※ネタバレをしないように書いています。
今日に満足できるまで夜ふかししてみろよ
情報
作者:コトヤマ
試し読み:よふかしのうた (11)
ざっくりあらすじ
鶯アンコの家庭を破壊した吸血鬼は、コウもナズナも良く知る吸血鬼・星見キクであった。彼女に恋をして吸血鬼にしてもらおうとしていたマヒルは、コウとの対立を深めていく。むやみやたらに眷属を増やしていく星見キクの目的とは……。
感想などなど
鶯アンコという人間と吸血鬼との間にある因縁は、彼女の遠回りな自殺が失敗したという形で幕引きとなった。世間がハロウィンで賑わっている中、起きた事件の真相を知る者は少ない。
吸血鬼は夜の街を飛び交う日常を誰も知ることはなく、鶯アンコは生きている。コウは銃弾で撃たれたが死んでいない。何かをきっかけとして吸血鬼に変貌を遂げるようだが、そのきっかけが如何せん分からない。強いて言うなら半吸血鬼という曖昧な境界の上に彼は立っている。
そんな状況の中、物語は次のステージへと進むこととなる。
鶯アンコの家庭を破壊した吸血鬼――星見キクとの対決へとシフトしていくのだ。この星見キクというのは、どうやらマヒルとの愛を順調に育んでいるらしい。そして彼自身、彼女に血を吸われることで吸血鬼になることを望んでいる。
しかし鶯アンコの家庭を破壊したこと、これまで無闇矢鱈に眷属を増やしてきたことなどを鑑みると、どうにも彼女の行動は怪しい。好き好んで眷属を増やす意味があるのではないか、という推測を抱くのは必然であろう。
それを確かめるべく行動を開始するコウ。
そんな彼の意図を知って、彼と敵対する者が現れた。キクを愛するコウの親友・マヒルである。
マヒル視点で考えてみよう。
彼とコウは鶯アンコという探偵女が、吸血鬼を殺す様を目の前で見ている。彼女の目的は吸血鬼を殺すことだというのは、彼女自身が語っている。一度は探偵事務所で吸血鬼のことを聞きに行ったマヒルにとって、彼女は愛する人を殺そうとする敵である。
そんな彼にとって、コウも同じ気持ちを共有する友達なはずであった。
それがあろうことか、鶯アンコへの敵対心を翻し、「彼女はもう吸血鬼を殺さない」などと言い出したらどう思うか。いやいや、つい先日、学校で吸血鬼を殺してたじゃないかと信じられないのも無理はない。よくよく聞けば、彼女は星見キクと話がしたいなどと言うではないか。
彼にとってコウは星見キクに仇なす敵となった。ついさっきまで親友だった相手をボコボコに殴るマヒルの行動力、感情の切り替えの早さには驚かされる。口から鼻から血を出すほどに本気の暴力が振るわれる。
そんな時、コウは半吸血鬼となった。
コウとマヒル、互いの感情がぐちゃぐちゃになる夜だった。
コウはマヒルのためを思い、鶯アンコのためを思い、星見キクと話をするために行動した。そんな中で発動した半吸血鬼の力は絶大で、マヒルを殺しかける。結果として彼の行動は否定され、親友に絶交を言い渡された。
マヒルは愛する人を守るために行動し、自分がなることのできていない吸血鬼としての力を得たコウを目の当たりにし、さらには殺されかける。彼の心情は愛する人への思いや、コウに先を越されたという劣等感、欲しいものが手に入らないという焦り……夜の街に消えるには十分すぎる心の壊れ方をしている。
さて、そんな状況を星見キクはどう見るか。
さらにそんな二人の状況を知った友人――アキラは行動を開始する。何故かメイド服を着ての参戦であるが、メイド服は可愛いので無問題……本当に中学生か……? どぎまぎする第十一巻であった。