※ネタバレをしないように書いています。
コスプレ・スクールライフ
情報
作者:福田晋一
試し読み:その着せ替え人形は恋をする 13巻
ざっくりあらすじ
完成した衣装を着込み、最高のメイクをしてハニエルとなった海夢と五条は、冬コミに初参戦。最高の一日になるはずが――。
感想などなど
一度完成させたものを捨てて再度作り直すほどの拘りを見せて、完成させた『天命』ハニエルの衣装。ここまで力を込めて作った動機について、12巻では明言されていなかった内容が語られた。
「作った物で人の心を動かすとはこういう事だ」と圧倒的な力を見せつけられたように感じたんだと思います。
挑みたかったんです
自分勝手で乱暴な動機です
なのでハニエルの衣装は自分の為に作りました
真面目な男なのだな、と思った。元々は海夢のコスプレ衣装という主目的はなくなって、ただ自分のためだけに衣装を作っていたということを彼は反省していたのだ。
そして、彼はクリエイターなのだな、とも思った。そもそも自己と他者の間に力量差があることを理解するためには、ある程度の実力がなければならない。自分が立っている位置が分からなければ、そもそも差があることに気付かないからだ。
そんな彼は喜多川海夢にお願いする。
喜多川さんがいれば完成します
第十二巻の感想で二人は出会うべくして出会ったと感想を書いたが、互いに高め合えるような関係性って素敵だなと改めて思った。
ブログ主はコミケに参加したことがない。人生で一度くらいは参加してみたいと思うし、参加するとすれば暑くない冬コミかなと漠然と思っている。コスプレ衣装によっては冷たい空気に柔肌を晒すことになるのだろうが、幸い、コスプレする予定はない。
コミケでのコスプレ撮影には暗黙のルールがあって、コスプレイヤーは自己紹介を記したスケッチブックを持っていていたり、撮影者は列を作って一人ずつ撮るようにしたり、あまりにも多すぎる時には円を作って囲って一斉に撮るようにしたり……それぞれの思いやりで何とか成立しているのだろう。
思いやりギャルこと喜多川海夢もその環境にすぐさま順応し、ハニエルは降臨する。
悪魔以外には……俺には無感情に微笑んで下さい
自分がハニエルに愛されていないと分かるほどにです
五条君の助言通りの表情を浮かべ、カメラマンを虜にしていくハニエル様。漫画『天命』ではハニエルに群がって人々が笑顔で殺されていくシーンがあるらしい。まるでそのシーンが現実でも起きたかのように、カメラマン達が絆されたて、虜になって狂わされているような光景が広がっている。
これは二人だからこそ見ることができた光景なのだろう。
しかし、この映画は大人達も魅力的だと思う。
「二人が頑張ったからだよ」とおそらく一番喜多川さんが欲しかった言葉をくれた大人。喜多川さんがコミケの暗黙ルールを分かっていない中で諭してくれた大人。唯一、喜多川のコスプレ写真を見て「可哀想に」と言った大人。
それぞれの立場で、意図せずとも、二人のことを支えてくれる大人達がたくさんいた。二人が頑張ったからではあるのだろうが、何よりも二人をとりまく環境が素敵だったのだなとも気付かされた。
ハッピーな展開に結末かと思ったが、このコミケ冬をきっかけに二人の関係性はぎこちなくなってしまう。恋愛漫画のギスギス展開は辛くなる民であるブログ主だが、この展開も当然なことに辛くなってしまった。悲しい。
特に五条君から海夢への感情にドロドロとしたものが生まれてしまったような描写はあるが、明確な言語化はされないまま「どうして?」という疑問を抱きつつ読み進めることとなる。
これまで真面目な性格であるということが強調されてきた五条君にとって、自分がドロドロとした感情を抱いてしまったということに反省してしまうことは想像に難くない。しかし人と接する上で感情が動かないということはあり得ない。
ここから先の五条君の成長に期待しつつ、圧巻の第十三巻であった。