※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
夏の終わりは花火で締める
情報
作者:渡 航
イラスト:ぽんかん⑧
ざっくりあらすじ
夏休みの終わりも近い比企ヶ谷八幡は、今日も怠惰な日々を過ごそうとするも、クラスメイト達と友好が深まっていく。ただ一人、雪乃下雪乃を除いて。
感想などなど
夏休み。前回はキャンプへと赴き、小学生達の関係性をぶち壊した。誰かが独りぼっちになる関係性ならば、いっそ壊してしまえば良い。世界ごと変えてしまえば良い。そんな比企ヶ谷八幡の考え方が、自分は決して嫌いではない。関係性を持ちたいかと言われれば、首を傾げてしまうが。
とにかく、一つの問題を解決に導いた。その後、鶴見留美に友人ができるかどうかは、彼女次第なのである。
さて。その後(雪乃下雪乃関連では怪しげな雰囲気が漂いますが)、比企ヶ谷八幡の夏休みはどのようになっていくか。引きこもり予備軍とは思えない賑やかな夏休みの感想を書いていきましょう。
物語の初めからいきなりの由比ヶ浜結衣……家に上がり込んでくるので、随分と距離感が近くなったなぁ、と思いましたが、そういう訳ではないようです。どうやら入学式の日に八幡が助けた犬・サブレを家族旅行の間、預かって欲しいようでした。
家族旅行……最後に行ったのはいつだったでしょうか。自分は面倒くさいというか、恥ずかしさというか、行きたがりませんでしたが、比企ヶ谷八幡も同じらしい。そういう人、多いんじゃない? えっ、多くない? そう?
この冒頭が意味することは、残りの夏休み――少なくとも由比ヶ浜結衣が帰ってくるまでは、由比ヶ浜結衣とのイベントはないということです。つまり彼はぼっちの残りを過ごすということに……。
何てことはなく、代々木ゼミナールで川……川何とかさんと出会い、サイゼに連れ込まれ、弟君の相談に乗って上げたり、男よりも女らしい美男子・戸塚彩加と共に楽しいデート……に乱入するゲーマーの中でもぼっちのゲーマー・材木座義輝との楽しい時間。
そんな楽しい時間の中で考えないといけないのは、雪乃下雪乃の存在です。奉仕部のメインキャラであるはずの彼女の影すらも登場しない楽しい日々。おそらく、由比ヶ浜結衣も家族と共に楽しい日々を過ごしていることでしょう。
さらに、もっと突っ込んで考えてみましょう。『由比ヶ浜結衣と比企ヶ谷八幡』、『雪乃下雪乃』の関係性は、奉仕部の仲間であり、被害者と加害者の関係性とも言えます。実際、物語の中で、雪乃下雪乃の姿は登場していないのに、名前だけは度々登場しているのです。
そんな日々の終わりは花火大会でした。比企ヶ谷八幡の隣にいるのは、旅行から帰ってきた由比ヶ浜結衣。その状況が作られたのは、妹である比企ヶ谷小町の策略のお陰です。残念ながら彼女の浴衣姿のイラストはありませんでした。欲しかったなぁ。
代わりにあるのは雪乃下陽乃の浴衣姿のイラスト。もう五巻が終わるという段階になろうとも雪乃下雪乃の姿はでてこないのです。
最後の比企ヶ谷八幡の独白とイラストが、意味深です。最後まで読んだ後、読み返すと色々と考えさせられる作品でした。