※ネタバレをしないように書いています。
憧れは捨てられない
情報
作者:白浜鴎
試し読み:とんがり帽子のアトリエ (2)
ざっくりあらすじ
キーフリーの弟子となったココは、「杖」を買うために他の3人の弟子たちと一緒に、魔法使いの街・カルンに訪れた。そこで奇妙な仮面の魔法使いに、不思議な空間に引きずり込まれてしまい……。
感想などなど
決まった図形の組み合わせと特殊な製法の墨があればどこの誰にでも使える…もっと身近なものだったんだ
生まれ持った素質によって使えるかどうかが決まると思っていた魔法は、実はその程度のものだった。しかし、その利便性ゆえに争いで使われた魔法。何度も何度も繰り返される争いで、悍ましい魔法がいくつも作られた。
その歴史を人類から消し去って、限られた者達の間だけで共有して魔法を守ることにした――彼らのことを魔法使いという。そんな秘密を知った普通の人・ココの修行の日々が始まった第一巻。
タダ山脈の頂上に向かい、そこに群生する王冠草を取ってくる最初の試験「王の許し」を二日目くらいで突破した頑張り普通人・ココの楽しい修行ライフは、不穏な影が差している。
第一巻のラスト、変な仮面の魔法使いによって、幾何学的な不思議空間に連れて行かれたココと弟子達は、巨鱗竜に襲われてしまう。そこで魔法使いに告げられた言葉が、あまりに不穏だ。
さあココ
ようこそ魔法の世界へ
きみは私たちの希望だ
ココ達を連れ去ったのは、「つばあり帽」と呼ばれる魔法使いであるらしい。
先ほど何度も繰り返される争いで悍ましい魔法が作られたと書いたが、現在はこれらの悍ましい魔法は禁止魔法に分類され、使われないようにしている。しかし、この「つばあり帽」は古代時代の仮面をして、禁止魔法を使う危険な連中であるらしい。
そんな「つばあり帽」が、ココのことを「私たちの希望」と呼んだ。過去に何者かがココに魔法の絵本と売ったことなどを考えるに、ココは「つばあり帽」にとって重要な何かを持っているような気がするが……やはり、ここで考えるには情報が少なすぎる。
とにかく彼らに謎の空間に連れて行かれてしまったココ達。そこに「つばあり帽」がどこからともなく出現させたのが、少女達が見上げるほどに大きな巨鱗竜であった。そいつがココ達に襲いかかる。
何とか魔法を駆使して竜を撒くココ達。まだ魔法使いとしては未熟な彼女達だが、自分の得意分野を生かして、炎を出したり、壁に穴を開けたり、モコモコさせたりと工夫を凝らす。
何とか撒くことができたとしても、そもそも彼女達がいる空間は元いた街とは全く異なる異空間。窓も扉もない無機質な壁が続く迷路のような空間で、さらには進んでも進んでも元の場所に戻ってきてしまうループ構造であるという始末。
ここから抜け出すにはどうすれば良いか考え、ココは竜がとある塔を中心にして、そこから離れないようにしていること。その守られている塔には、魔法陣が描かれているっぽいことを見つける。
ココは魔法陣を描く技術はまだ低いかもしれないが、竜に追われている状況でその背後にある魔法陣の存在を確認し、さらには塔から離れられないことを推測した。そこだけに留まらず、ココ以外のメンバーの得意分野を生かした作戦を立案。もしかせずとも魔法使いとしての素質、のみならず参謀としての素質まであるかもしれない。
そうしてココが立てた竜に対抗する作戦……については読んで確認してほしい。ココの優しさ故に出てきた魔法を信じている彼女らしい作戦であり、「この作戦が一番失敗しても影響が少ない」という彼女の発言から垣間見える「他にも何個か思いついてるんだ……」という彼女の頭の柔らかさなどが、個人的に好きだったりする。
第一巻ではただ憧れていた魔法のキラキラとした部分だけを見ていたように思う。第二巻でも、魔法が日常に溶け込んでいる世界観を存分に描き、料理や移動の一つをとってしても魔法によって効率化されていく様は、作業ゲーム好きとしてはワクワクするものがある。
一方、魔法には悍ましい危険魔法があるという話が登場し、実際にココ達に襲いかかった。このような危険が降りかかる可能性を、今後はちゃんと認識しておかなければいけない。
魔法に関する影の部分はそれだけではない。
そもそも魔法の利点は、人智を超越した事象を描くだけで扱えるという簡単さにある。だからこそ争いで使われ、魔法を教える人間が制限されるに至った。それにより魔法を使えない者は、魔法を使える者を頼りにするようになった。「魔法使いであれば何でもできる」と思うようになった。
忘れてはいけないのは、魔法使いは万能ではない。彼らもまた人間なのだ。生まれながらに魔法が使えた選ばれた人間ではない。勉強し、鍛錬を積んでいて、誰にだって未熟だった修行中の頃があったのだ。
そんな修行中の魔法使いにも、熟練の者と同じような期待を人々は向ける。魔法が使えるのであれば、何だって出来るだろうと。その期待に応えようとすること、早く一人前になりたいという焦りが出てくる。
軽い魔法だと思っても、それが大きな影響を及ぼすことを理解しないといけない。緊張と緩和の第二巻だった。
