工大生のメモ帳

読書感想その他もろもろ

なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?4 神罰の獣 感想

【前:第三巻】【第一巻】【次:第五巻】
作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

英雄のいない世界で英雄になる

情報

作者:細音啓

イラスト:neco

試し読み:なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか? 4 神罰の獣

ざっくりあらすじ

聖霊族と協力し、幻獣族「牙皇ラースイーエ」を倒すこととなった。そこで幻獣種に襲われずに唯一残っている鉄くずの街アギドに向かうことに。そして時を同じくして、シドの名を持つ者達もそれぞれの思惑で動き始めていた。

感想などなど

幻獣族はドラゴンに代表されるような地上最強の生命体の一族である。その理屈を上回る圧倒的な暴力は、人の手でどうこうできるものではない。だからこそ、たった一つ残された鉄屑の街アギトを除いてボロボロの状態にまで追い込まれているのだ。

しかし、カイの知識による戦略や武器に加え、聖霊族の力を加えればもしかすれば勝てるかもしれない。そんな希望の光が見えた。だがそれでも簡単な話ではない。ラースイーエはあの切除器官を手名付けて、六元鏡光に手がつけれなくなる前に倒さなければならない、と思わせる程の力を得ているのだ。

カイの持っている運命を切り裂く剣を持ってしてもダメージを与えることができるかどうか、六元鏡光だって同様だ。戦況は良くなっているようで、予測できない事態ばかり起こるこの世界では一瞬でひっくり返ってしまうことを想定しておかなければいけない。

今、この瞬間に襲われてもおかしくないのだ。

 

だがしかし。

メタ的な読み方をしてしまうと、第一巻で悪魔族の英雄「冥帝ヴァネッサ」を打ち倒し、第二巻で蛮神族の英雄「主天アルフレイヤ」を打ち倒し、第三巻で聖霊族の英雄「霊元首・六元鏡光」を仲間に加え、この第四巻で幻獣族の英雄「牙皇ラースイーエ」のかな? というように思ってしまう。

だが、このシリーズはまだまだ終わらない。つまりこれまた簡単なメタ的な読み方をしてしまうと、ラースイーエを殺せないか、はたまた別の敵が現れるのか、またはその両方が予想される。

そんな読者の想像を良い感じで裏切ってくれるのが名作だとブログ主は思うのだ。そういう意味で、この作品は色々な仕掛けを施してくれる。

例えば。シドの名を持つ者の出現があげられる。第三巻にて、意味深なシーンで現れて、カイの持つ武器に重要な意味があることを暗示させ、また預言者と呼ばれる所以ともなった預言を与える神の存在が複数いることも示唆された。

つまり、大戦は悪魔族、蛮神族、聖霊族、幻獣族、人族の間で行われているものだと思っていた。だがその想定がそもそもおかしいのではという違和感が、読み返して見ると随所に散りばめられている。

よく考えずとも、そもそも世界を変えてしまった黒幕がいるのだ。それをどうにかしない限り、この物語は終わらない。そんな世界の核心を突くような展開が、ラースイーエとの手に汗握る戦闘も交えて繰り広げられていく。

 

その新たな敵の合い言葉は鋼。銃弾も通らない鋼鉄の肉体を持ち、不思議な方術を操る様は、これまで戦って来たどの種族とも合致しない。これまでの正史で得た経験も知識も歯が立たない。

ある意味、別史としての戦いはここからが始まりなのかもしれない。そしてこいつらが現れたのは何が原因なのか。シドは何を知っていたのか。全ての真相を知るのは、まだまだ先のことになりそうである。

【前:第三巻】【第一巻】【次:第五巻】
作品リスト