工大生のメモ帳

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【ドラマ】しあわせな結婚 感想

※ネタバレをしないように書いています。

愛故に

情報

脚本:大石静

主演:阿部サダオ、松たか子

全9話

ざっくりあらすじ

元検事の有能弁護士・原田幸太郎は、ニュース番組のコメンテーターとしても活躍していた。しかし、その本番中に倒れて緊急搬送されてしまう。一命を取り留めた彼は、病院内のエレベーターで美術教師の鈴木ネルラと偶然出会い、彼女に一目惚れしてしまう。

感想などなど

結婚=幸せという図式が成立しないことは、不倫報道や離婚報道をニュース番組で見る度に証明されていく。現在のブログ主は独身を謳歌しているので、結婚の経験を語るなどということはできないが、少なくとも、本ドラマで描かれる結婚生活が普通ではないということだけは分かる。

まず主人公である原田幸太郎の経歴が、元検事で弁護士でテレビのコメンテーターというモリモリ設定である。そんな有能な男であれば想像するに裏ではモテモテなのだろうと思う。そして実際、彼はモテモテだった。そんな男であれば結婚しようと思えばいつでも出来るというのに、五十年間もの長きに渡って独身を貫いてきたようだ。

その理由について、彼は「一人が好きだから」とか「家族としての関係性を邪魔に感じている」とか語っているが、実際は両親との関係が希薄であることから生じる "家族" というものに対する確固たるイメージがないことに起因するのではと思う。仕事上での人間関係は割り切ってできるが、家族という人間関係は割り切れない "何か" があるということを重く捉えているのだ。

そんな思想の彼が一目惚れをして、付き合ってデートするとかいう間をすっ飛ばして電撃結婚をしてしまったのは、鈴木ネルラという女性が纏う不思議な魅力に取り憑かれたからだろう。

出会いは病院のエレベーターで、気まずい沈黙を埋めるような雑談をしただけで、その後、たまたま原田幸太郎の病室にネルラが入ってしまったことをきっかけに連絡先を交換。全ては偶然の積み重ねによるもので、正しく運命の出会いというフレーズがピッタリの流れである。

そんな鈴木ネルラの家庭というのが、あまりに複雑な家庭だった。つまり幸太郎にとって、嫌いで仕方なかった家族とのイベント事を大事にする家庭だったのだ。

 

このドラマのジャンルは一応ミステリーと言って良いだろう。

事件は15年前に起きた、とある新進気鋭の画家の撲殺事件。その重要参考人として名前が挙がったのが、当時、殺された画家の婚約者だった鈴木ネルラだった。しかし、彼女の当時の記憶が曖昧だったことや、凶器が見つからなかったことなどから証拠不十分としてお見送り。

ここで大事なことは大きく二点。

一点目は鈴木ネルラが犯人ではないという証拠も出ていないという点である。裁判をして無罪を勝ち取っているということであれば状況も変わっていたかもしれないが、殺人鬼かもしれないという可能性がついて回る。

二点目は鈴木ネルラは事件当時の記憶を失っているという点である。そのため彼女自身「自分が殺してしまったかもしれない」という疑惑を払拭できない。なにせ事件のきっかけと考えられた「鈴木ネルラと被害者との間で口論があったこと」は事実であり、ネルラが見た最後の被害者の姿は、ネルラを殺そうとする姿なのだ。となると、とっさに反撃して彼を殺してしまった可能性は否定できないし、筋書きとしてはとてもスッキリする。

この二点により、鈴木ネルラは「自分が幸せになってはいけない」と考えるようになった。

ここで考えたいのは「そんな鈴木ネルラがどうして原田幸太郎との結婚を決めたのか?」という命題である。

ここを納得できるかどうかで、このドラマに対する評価は大きく二分するような気がする。鈴木ネルラと原田幸太郎は互いに言葉を重ね、鈴木ネルラはシンプルな「幸せになりたい」という願いを口にする。このシンプルな彼女の願いに共感できなければドラマを読み進めるモチベーションは徐々に失われていくこととなる。

このドラマのジャンルはミステリーという風に書いたが、推理することはほぼ不可能に近い(メタ読みはできる。むしろメタ読みすると犯人は一人しかいない)。このドラマの根幹は、「事件という大きな謎によって幸せになる道を捨てていた鈴木ネルラを何とかして幸せにしたい」という目的であり、その目的に共感できなければ全く面白くない。

かくいうブログ主は、メタ読みによりおおよその犯人が特定できていたため、この事実を鈴木ネルラがどう受け止めるのか? 原田幸太郎はどのようにして鈴木ネルラを救うのか? それらが気になって仕方なかったため、最後まで見ることができた。

そういうモチベーションで望んだ最終話、それなりに満足できる結末だったと思う。

なにせ鈴木ネルラを幸せにできるのは、原田幸太郎しかいなかった。元検事という得意な経歴、弁護士というポジションだからこそできる選択……その全てが彼にしかできない "鈴木ネルラのため" の行動だった。

鈴木ネルラは幸せになるべくして幸せを掴んだ。そういうドラマだった。