工大生のメモ帳

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【漫画】つりこまち1 感想

【前:な し】【第一巻】【次:第二巻

※ネタバレをしないように書いています。

ガールミーツガールの青春フィッシング

情報

作者:山崎夏軌

試し読み:つりこまち 1巻

ざっくりあらすじ

わずか9歳で歴史ある釣り大会で優勝したマリモ。その表彰台で釣りで金メダルを取りたいと高らかに宣言した彼女は、6年後女子高生になって、いつしかその夢を諦めていた。

感想などなど

子供の頃に夢はあったのだろうが、大人になった今では記憶にすらない。悲しいことと言われるかもしれないが、社会人の大半が、子供の頃の夢はただのロマンとして処理してしまっているのではないだろうか。

わずか9歳という子供でありながら、歴史ある釣り大会で優勝したマリモという少女がいた。彼女は表彰台で、「オリンピックで金メダルを取る」と高らかに宣言した。しかし残念なことに、この当時、オリンピックの種目に「釣り」はなかった。現実にも残念ながらない。

誰もが微笑ましげに笑った少女の宣言から数年後――オリンピック競技として正式に「釣り」が加わった。6日間という長期にわたる過酷な競技であり、前半3日間は淡水釣り、後半3日間は海釣りを行い、世界中の国から三人一組の代表チームが釣果を競い合う。

6日間とか長すぎて観戦者が辛すぎるように思うが……どんなに長かろうと見たい戦いがそこにはあるのだろう。かくいうブログ主も、この第一巻の勝負で描かれる自然との闘いは燃えるものがあった。

そんな夢の舞台で頂点を取りたいと叫んだ彼女はまだ若く、才能もあった。彼女の未来に、多くの釣り人が期待を寄せたに違いない。少女の成長を楽しみにした者も多いことだろう。

しかし高校生になった彼女は、その夢を捨てていた。せっかく目の前にチャンスが転がってきたというのに。

 

高校生になり、諸事情により夢を捨てたマリモの前に現れたのが、マリモの9歳にした宣言をテレビで見て、彼女と同じ夢を抱いた少女・テトラである。

「マリモはオリンピックの舞台で戦いたい……それがテトラの夢なんだもん」

健気だなぁ……その宣言をしたいがために、わざわざアメリカから日本にやって来た心意気は是非とも買ってあげたい。しかしマリモの対応は冷たい。「夢……釣りにそんなものはないよ」というように、テトラの宣言を突き放した。

ただ彼女は釣りをしなくなった訳ではない。

マリモは生活の厳しい実家を支えるために、釣りで金を稼いでいた。そう、彼女にとっての釣りは夢ではなく、ただの金稼ぎの道具にしか過ぎないのだ。そこに「楽しい」「嬉しい」といった感情はない。

そんなマリモの釣りへの気持ちを確かめるため、マリモが優勝賞品である米を手に入れるために参加するバス釣り大会に、テトラも参戦することに。さすがはオリンピックを目指すだけあって、その実力はかなりのものだ。

バス釣り大会で競われるのは、釣り上げたバスの大きさだ。テトラが釣り上げたバスのサイズは、51.2cm。そこまで大きくなるには、厳しい環境を生き抜く強さと賢さを兼ね備えており、それを称えてランカーサイズと呼ばれている。

賢い魚は釣るのが難しい。それを騙し、ねじ伏せて釣り上げるのがバス釣りの醍醐味である。このまま黙って帰れないマリモが魅せる技術は、効率的で正確だった。ただ彼女の表情はかなーーーり退屈そうで……。

それがテトラにも伝わったらしい。「つまんなそーな顔」というテトラの台詞が、マリモの表情を端的に表している。

この「つまんなそーな顔」が良い笑顔に変わるまでの物語が、第一巻における本筋となっている。釣りのロマンを楽しそうに語る彼女達を見ていると楽しい。是非ともオリンピックまで連載が続いて欲しいものだ。

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