※ネタバレをしないように書いています。
今日に満足できるまで夜ふかししてみろよ
情報
作者:コトヤマ
試し読み:よふかしのうた (3)
ざっくりあらすじ
コウとナズナの二人っきりの夜に、新たに別の吸血鬼が乱入。眷属にする気がない人間を、いつまでも囲い続けることを辞めさせるべく現れたようだが――。
感想などなど
吸血鬼は顔とスタイルが良い。
自分を好きになってもらい、その相手の血を吸うことで繁殖する吸血鬼にとって、異性受けする外見というのは、ある種の進化のようなものなのかもしれない。その証明とでも言わんばかりに、この第三巻で登場する女性吸血鬼達は、みんなモテパワーマックスな外見をしている。
かくいうナズナさんも可愛い。眷属を増やした経験なしだが、増やそうと思えばいくらでも増やせそうな感じはする。その「増やそう」と思うまでのハードルが高いのが問題ではあるが。
そんな吸血鬼にとって避けなければならないことは、『吸血鬼の存在が世間に認知されること』と、『人々に恐れられること』であろう。
血を吸われるということを知っていて、吸血鬼と好き好んで関係を継続させようとする物好きはそれほど多くない。クリーチャーというのは殺処分の対象になることは、決して空想世界だけの話ではないのだ。ある意味、『吸血鬼の存在が世間に認知されること』が、吸血鬼の終焉とイコールなのかもしれない。
そんな事態を憂う吸血鬼にとって、吸血鬼のことを知り尽くした人間がいるということは恐怖に他ならない。もしもコウが吸血鬼を殺す方法を知ってしまったら? もしも吸血鬼のことを世間にばらすようなことをしたら? そんな事態を防ぐために、吸血鬼の間に存在するルール。
『血を吸って眷属にすることができなければ殺す』
血を吸うという行為をした時点で、吸血鬼であるという事実は相手に伝わってしまう。それを誰かに話して広げてしまう前に、そのまま殺してしまえ。なるほど、実に合理的である。
そんな吸血鬼にとって大切なルールを破っているナズナの元に現れたのが、美人吸血鬼五人。
平田ニコ
小繁縷ミドリ
蘿蔔ハツカ
本田カブラ
桔梗セリ
みんな方向性の違う美人でモテそうな方達ばかり。それぞれ惚れさせた人間の血を吸って、眷属を作っているのだろう。個人的にタイプなのは本田カブラである(彼女のエピソード含めて好き)。
そんな彼女たちがコウを落とそうと色々してくる。ブログ主も落とされてみたい。
ブログ主の願望は捨て置くとして、この第三巻で重要な事実が(たくさん)発覚する。一つは『初めて血を吸われた日から一年以内に吸血鬼化しなかった人間は、一生吸血鬼になれない』という縛りである。
まだナズナのことを好きになる気配のないコウは、これから一年以内に吸血鬼になるために好きにならなければいけない。「何年かけても好きになる」などと啖呵を切ったはいいが、それはそもそも無理という訳だ。
そんなピンチなコウに協力してくれる者もいる。例えば朝井アキラ、コウの話を聞いていることで彼女も吸血鬼にかなり詳しくなっているのだが、吸血鬼達はそのことを認知しているのだろうか。
夜の街でナンパ待ちしている吸血鬼・桔梗セリも、コウの悩み解決に協力してくれた。これまで数々の男を籠絡し、好き放題してきた彼女のデートプランはナズナに突き刺さるのか?
このまま順調にいけばコウはナズナのことを好きになることはできるのだろうか。だんだんと不安に感じつつ、吸血鬼達の抱える闇や過去にも迫っていく。
素晴らしく異性受けする外見を持ちつつ、異性にモテまくる彼女たちの人生は、順風満帆かのように思えた。しかし愛されるということにもまた、ある種の才能が必要なのではないかと思う今日この頃。
新章の幕開けにふさわしい巻であった。