工大生のメモ帳

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しずるさんと偏屈な死者たち 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

この世界には不条理として思えない謎がいくつもあるわね

情報

作者:上遠野浩平

イラスト:椋本夏夜

ざっくりあらすじ

何年も病床にありながら、とても綺麗で、この世の誰よりも聡明で、どんな不可思議な謎も解き明かしてしまうしずるさん。これは少し不気味で、かなり奇妙で、ちょっと切なげな少女達の不思議な冒険をめぐる物語。

感想などなど

ブギーポップシリーズで有名な上遠野浩平による推理小説。といってもミステリーの醍醐味である推理部分は「~かと思うわ」「~かとだと思うの」というように探偵役であるしずるさんの想像による部分が大きい。

それもそのはず。しずるさんは病気であるが故、病室から出ることはできず、一日の大半を寝て過ごすというのだ。いわゆる安楽椅子探偵である。そして、探偵の助手にして語り手であるよーちゃんも一介の学生に過ぎず、積極的に行動して事件を解決しようとする話でもない。

物語の流れとしては、病床で退屈にしているであろうしずるさんのために、テレビでやっていた不思議な事件についてよーちゃんが簡単に調べて資料として持っていく。それを読み、二人で会話しながら解決する……という流れである。

本作に求めるべきは本格ミステリ的謎解きではなく(無茶なトリックが多い)、しずるさんとよーちゃんの掛け合いだろう。また、ブギーポップの世界のように世界の命運を賭けた話でもなく、統和機構のような世界を裏から牛耳る謎組織が現れるという訳でもない。不思議な事件を淡々と解決していく短編集……一つずつ見ていこう。

 

『しずるさんと唐傘小僧』

さて、記念すべき一発目。事件の内容も単純明快なバラバラ事件と分かりやすく、オチもしずるさんを物語っているといっていいだろう。

物語はとある死体を遭難者が発見したシーンから始まる。その死体というものが、とても奇妙だったのだ。

まず右脚が切断されている。これだけならば、「まぁ、ミステリお約束だな」で済む。

問題は両腕の状態である……首元から鉈のようなもので分断されていたのだが、両手の指先が顔面に突き刺さっていたのだ。

想像して欲しい。

左脚一本で立ちながら、両腕が頭部とくっついてだらりと垂れ下がっている――その様は唐傘小僧と言えるのではないだろうか。

ミステリにおいて『奇妙な状況』が作られた場合、「その状況が作られた理由」というものを考える必要がある。

この事件における『奇妙な状況』は、右脚が切り取られたこと、指先が頭部に食い込んでいること、腕が肩から切断されていること、そして山で発見されたということ、この四つだろうか。

これら奇妙な状況……その全てに納得のいく理由を、皆さんは考えつくだろうか。

 

『しずるさんと宇宙怪物』

UFOやUMA、ミステリーサークルや宇宙人のような存在を扱ったテレビ番組。皆が皆、一度位は見たことがあるのではないだろうか。かくいう自分も見たことがある。宇宙人に連れ去られ改造された人の話を身震いしながら聞いていた小学生時代が懐かしい。

しかしブログ主も歳を取り、ミステリーサークルの作り方や、UFOやUMAの写真の嘘をいくつか知っている。これを悲しいことと捉えるか、成長したと捉えるかは人それぞれだろう。

さて、そんな話をした理由は事件の内容に関係あるからである……といっても半ばこじつけのようであるが。

事件の現場は高層建築の高級マンション。警備員二人が監視カメラをチェックし、決まった時間に見回りをするという警備体制もバッチリ。しかし、そんな状況の中でも殺人事件というものは起きるというもの。

唐突に起きた停電に対して、それぞれの部屋に対して確認の電話を入れていく警備員。そこでとある一室と通話が取れないことが発覚、何かあってはいけないと急いで確認に向かった先にて、これまた奇妙な死体と遭遇することになる。

その死体は何と、心臓部がくり抜かれたいたのだ。

……さて、心臓というものはとても重要な臓器である。常に一定の間隔で鼓動し、これが止まれば人は死ぬ。当たり前のことであるが、重要なことである。

ではこの男の死因について考えて貰いたい。心臓がくり抜かれたから? いや、そんなことは考えにくい。くり抜こうとする過程で暴れるだろうし、死んだ後で心臓をくり抜いたと考えた方が自然だ。

となると犯人は心臓をくり抜くために殺したようになってしまう。これは如何に?

 

『しずるさんと幽霊犬』

皆さんはペットを飼っているだろうか。犬に猫、鳥に爬虫類……その種類は様々だろう。かくいう自分も実家にて犬と猫を飼っている。皆可愛らしい。

さて、猫を飼っている人はこういう経験はないだろうか? 「爪で引っかかれた」「指を囓られた」等々……こないだ実家に帰ったら母の指にいくつもの絆創膏が貼られていた。きっと構い過ぎて引っ掻かれたのだろう。大きな犬の場合、飛びかかられたりして怪我をしたという人も珍しくないだろう。

今回の事件はそんなペットにまつわるものである。

被害者の大男は首の両側面が抉られており、犬の唾液が検出された。その容疑者として、大男の彼女が飼っているペットのコーギーが挙げられた。その犬は厄介なことに家の外に逃げ出しているというのだから、事件は厄介な盛り上がりを見せる。

テレビでは「殺人犬が外に!」の見出しで連日連夜、報道される。

そんな事件に対して、「犬は人より強いものよ」と言ってのけるしずるさん。困惑するよーちゃんに対して、この事件の違和感を説明する。

例えば『首の両側面が抉られており、犬の唾液が検出された』という点。これは本編にて説明された内容をそのまま持ってきたのだが、警察発表において『犬に噛まれた痕跡』とは説明していないのである。なるほど、言われてみればそうである。

 

『しずるさんと吊られた男』

ブログ主はマジックショーというものを見たことがない。多くの人が舞台上で繰り広げられる謎に魅了され、感動する。本作では、そのようなマジックショーにて起きた事件を取り上げていた。

事件が起きたマジックの流れは、金属製の箱にマジシャンを閉じ込めた後、地上数メートルの高さに吊り下げ、そこから脱出したマジシャンが別の場所から現れるというもの。

しかし、マジシャンは指定されていた場所に現れず、代わりに箱から大量の血が滴ってきたのだ。

この事件における問題は『滴ってきた血とマジシャンの血液型が一致』したという点、『血の量が人の致死量を超えていた』という点、『血があるのに死体はない』という三点だろうか。

つまり、現状を整理するとマジシャンは自分の致死量の血を抜き取った後、金属製の箱から消えたということになる。はっきりいって意味が分からない。突っ込み所満載である。

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