※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
文化祭
情報
作者:渡 航
イラスト:ぽんかん⑧
ざっくりあらすじ
ぼっちのスキルをフル活用して、文化祭準備から逃げる気満々の八幡。しかし、HRをサボっている間に、文化祭の実行委員にさせられてしまう。
感想などなど
文化祭。
皆様方は一体どのような思い出をお持ちだろうか。かくいうブログ主も、高校時代というものがあった。裏方としてせっせと舞台装置制作に勤しんだり、後ろの方で踊るダンスの練習に汗水垂らしていた記憶がある。
あまり積極的ではなかったにせよ、とても楽しかったと言えると思う。
そんな文化祭のあるあるの一つとして、『最後に委員長(もしくはそれに準ずるリーダー的な人)が号泣する』ということを提唱したい。文化祭に限らない話ではあるが、頑張って一つの企画を成功させた、その喜びから流れる涙は青春の一ページにそっと刻まれることになるだろう。
運動神経の良い人間しか活躍できない体育祭とは異なり、文化祭では普段はあまり目立たないクラスメイトにもスポットライトが当たることがある。本作においては、服飾関連において尋常ならざるスキルを発揮する川﨑さんなどである。
そして比企谷八幡という常時ステルススキルをオンにしているようなエリートぼっちも大いなる活躍を見せてくれた。まぁ、その活躍手法が捻くれすぎているため、一般における評価が得られることはないだろうし、評価を得られた時点でそれはある種の失敗なのであるが。
比企谷八幡が活躍する舞台は、文化祭を裏から支える実行委員であった。仮病でサボっている間に――目が死んでいるため、仮病と疑われない――平塚静先生により勝手に実行委員にさせられていたのであった。
ちなみに実行委員は男女のペアである。こうして出会った二人の男女が、互いの想いに気がつき恋愛に発展して……などというテンプレもびっくりな展開は、本作においてはあり得ないので安心して(?)いただきたい。
一緒にすることになった女子の名は相模南。彼女の紹介でははっきりと、クラスの二番手女子グループと書かれており、何というかルックスは良いのに、こう色々と足りない系の女子である。
彼女は好きで実行委員になったという訳ではなく、葉山隼人に良い姿を見せたい的なアレで、なんというか乗せられた的なノリでやっている。さらにそのノリは放課後行われた実行委員の集まりにまで継続され、何となくという勢いで実行委員長にまでなってしまった。
そんな彼女が実行委員長として実行委員をまとめられるはずもない。無能なリーダーによって率いられたチームというものは、あっという間に瓦解する。ノリでやっていけるのは仲良しチームだけなのだ。
委員長としての彼女の行動全てが、無能ムーブである……というかこの作者、無能を書くのが上手すぎませんかね。こうならないようにしたい。
さて、そんな相模南も自分だけでは文化祭が失敗することを危惧したらしい。危惧できるだけ馬鹿ではないと褒めておこう。
そんな現状を打破するために向かったのが、奉仕部であった。
どうやら雪ノ下雪乃に副委員長としての補佐をお願いしたいようだ。
しかし、ここで思い出して貰いたい。奉仕部がすることはあくまで補助、最後に頑張るのは依頼主自身であるということを。
補佐として行動すること、それは奉仕と言えるのだろうか。答えは否である。
雪ノ下らしくない矛盾をはらんだ不完全な行動だ。この矛盾がストーリーにおいて、重要な要素となっており、比企谷もその矛盾を解消するために画策した。
チームに必要なもの……優秀なリーダー? それも必要だろう。
八幡が出した答え……それはヒールである。プロレスの演出で悪役に徹する人物のことを指す言葉だが、本作においてもその言葉が登場する。
捻くれ者による捻くれた解決法。その行く末を見届けてあげて欲しい。