工大生のメモ帳

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とらドラ8! 感想

【前:第七巻】【第一巻】【次:第九巻
作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

ラブコメの名作。

情報

作者:竹宮ゆゆこ

イラスト:ヤス

ざっくりあらすじ

インフルエンザから復活したものの、メンタル的には壊れたままの竜児。そんな彼に大河は自立宣言を突きつける。そして幕開ける始業式、竜児はなんとか実乃梨ともう一度向き合おうとするが……

感想などなど

割れてしまった五つの星は、もう戻すことはできないのだろうか。

第七巻にてツリーの天辺に乗る綺麗な星は割れてしまって、同時期に実乃梨と竜児を取り巻く関係性というものも、どこか壊れてしまった。片方は集中力を欠いた実乃梨がボールを暴投した結果、もう片方は実乃梨が竜児に告白をさせないという形で。

目に見える輝く星は、竜児が綺麗にくっつけた。よく見れば割れた形跡が見えるかもしれないが、一見すると元の形に戻っている。では人同士の関係性というものは、接着剤のようなもので戻すことができるだろうか。

責任の押しつけ合いというものは好きではない。本作のような状況の場合、誰が悪いという指摘は無駄であろう。強いて言うなら運が悪い。

しかし大河も竜児も実乃梨も亜美も北村も、それぞれが責任を感じ、自分自身を責めていた。誰も何かを「しなかった」……いや何かを「言わなかった」ということに対して、後悔と自責の念に駆られていく。

 

読み進めていくと、作品の中で嘘をついている人物はいないことに気付く。誰もが隠したい物事に対しては「言わない」という選択肢を選んでいた。

ただ一人嘘つきの例外は亜美であり、彼女だけがどこか関係性に入り込めていない蚊帳の外のような特異な感が否めない。おそらく彼女もそれを自覚していて、だからこそ状況を冷静に鑑みることができたのだろう。彼女の語る言葉が、物語の真相であり状況だった。

そのため物語の本筋を理解するだけならば、亜美の台詞を追っかけていけばこと足りる。はっきりと説明してくれているというのに、首を傾げ「意味が分からん」と告げる北村や竜児に対して向けた「バカ」という台詞は、彼女にとっての本心であり叫びのようなものだと気がつく。

また読者は、亜美の言う「バカ」は竜児や北村だけでなく、実乃梨や大河もそうなのだろうと気付く。事実、亜美が実乃梨を責め立てるシーンというものが作中には描かれており、彼女が抱くであろう罪悪感や、傲慢さやズルさという痛い点を突いていく。実乃梨は何も反論できない。

 

亜美が語ってくれた状況というものは、結局のところ客観的に見た事実に過ぎない。人の心というものは良く分からないものだし、好意を抱いているように思えても違うという可能性もゼロではない。

竜児の場合、振られたという事実と、大河本人から直接「私は北村くんが好き」だと聞いている事実、自己評価の低さによりそこまで思考が回らなかったのだろうと説明できる。大河や実乃梨、北村だって重要な情報というものを明かしていないため、竜児をさらに混乱させていく。

そんな竜児でも状況を一瞬で理解してしまい、自分がバカだったと思ってしまう答え合わせのシーンこそが、第八巻におけるクライマックスになっている。とらドラ!というシリーズにおける一番大きな転換点であり、物語の終わりが近いことを告げている。

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