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【漫画】さんかく窓の外側は夜7 感想

【前:第六巻】【第一巻】【次:第八巻
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※ネタバレをしないように書いています。

霊感サスペンス・ミステリ

情報

作者:ヤマシタトモコ

試し読み:さんかく窓の外側は夜 7

ざっくりあらすじ

教団から英莉可を救うために行動を開始した三角たち。そのために先生と呼ばれている男の家に忍び込むことしたが、家に仕掛けられた霊的なトラップを回避するために、ネットを介した結界を使うことに――。

感想などなど

日本では信教の自由が保障されている。

自分が信じた宗教を、心に寄り添わせることで心の平穏を保っている者もいるのだ。宗教によって形は色々あるのだろう。たくさんいる神に祈ったり、唯一神に祈ったり。祈りの方法、考え方にも色々あるのだろう。

さて、そんな宗教は「教祖・経典・教団」の三つで構成されることが多い。色々と調べてみたけれど、名前が変遷したりして「教祖」ではなく「開祖」と呼ばれたりするが、大抵はこの形だ。

かつて大事件を起こした『掌光会』の教祖は冷川だった。

彼が霊的な存在をぶん投げる際に出てくる大きな手が、信仰の対象だったのかもしれない。その手が悩みを抱えた者達の心を、浄化していくようなシーンが第五巻では描かれていた。きっと霊に取り憑かれていた人の霊を、ぶん投げていたとかそういうことなのだろう。

そんな彼を追い詰めたのは、彼を信じた大人達だ。

ここで冷川の台詞「あなたはぼくを信じないでくださいね」が深い意味を持ってくる。信じることは優しさかもしれないが、時に人を傷つけることもある。その代表例が冷川であろう。

ただ「信じている」という言葉だけを免罪符に、一人の少年を監禁し続けた。そんな彼を「信じている」からこそ誰も助けてはくれず、徐々に壊れた彼は、最後の最後に教団を皆殺しにした。それは無意識の行動で、自分がやった罪に対する罪悪感は未だにないのだろう。

彼は加害者なのか、被害者なのか。半澤刑事はその問いに答えられていない。その線引きができる読者はいるのだろうか。

どうか納得のいく答えがあるのならば、是非とも教えて欲しい。

 

「掌光の教え」を説く宗教法人が、まるで『掌光会』の後釜にでも座るかのように現れた。そんな法人の新たな教祖として会を率いている男が、英莉可が「先生」と呼んでいる男である。

その「先生」からの指示で、呪いを用いた殺人をして、莫大な金を貰ってきた英莉可。その金で超豪邸が建つのだから、相当に資金が潤沢であることが伺える。法人のバックにはヤクザがいることは火を見るよりも明らかである。

その辺りを攫えば、警察が動くことも可能だろうが、そう簡単ではないというのが半澤刑事の見立てだ。何か証拠となるようなもの……「先生」の家にでもあるのではないか? ということで潜入して調査することとなった。

しかし、「先生」は貯金箱と称して、呪いの力を蓄えているような呪いに対する知識量、経験、力はかなりのものだと思われた。そこで「先生」宅に潜入するに当たっては、迎が得意とする結界(英莉可が教えて貰ってすぐに使えたが)を駆使して、霊体の姿で三角と冷川の二人が調査することになる。

その調査で見つかったものはないが、衝撃の事実が判明する。なんと「先生」の家は、大事件が起きた『掌光会』の建物が取り壊された跡地だったのだ。まさか知らないで土地を買ったということもないだろう。

「先生」は一体、何を考えているのだろう。

ここに来て「先生」視点の物語も描かれる。

分かる情報は少ないが、何かで自分を戒めることで強い力を得ているようだ。その力の強さはかなりのもので、人を一人殺めるということについては、英莉可以上に簡単にできるようだ。

しかも、誰かが家に侵入したことも瞬時に築いた。先ほども書いた通り、三角と冷川は物理的に侵入はしておらず、結界で守られながらの霊的な存在で侵入している。それでも気付くことができるとは……。

 

英莉可が逃げ出すために、多くの大人達が動いている。これまで救いの手が差し伸べられなかった彼女が、動き出して言葉にしたことがきっかけだった。これから先、危機的な状況にだってなるだろう。それでもきっと大丈夫だという安心感がある。

ラスト、英莉可の母親の勇気に盛大な拍手を。それについては次巻の感想で詳しく語っていきたいと思う。これまでの物語の断片が繋がっていき、予想を上回っていく展開の連続に、第八巻への期待が否応に高まる第七巻であった。

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