※ネタバレをしないように書いています。
コスプレ・スクールライフ
情報
作者:福田晋一
試し読み:その着せ替え人形は恋をする 8巻
ざっくりあらすじ
文化祭で初の男装に挑戦する海夢のために、クラスメイト達の協力もありつつ奮闘する五条新菜。その努力の果てに新菜が見た景色とは――。
感想などなど
この第八巻については語りたいことが多い。
まずは男装をするために打ち出した工夫や技術の数々。かつてジュジュ様の妹に施した男装とは、かけている金も技術も工夫も段違いとなっている。かつらを被っただけでは気になってしまう生え際の作成や、身体をすっきり魅せる補整下着に、男装した女性がより男性に近づけるポーズであったり。
「大きい胸をペタッとさせる下着」とか知らなかったし、男装した際には腰に手を当てたりポーズから意識していたりと、色々と学びがありつつ、徐々に海夢が麗様に近づいていく過程は、読んでいて面白い。
それら一切の妥協を許さない五条新菜の職人魂は、男から見ても格好いい。
先ほど書いたような男装した際のポーズや仕草は、五条新菜が気付いて取り入れたものだ。海夢をより男性に近づけるために、必死に考えた結果である。そして、そのポーズの見本をクラスメイトにお願いできるようになっていたりと、第一巻で孤立していた頃とは比べものにならないくらいクラスに馴染んでいる。
その成長もまた見所で、麗様スーツが完成に近づくにつれて、心境も変化していく過程が良い。好き。
特筆したいのは本番直前に行う化粧シーン。
クラスメイトの全員が、新菜が海夢を麗様にするシーンを見るため、コスプレのメイクを見るために準備室に詰めかけた。これまでとは違う、多くの人に注目されながらのメイクは、彼にとって大きなプレッシャーだっただろう。
しかし、クラスメイト達が向ける目線は奇異ではなく期待。文化祭で一位になるために、これまで協力してくれたクラスメイトのみんな。目の前にいる海夢もまた、新菜を信じて待っている。
その全ての期待を背負って、覚悟を決めた五条新菜の格好良さが光る。
そして迎えた本番で、思わず涙ぐんだ読者もいたのではないだろうか。新菜にとって特別な綺麗が、そこにはあって――期待に応えられるだろうかという不安があったことだろう。舞台に立っている海夢とは違い、脇役に過ぎない眺めていることしかできない彼にとって眩しい世界がそこにはあった。
最後にどうでもいい話を一つ。ツインテールの海夢がくっそ可愛かった。あと二人並んで座っている時に、微妙に距離を詰めてくる海夢が可愛かった。あと猫の人形を抱きしめている海夢も可愛かった。
ここらで終わりにしておこう。自分で読み返して死にたくなる文章となってしまったことを反省はしている。後悔はしていない。