※ネタバレをしないように書いています。
コスプレ・スクールライフ
情報
作者:福田晋一
試し読み:その着せ替え人形は恋をする 12巻
ざっくりあらすじ
冬コミに向けて『天命』ハニエルのコスプレ準備が進む中、周囲のクリスマスムードに当てられて浮かれる海夢。
感想などなど
自分を推してくれるファンが現れて喜び浮かれる乙女・海夢、可愛すぎか?
ホラーが嫌いなジュジュ様に、海夢を姫と呼び押しまくるアキラさんに至るまで、それぞれの魅力が大爆発した『棺』合わせ。リアリティを追求した眼球入り血のスープなどは、漫画というイラスト媒体で助かった。リアルな写真だったらさぞ怖かったことだろう。
好きな物を好きといえることの幸せを噛みしめつつ、次の冬コミに向けての準備が始まっていく。何のコスプレをするのかは第11巻で『天命』ハニエルに決まった。
『天命』とは。
作品に対する愛と拘りが強い天才・司波刻央が連載している漫画である。その拘りの強さ故、絶対にアニメ化を許さないということで有名で、とある雑誌のインタビューで下記のように述べている。
俺が納得できるものを俺でも書けていないのに他の奴に出来るわけないって俺ははなから許してなかったんだ。説得されて渋々許可出したがあんなに後悔する事はこの先ないだろうな。
一度はアニメ化を許したものの、同じようなことは絶対に繰り返さないという強い意志を感じる。そんな天才が描いた漫画は、悪魔に憧れた天使が地上に堕とされてからというもの人間の世界をグチャグチャにしていく話だ。
漫画というのは文章、台詞、画、コマ割の全てで世界を構築・演出する。司波刻央の描き出す漫画は、人の言葉が通じない一つ次元が違う存在である天使を描ききり、それによって惑わされる人々の綺麗も汚いも容赦なく描ききる。それが多くの人の心をえぐる。
そんな漫画における堕天したハニエルは、人のような造形をしていながら人ではない存在だと分かる。それでいて美しさで心が魅了されてしまう、そんな人と天使の境界にいるような曖昧さと荘厳さを兼ね備えていた。
細部に神は宿るというが、「神は細部にまでこだわる」の方が正確なように思った。一切の妥協を許さない五条君は、ハニエルのコスプレ衣装を作るために時間と金と気力を費やしている。
その過程はとてもカッコいい。
ハニエルは人と似たような姿だが人とは違うという現実にはない容姿をしている。それを絵ではなく、現実に堕ろさなければいけない。どの生物とも違う骨格を形成し、ただの黒とは違う闇に似た黒をどのように演出するかを思案する。
ただ絵を真似るのではなく、絵で表現されているものを現実に落とし込むという所業は、そう簡単なことではないはずだ。どこまですれば成功という風に線引きするかは、結局のところ、原作者しか判断することはできない。その原作者である司波刻央という天才を納得させるような衣装を作ることができるだろうか。
同じ何かを作る者として、司波刻央の拘りに強く心を撃たれたからこそ、五条君のコスプレ制作に打ち込む覚悟は相当なものだった。
それこそクリスマスなんて眼中にないくらいに。
海夢はクリスマスに浮き足立っていて、一緒に過ごせるかもしれないと楽しみにしているようだった。しかし、対する五条君はそんなことをは脳裏の片隅にすらなく、ずっとハニエルのコスプレ衣装を作ることを考えている。
ここで海夢が五条君の邪魔をするようであれば、漫画を投げ捨てていたかもしれない。彼女もまた、彼の覚悟や想いを理解し、協力する姿勢を見せてくれた。この二人は出会うべくして出会ったのかもしれない、そう思えた。
良いストーリーだった。