工大生のメモ帳

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とらドラ7! 感想

【前:第六巻】【第一巻】【次:第八巻
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※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

ラブコメの名作。

情報

作者:竹宮ゆゆこ

イラスト:ヤス

ざっくりあらすじ

街中はクリスマス色に染められあげつつあった。クリスマスが大好きであると語る大河は、唐突に良い子バージョンに。一方、実乃梨は部活の試合でとんでもないエラーをやらかしたとかで絶賛ふさぎこみ中。そんな中、生徒会長となった北村は大規模なクリスマスパーティを企画して……

感想などなど

サンタクロースの存在を信じていたのは、一体何歳までのことだっただろうか。

枕元にきれいに包装された誕生日プレゼントを置いてくれたのは父親だと知ったのはいつだっただろうか。サンタクロースが家のどこから入ってくるのか、疑問に思ったのはいつだっただろう。サンタ一人だと世界中の良い子にプレゼントを運ぶのって大変じゃね? と大真面目に語っていたのはいつだっただろうか。

さて、本作において最凶にして最強の虎こと大河が、第七巻においてはかなり良い子になってしまっている。いつもは殴りかかるであろう場面でも、彼女はそっと微笑んでくれる。心を抉る遠慮知らずの悪口もグッとこらえ、無理にでも口角を上げてくれた。

なんということだろう、停学を経て、彼女は新たな悟りの境地でも開いてしまったのだろうか。そんな彼女の豹変ぶりにさすがの亜美も、病院に行くことをお薦めする。心の病気を心配したらしい。

しかし、彼女は自分の意思で『良い子』になることを選んだ。その理由は『クリスマスが好きだから』。

世のカップルを呪って過ごしているような変人などはさておいて、クリスマスを嫌いな人間はいないだろう。目に鮮やかなイルミネーションに彩られた町並み、煌びやかないつもと違って見える帰り道……誰もがその雰囲気に目を取られ、心躍らせることだろう。

しかし、大河がクリスマスに対して抱く好きという感情はかなり特殊なように思えてくる。最初は違和感を覚えないだろうが、話を読み進めるに連れてその違和感は大きくなっていく。

まず大河が良い子にしているという時点で奇妙だ。

その理由に関して『もしかして彼女はサンタの存在を信じているのだろうか』とブログ主は思った。しかし彼女は、あまり勉強していないにも関わらず学校の成績はかなり良い、つまりは地頭が良い。不器用な描写が多いが、空気が読めないという訳ではない。

どうにもサンタの存在を信じてしまうような女子と、実際の大河の印象というものが合致しない。

極めつけには亜美にサンタのことを信じていることで笑われる。それにも大河は何も言い返さなかった。

つまり、サンタの正体を知っていながら良い子を演じているのだ。このチグハグが、物語における重要な要素であり、伏線となっている。

 

さて、そんな大河と大の仲良しであり、竜児の想い人である実乃梨はというと、冒頭で描かれたソフトボールの試合にて、とんでもないエラーをやらかす。

結果としてチームは敗北。練習試合ではあったものの、彼女の精神状態はズタボロであった。心ここにあらずといった様子だ。

それだけにあらず、どうやら竜児のことも避けているらしい。

ここで考えるべきは竜児を避けている理由である。竜児が何か悪いことをしたということは、これまでを読んでいた方ならば分かるだろう。目つきが悪いとは言え、竜児が好き好んで人を傷つけるようなことをするとも思えない。

身に覚えがないにも関わらず、好きな人に避けられるというのは精神衛生上よろしくない。

しかし竜児にとって、自分が避けられることによるショックよりも、エラーをしたことにより落ち込んでいる彼女に元気を出してもらうことを優先した。自分のことよりも、好きになった相手のことを大切にする……簡単にできることのようで意外に難しい。

そんな彼に対して、彼女は何を思うのか。それによる実乃梨の心の動きと、それを分かってしまう大河の心情により物語は大きな動きをみせる。

 

最後に個人的に読んでいて、心情を考えてみるとなんだか辛くなってしまった亜美についても語っておきたい。

彼女の立ち位置を一言で言うならば、傍観者だと言わざるを得ない。本シリーズにおける関係性というものを改めてまとめてみると、

実乃梨と大河は親友同士。

実乃梨は北村が好き。

竜児は実乃梨が好き。

北村は大河が好き(だった)。

では亜美と登場人物達との関係性はどうだろう……ただでさえ引っ越して来たことによる途中参加であって、誰とも深い関係になるには至っていない。恋愛感情も釈然としない。

そんな彼女だけが、登場人物達が心に抱える感情というものを理解していたのだろう。それに加わりたいと思ったのだろう。

いつだったか、実乃梨が亜美は大人だと語っていた。その言葉は正しかった。

本作を読み進める人は、亜美のセリフをしっかりと読んで理解してあげて欲しい。個人的に一番好きなキャラになってしまっていた。自分のような人間は、それほど少なくないことを信じている。

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