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【漫画】その着せ替え人形は恋をする10 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

コスプレ・スクールライフ

情報

作者:福田晋一

試し読み:その着せ替え人形は恋をする 10巻

ざっくりあらすじ

コアなファンが多いホラーゲーム「棺」のコスプレ合わせをすることになり、それにジュジュ様と心寿も呼ぶことに。合わせに備えて小道具を作るために、ゲームを徹夜でプレイすることになった新菜だったが――。

感想などなど

可愛い服を着て、くるくる回っている可愛い女の子でしか摂取できない栄養がある。

前巻ではそのコスプレをあまり見ることは叶わなかった訳だが、残念なことにこの第十巻でも『ホラーゲーム「棺」のコスプレ合わせ』のための準備回となっている。コスプレの本格的なお披露目は次巻(少しだけ見ることができるが)。栄養の摂取は大分先のことになりそうだ。

しかしながら、社会の荒波に揉まれながらも、オタクとしての気概を捨て去っていない者達の屈強な精神が垣間見られたのは、オタクと社会人を何とか両立させることで精神の平穏を保っているブログ主にとって桃源郷であった。

ホラーゲームの初見感想でしか得られない栄養を摂取し、ほくほく顔の涼香さん。自分もこの栄養は、是非とも摂取したい。布教活動とは栄養を摂取するための種まきであり、刈り取りはオタクとしての生命維持活動なのではという持論を、この場を借りて発表しておく。

ただ久しぶりのジュジュ様を見たことで、一年くらい延命できた気がする。第九巻が出て、ジュジュ様登場のラスト一コマからお預けを食らっていた単行本勢にとって、ジュジュ様がたくさん登場する十巻は、救命装置のようなものである。2学期のテストの結果が良くて、お小遣いをいっぱい貰ったとほくほく顔の笑顔をする心寿ちゃんも新たな栄養として補給される。

そんな多種多様な栄養を摂取することだけが、この第十巻の勝ちではない。なんと海夢と新菜の関係性に大きな進展が見られた……と思われる。

二人の関係性が進展=完結なのでは? という風に勝手に思っているブログ主にとって、それは寂しくもある。このままじれったい関係性が続いてくれても良いのよ? という葛藤も胸中で芽生え始めているくらいだ。

ラブホでベットで二人一緒になる。ネットカフェで二人一緒に入る。一緒に夕飯を共にする。夏祭りに一緒に行く。といったようにギャルゲーなら一枚絵のスチルがバーンッと出てくるイベントは盛りだくさんでありながら、関係性のグラフは横ばいを維持し続けた驚異的な二人の関係性が進展するイベント。

お泊まりイベントである。

 

「棺」とは、六人のシスターがひっそりと暮らしていた教会で、次々と起こる惨劇を描いたホラーゲームである。ノベルゲームでストーリーを読み進めるだけ、絵柄も可愛らしいながら、五条君がガチでびびり、トラウマになるレベルのホラーとなっている。

プレイ時間は七時間ほどということで、ボリュームはそれほどない。読む限り、ストーリーの分岐もなく一直線のようだ。それでも多くのプレイヤーの心を折る演出や、良く出来たストーリーが売りとなっている。ホラー映画が苦手な海夢や、中学生の心寿ちゃんは、よくもまぁ最後までプレイできたものである。

そのゲームを海夢の家でプレイすることになったのだが、一日目ではクリアまで出来ず夕方になり、続きは後日……と帰ろうとした時に事件は起きた。どうやら事故によって電車が止まってしまったらしい。

それでも帰ろうとする五条を止める海夢。彼女に下心はなく、純粋に彼を心配しての優しさからの行動である。ゲスなことを考えてしまった自分は、一回生まれ変わった方が世界のためかもしれない。

五条君もそんな彼女の想いに応え、深いことは考えず、ゲームをクリアすることだけに意識を向ける。そして、そのまま二人きりの夜を過ごし、何も起こらないはずもなく……何も起こらなかった。

この “何も起こらなかった” ことでダメージを受けている弱弱な子がいた。

海夢である。

 

「付き合っちゃおっか」などと言ってのけていた強者・海夢は第二巻で死んだ。今、この漫画で描かれている海夢は、五条君好き好きな弱弱乙女である。その弱り切った自分を自覚できたのは、とても大きな進展なのではないだろうか。

それにしても、いつの間にか立場が逆転しているような。五条新菜に翻弄される海夢を見ている漫画として、完成度の高い第十巻であった。

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