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【漫画】さんかく窓の外側は夜6 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

霊感サスペンス・ミステリ

情報

作者:ヤマシタトモコ

試し読み:さんかく窓の外側は夜 6

ざっくりあらすじ

警察官が自分の名前を把握していることを知った非浦英莉可。呪いという存在が認められていない方法で人を殺してきた彼女にとって、警察に目を付けられているということは恐怖だった。彼女は誰かに裏切られたことを察するが――。

感想などなど

呪いを使って人を殺したとして、それを法に則って裁くことはできるのか。

実際、かなり難しいだろう。そもそも存在が科学的に立証されていない呪いを使って、人を殺したということを立証する。そんな無理難題をこなさなければいけないのだから。

さて、非浦英莉可はその現状に胡坐をかいていたのではないだろうか。

警察には自分がこれまでの殺人事件に関わっていることを知る術がない。よしんば知れたとしても、それを元にして彼女を逮捕しようと動くはずもない。そんな彼女の前に現れたのが、強く信じない心を持つ刑事・半澤であった。

逃げ出す過程で、彼の妻に呪いをかけた非浦。そして彼女は考える。誰かが自分を裏切り、自分のことを警察に話した人間がいる。仕事を持ってくる宗教法人の人間か? それとも家族が……彼女が人を呪うことを知っている人間は限られている。

その中に裏切り者がいるのか……彼女の脳裏に思い浮かんだのは、最近になって仲良くなって、彼女が呪いの仕事をしていると知っても一緒にいてくれる人――三角であった。

「嘘……だって……違う」と、その疑惑を必死になって否定しようとする彼女。親にだって裏切られたという事実が、その信用を砕いていく。「――そうだ 忘れてた」「信じれる人なんていないんだった」という台詞が、彼女の人生を物語っている。

 

読者だから、そこら辺の事情は把握している。三角が半澤刑事に「ヒウラエリカ」という人物の話をしたのは、彼が非浦英莉可に会うよりも前のことだった。殺された死体に残された残留思念が、ぼそりと零した名前であり、「霊の残す言葉に深い意味はない」ということで、その時点では彼女の存在すらも疑わしいと思っていたくらいである。

しかし、非浦英莉可と出会い、彼女のことを知った。普通の高校生として生活していること。彼女が彼女なりに、自身の犯した罪を向き合って、自分の能力の使い方を考えていることを知った。

彼女のことを半澤刑事に話す機会は、これまでいくらでもあった。それでも話さなかった三角の意図や想いが、この第六巻では語られていく。

「おれはいつも人付き合いで……特に決断が必要なとき ……怖い」

「何かとても悪いことが起こるんじゃないかって」

だからいつも、逃げる道を選んでしまうのだと彼は語った。そんな悩みを半澤刑事に語った三角。それに対する刑事の答えが最高に渋い。

「どんなに心を砕いてやっても救えねぇことってのがある」

「さしのべた手が届かなくてもそれはきみのせいじゃない」

刑事として、これまで数多くの ”悪いこと” に遭遇して来たからこそ、言える重みがそこにはあった。自分の妻が呪われて、今すぐにでも非浦英莉可のことを問いただしたいだろうに、三角には非浦英莉可のことをそれ以上追求しなかった。

 

普通の暮らしがしたいだけの非浦英莉可。これまで犯してきた罪の向こう側には、普通の生活を送っていたはずの人がいて、その罪を償うことなどできない。これからの長い人生で、その罪を背負って生きていくことになる。

そんな彼女の切なる願いを叶えるために、三角たちは協力することになる。

こうしてみると、三角も一歩間違えば、非浦英莉可や冷川と同じ人生を歩んでいた可能性が脳裏をちらつく。ただ違ったのは、子供の頃に周囲にいた大人たちの優しさの有無のように感じた。

助けてくれる大人がいないことは、子供にとってとてつもない不運だと思う。非浦英莉可はまだ間に合う。このまま逃げて行って欲しい。そんな願いで読む側にも熱がこもる第六巻であった。

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