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【漫画】とんがり帽子のアトリエ(4) 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

憧れは捨てられない

情報

作者:白浜鴎

試し読み:とんがり帽子のアトリエ (4)

ざっくりあらすじ

アガットは「第2の試験」を受けることとなった。これに合格すれば、魔法を使えない人の前で魔法を使うことができるようになる。そんな大事な試験では、師匠の庇護の手から離れることとなり、それを「つばあり帽」は利用しようと動き出す。

感想などなど

魔法使いには五つの試験があり、それらを段階的にクリアしていくことで出来ることが増えていく。第一の試験『王の許し』については、第一巻にてアガットに騙されるような形で受けることとなった試験であり、この試験に合格することで正式に魔法使いの弟子として認められる。

同じような試験が、後4つ残っているという訳だ。それぞれ下記の通り。

  • 第一の試験 王の許し
  • 第二の試験 騎士の忠誠
  • 第三の試験 門番の問い
  • 第四の試験 女王の祝福
  • 第五の試験 賢者の教示

第四巻にてアガットが受けることになる第二の試験では、合格すると人前で魔法を使うことが許される。一年に一度しか受けることの許されない、魔法使いとして生きていくために必要な第一関門とでもいったところか。

そんな第二の試験「騎士の忠誠」の内容は下記の通り。

騎士のようにある対象を守りながら

蛇の背洞窟を入り口から出口まで無事に送り届ける護衛任務

その護衛対象は人間……ではなく海獣鳥(メルフォン)という水辺に住まうペンギンの鳥っぽさを強めた感じの動物である。巣立ったばかりの彼らが、魔法が渦巻いて危険な蛇の背洞窟を通り抜けられるようにサポートするというのが試験の内容である。

護衛の最中、自分に割り当てられた海獣鳥を守るのは勿論だが、他にも制約がある。受験者は魔法の外套を羽織ることになるが、その間だけ人間ということがバレない。何らかの要因でこの外套が脱げてしまった場合、人間であるということがバレて海獣鳥が逃げ出してしまう。

また蛇の背洞窟は、魔法の秘密を隠して誰にでも使えるようにはしないようにする「結託の日」以前に、今でいうところの禁止魔法によって自然環境が塗り替えられた場所であるようだ。それにより洞窟を縦横無尽に巡る蛇のような通路から、一歩でも踏み外すと洞窟に落下して入り口へと逆戻りとなる迷宮になっている。

そんな危険な遺跡にて、危険魔法の悍ましさを学びつつ、魔法の扱いを試験する。読者としても危険魔法によって作られた悍ましさと幻想的な雰囲気が噛み合ったダンジョンのような世界観――外套ととんがり帽子、洞窟の壁面を縦横無尽に張り巡らされた蛇の鱗のような通路を進んでいく少年・少女。このファンタジー世界のアートチックな空間がたまらない。

そんな彼らにとっても読者にとっても楽しい(?)試験を受けるキーフリーの弟子は、アガットとリチェの二人。アガットは早く試験に合格して次の段階に進みたいと考えている一方、自分が好きな魔法だけがしたいリチェは、試験を受けるつもりはなかった。

好きな魔法だけしかせず、自分の可能性を広げようとしない彼女の背中をそっと押すためにした師匠なりの優しさであるが、リチェがこの試験を通して何か変わることができるのだろうか。

そしてどうやら動き出したらしい「つばあり帽」の動向も気になる試験の様子を見ていこう。

 

あくまで試験を受けるキーフリーの弟子は、アガットとリチェの二人。実際にはクックロウの弟子ユイニィも合わせた、合計三人で試験を受けることとなる。アガットは才能的にも、努力してきた成果的にも、前向きな姿勢的にも、今回の第二試験に合格できるだけの素養はあるように思う。素人考えではあるが。

一方、リチェはどうだろうか?

これまで「自分の好きな魔法だけ」のことを考えたいと彼女は語っている。それなのにこれまでの師匠は、魔法の教本を取り出して、そこに描かれている魔法を "正解" とし、リチェが好きな魔法は "間違い" として否定されてきた。それ故に、キーフリーの教えを一切聞かずに自分の好きだけを追求してきた。

他の人の魔法が、自分にとっての "間違い" とでも言わんばかりに。自分から言わせてもらえば、リチェの好きを否定してきた師匠も、他の人の教えを聞こうともせずに否定するのもまた、どちらも傲慢だと思ってしまう。

しかし、そんな弟子の見える世界を広げてあげることも師匠の務め。自分が否定してきた好きではない魔法にも、目を向けることの大切さを教えるべく、彼女が受けたくないと言い続けてきた試験に、今回は騙し討ちのような形で受けさせることとなった。

果たして、リチェは自分の世界を広げることができるのだろうか? 大きな見所である。

そんなリチェと反対に、自分を好きではない少年がユイニィだった。どうやら彼は、この第二の試験を受けるのは三回目。つまり二回連続で落ちている。

一回目で落ちるのはまだ分かる。初見で蛇の背洞窟の魔法の特性を理解し進んでいくのは難しいように思う。それを踏まえた二回目では対策を立てて挑み直すことができるとなれば、合格率は跳ね上がる。しかし彼は二回目でも落ちた。

それらを踏まえて今回の三回目、これまでの失敗を踏まえて対策をしていれば問題はないはずだ。それでも彼の表情はとても暗い。自信がないということもそうなのだろうが、ブログ主が思うに、彼は自分が嫌いなのだ。

試験が進むにつれて、ユイニィは自信がない故に人前で魔法陣を描こうとすると手が震えてしまって正しく描けないことが明かされる。第一の試験は単身で乗り込むからこそ合格できたのだろうが、第二の試験では試験監督官が後ろに付いており、一緒に試験を受ける人もいる。彼にとっては最悪な環境だ。

それでも試験に合格するために、「おそらく必要になる」魔法陣をあらかじめ全て書いておいた状態で試験に臨んでいたのだ。そのため、少しでも自分の想定とズレた事態になった場合、「自分は何もできない」と思い込んでいた。

思い込みとは恐ろしいもので、すぐ目の前に見えているものも見えなくなる。自分が嫌いで、自信がなくて、緊張しがちな性格であれば尚更で、二回も試験に落ちたという過去の失敗が追い打ちをかけてきて、「自分は何もできない」という劣等感のループは増していく。

ここから自分の力だけで立ち直ることは不可能だ。自分で気付いて自己反省して立ち上がることは大人でも難しいように思う。このループを破壊してくれるのは、本来であれば師匠がすべき役割だと思う。しかし彼の師匠は、彼を真っ向から否定した。できない弟子である、と。

彼の殻を壊してほしい、そして壊してくれるのはおそらくリチェだけだと、読み進めていると感じる。リチェとユイニィは、自分を否定されたという過去と、自分の殻に閉じこもったという状況が良く似ている。

リチェの場合は自分以外を否定して、ユイニィは自分のみを否定した。その両極端の考え方、その中間が欲しい。互いに自分の反対を見て、何か気付いてくれるのではないか? まるで師匠みたいな立場で、二人の成長を見届けていく。

 

「つばあり帽」が本気で動き出した。この試験に賭けている子供達の未来を真っ向から否定して、魔法は人々を救って幸せにするというココの想いまでも否定するかのように、危険魔法が猛威を振るって全てを破壊していく。

この破壊の情景は絶望感に満ちている一方、「つばあり帽」が実に楽しそうなのが印象的だ。まるで「これこそが魔法のあるべき姿だ」といわんばかりである。それに立ち向かうキーフリー達、師匠の背中が実にカッコいい。

子供達の未来は、周囲にいる大人達の背中で決まる。そう思える第四巻だった。

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