
海、別荘、美女三人。ここまで揃ってしまったならば、海といえばお約束の水着イベントが発生する。本作も例外ではない。
海で泳ぐだけならばまだ良くある流れだが、何とバンドの練習中にまで水着に着替えるのだから、健全な男子高校生にとってはある意味地獄である。同じ屋根の下で着替えているというシチュエーションも精神衛生上によろしくない。いつもと違う環境にドギマギしてしまうというのは、年齢は関係ない気がする。
……こう書いてしまうと、練習をあまりしていないような気がしてしまうが、ライブに対する危機感というのはそれなりにバンドメンバーに緊張感を持たせることに一役買っていた。
前にも書いたが技術力は申し分ないのだ。練習で重要になってくるのは、どのように合わせるかに尽きる。また、ライブではどのような流れで演奏を行っていくのかということも考えていくことになる。
その流れを考えていたのは、響子先輩である。彼女の知識とセンスというのが、相当なものであるということは第一巻のエピソードの数々が物語っている。第二巻にて、過去に三つほどバンドを経験し、その全てを潰してきた過去が明かされる。
あぁ、また書き方がよろしくない。バンドが潰れた原因は、彼女にあったこともある。女性だけでバンドを組んだ際には、彼女が前バンドメンバーと寝たという暴挙により潰れたらしい。いや、そら潰れますわ。
ここで一つ、些細な疑問が生じる。それほどバンドでの失敗を重ねていながら、未だ諦めずにバンドを結成した理由は何なのだろう。音楽が好きだから? まぁ、それも理由の一つだろう。
この第二巻では、響子先輩がバンドに対しての姿勢というものが語られる。それがバンドの状況を揺るがすような波乱の一因になってしまうというのは、悲しいことだとブログ主は思う。
人と人とのすれ違いというのは、些細なことが原因であることが多い。一言が多かった、逆に少なかった……後悔したとしても、もう後戻りできない状況まで気付かないということだって珍しくない。
この第二巻で起こる事件の原因を一言で言うなれば、『真冬と直巳、それぞれ言葉が足りなかった』ということに尽きる。二人ともあまりに不器用すぎた。
真冬は「自分がバンドに入った理由が不純」だと語る。逆に不純じゃない理由というのをお聴かせ願いたい。直巳は「真冬の気持ちが分からない」と語る。じゃあ貴様は自分の気持ちをしっかりと真冬に語ったのか? と首根っこ掴んで言ってやりたい。
誰が悪いのか、という話ではなく、やはり第一巻から変わらず『真冬と直巳のラブストーリー』だった。このスタンスをどうか貫き通して欲しい。
もどかしい作品だった。