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【漫画】よふかしのうた10 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

今日に満足できるまで夜ふかししてみろよ

情報

作者:コトヤマ

試し読み:よふかしのうた (10)

ざっくりあらすじ

吸血鬼を滅ぼすために行動を開始した鶯アンコは、ハロウィンの街で吸血鬼を撃った。夜の学校で七草ナズナと殺し合いをし、夜守コウをその現場に呼びつけた。彼女の作戦とは一体――。

感想などなど

吸血鬼は不死身である。

これまで吸血鬼の腕がちぎれ飛んだり、ぶっ飛ばされたりと人間なら死んでいるシーンが散見された。第九巻においても、銃で頭を抜かれているが、次のシーンでは立ち上がって元気に笑顔を振りまいている。

そのため、銃声を聞いたはずの周囲の人々は映画の撮影か何かかと勘違いしてくれているので、平和な風景が保たれている。これが人だったらと思うと、それはそれは恐ろしい。

一方、学校の方では七草ナズナの眼球が打ち抜かれていた。真っ赤に充血した片目が、吸血鬼の再生速度の恐ろしさを物語っている。それと同時に、再生にはいくらか時間がかかるということも同時に伺える。

そんな吸血鬼・七草ナズナと、探偵・鶯アンコの殺し合いは、戦闘とは呼べないくらい一方的なものである。たとえ拳銃を持っていたとしても、知識を持ち合わせていたとしても、吸血鬼と人が戦えばそうなるだろうといった感じの暴力が振るわれる。

それでも鶯アンコが死んでいないのは、七草ナズナが彼女を殺したくないと思っているから。

そんな彼女の殺意を煽るように、本気で殺しに来るように、夜守コウを呼びつけて殺すと明言する鶯アンコ。彼女のメールを見た夜守コウは、学校に向かって走り出す。そんな彼が学校に着いたところで、第十巻はスタートとなる。

さて、鶯アンコは宣言通りに夜守コウを殺すことができるのだろうか。

 

吸血鬼を皆殺しにすることは不可能だ。

吸血鬼を殺す方法は存在する。吸血鬼になる前――人として生きていた頃に固執していた最も強い思い出のアイテムを破壊することで、吸血鬼を殺すことができる。また、十年くらい血を吸わせなければ死ぬ。他にもあるのかもしれない。

それでも皆殺しは無理だ。

七草ナズナという人間だった頃の記憶がない特殊な吸血鬼がいる。人間だった頃のアイテムを探そうにも、この世の何処にも残っていない吸血鬼だっているだろう。そもそも吸血鬼の強さは第九巻で思い知った。殺そうとしても本気で抵抗されれば敵わない。

それでも殺したかった。

そんな鶯アンコの選んだ方法は、吸血鬼が死ぬかもしれないという極々小さな可能性に賭けた、遠回りの自殺であった。鶯アンコが求めたのは、絶対に果たせないと理解してしまった復讐を、果たせたと納得できるような後悔のない死だったのかもしれない。

そんな死に満ちた物語の結末は――。

「色々あったけどみんな生きててハッピ~~~~~!」

 

まぁ、ハッピーエンドと言って良いだろう。

鶯アンコは夜守コウに救われて、無事に歳を取って28歳になった。死にたい人間を無理やり生かして何になる、と説教じみたことを言う気はない。不確定要素の多すぎる自殺手段を選んだのが悪い。七草ナズナが、かつての友達を殺せるはずがないことくらい分かっていただろう。

そして、この第十巻において大きな進展があった。

なんと夜守コウが一瞬だけ吸血鬼になったのだ!

あぁ、彼もついに恋を知ったのですね。これで完結かぁ、良かったねぇ……と言いたいところだが、残念ながら『一瞬だけ』である。恋が冷めるのは一瞬というが、あまりに儚い恋でした……という話でもない。

謎は深まりつつ、夜守コウでも恋ができるということが分かったのだ。散々、何かが欠如してるとか書いてごめんなさい、と謝罪をしておこう。

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