※ネタバレをしないように書いています。
霊感サスペンス・ミステリ
情報
作者:ヤマシタトモコ
試し読み:さんかく窓の外側は夜 9
ざっくりあらすじ
三角は迎、英莉可、逆木と共に、冷川の救出へと向かった。その間、先生に取り引きを持ちかけられていた冷川は、選択を迫られる。運命の行き着く先はいったい――。
感想などなど
運命の悪戯という言葉がある。
天文学的な確率としか思えないような、決してあり得ないと思っていたような出来事が実際に起こった時、人はそれを偶然ではなく必然として捉えようとする。それは昔から決定づけられていた素敵なものだと考えたいのだ。
そんな運命を、作中では端的に説明してくれている。運命というのは「共鳴して多くの人を惹きつけ強い力で私たちの命を引き上げて下さる」……そういうものだと。そしてそれは直感で分かるものであるらしい。
冷川はずっとそういう運命を探していたのだ。
そんな彼が出会ったのが三角だった。
そして彼に首輪を付けた。どこにいても分かる、逃げ出すことのないように縛り付けた。そのようなことされていると知っても、逃げようとはせず、冷川と向き合って言葉を投げかける三角。
そんな二人のアンバランスな関係は、どちらかが突き放せば終わってしまうような儚さで出来ている。第八巻にて、冷川と一般人のどちらかしか救えないという状況で、三角は名前も知らない一般人を救った。それを三角からの拒絶、もとい突き放しだと受け取った冷川の絶望は相当なものだったのだろう。
彼はそのまま先生の家から出てこなくなってしまった。
正確には出られなくなったというべきか。
先生が住んでいる家は、かつて冷川が事件を起こした宗教法人の建物があった場所であり、そこには冷川の憎しみが未だにこびりついている。その憎しみを利用したのが先生であり、先生と冷川の二人の憎しみが絡み合って剥がれなくなっているのが、今の状況である。
つまり冷川は家を出ようにも出られないという訳だ。それは先生も同じではあるのだが、彼には外に張り巡らせた貯金箱という呪いの罠のようなものがある。それを通じて社会と繋がり呪ったりすることは可能なようだ。
そんな中、先生は冷川に取引を持ち掛ける。三角を冷川のものにする手助けをしたい、先生は先生で三角を壊したい。互いにWin WInな取引である。それに対して、冷川は明快な答えを示していない。彼は三角をどうしたいのか? どうなりたいのか? 運命ではなかったかもしれないと、彼に突き放された時に思ったのではないのだろうか?
そんな三角奪還のために、迎、英莉可、逆木らで行動を開始する。まずは先生が各地に作っている貯金箱の破壊だ。これで呪いの力を強化しつつ、監視もできるというそれらを破壊すれば、少なからず先生の力は弱まる。
しかし先生が作ったというだけあって、壊すのは簡単ではな……と思っていたのだが、三角は貯金箱に対しての特攻があるようだ。まず見つけることが難しいにも関わらず、彼は空中に漂う汚水のようなものを見て、それを破壊することが簡単にできた。
また破壊と同時に溢れだす邪気は、一度死んで英莉可によって復活させられた逆木によって清浄化させる。どうやら呪いで殺されても死なない特殊体質になってしまったようだ。お陰様で便利アイテムとして重宝されることになる。
そんな地味な貯金箱破壊作業を終え、いよいよ向かうは先生の家。
それぞれがそれぞれの役割に徹し、強力な憎しみを呪いに変えた先生に挑んでいく。知ってはいたが、その力は圧倒的だ。ただの一軒家がどこまでも続く迷宮のように入り組んで、三角、迎、英莉可と逆木に分断されてしまう。そこら中にうようよとしている悪霊の類、一般人なら普通に死んでいるような魔境と化している。
それでも、それぞれが自身の役割を自覚し、互いに互いを信じて行動した。
その戦いの結末は第十巻にて――印象に残るセリフや、考え方の多い漫画であった。