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【漫画】よふかしのうた4 感想

【前:第三巻】【第一巻】【次:第五巻
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※ネタバレをしないように書いています。

今日に満足できるまで夜ふかししてみろよ

情報

作者:コトヤマ

試し読み:よふかしのうた (4)

ざっくりあらすじ

吸血鬼・小繁縷ミドリに誘われたやって来たメイド喫茶。どうやら外見だけは良いナズナに、メイドとして働いて欲しいとのことだった。そのメイド喫茶で事件は起きる。

感想などなど

男女の友情は成立するか?

この命題に向き合って描いた作品はたくさんある。洋画、邦画に限らず描かれていることから察するに、全世界共通で多くの人が悩んでいることなのだろう。

吸血鬼・桔梗セリは滅茶苦茶モテるし、男にチヤホヤされて生きてきた。多くの目線を向けられてきたことは想像に難くない。そしてそういう男達との付き合いに心底疲れた彼女が、ゆったりと付き合うことができる唯一の相手がメンヘラさんだった。

第三巻のラスト、メンヘラさんはセリさんを好きになってしまい、これまでと同じような友達同士の関係が続けられなくなって悩んでいた。一方の吸血鬼・セリは、友達関係のままでいることを望んで、それができないならば殺してしまえというところまで拗れていた。

結局、彼は彼女の眷属になることを選び、吸血鬼になった。コウがなりたくてなれない吸血鬼に、それはそれはあっさりと。眷属にするのを躊躇うセリに向けて、メンヘラさんが言った「人間の都合なんて無視して」という台詞が、彼なりの優しさの表れで好きだったりする。

そして迎える第四巻、舞台は『メイド喫茶』である。

 

ブログ主はオタクだが、メイド喫茶に言ったことがない。あそこには「楽しさ」とか「飯の旨さ」を求めるのではなく、漠然とした「人生経験」を手に入れる場だと思っているのだが、ブログ主の認識は間違っているだろうか。

人生で一度くらいは行ってみたいと思いつつ、どうにも足が運ばないメイド喫茶。そこに中学生にして足を運んだのが、我らが主人公・夜守コウである。とはいっても、ナズナの付き添い的な感じではあるが。

経緯としては、メイド喫茶で働いている小繁縷ミドリの同僚が、急用でシフトに入れなくなった。その穴埋め役が欲しいが、仕事のライバルは増やしたくない。都合良くモテない知り合いを探していたところ通りかかったのが、モテない吸血鬼・ナズナであったという訳だ。

こうして金(とビール)に釣られてメイド喫茶で働くことになったナズナ。メイド喫茶はお客様を「ご主人様」と呼び、来店のことを「ご帰宅」と言い、高度な会話体系が構築された特殊空間であるが、それらになじめるはずもなく……だがそれがまた可愛かったりするナズナのメイド姿は眼福である(アニメでここまでやってくれ)。

そこもまた日中の疲れを癒やす夜の空間なのだろう。可愛いが正義、人気を獲得するためならば、どんな手段だって使うメイド達の戦場と言い換えることもできるかもしれない。

そこで事件は起こる。

 

起きた事件を端的に説明するならば、盗撮事件である。

メイドさんたちの着替えや、バストアップ、スカートから覗く太ももの際どいショットがネットにばらまかれていたのだ。特に盗撮のターゲットにされていたのが、ナンバー2の女の子・アリサちゃん。ポニーテールの可愛い子で、吸血鬼ではない。

ちなみにナンバー1は吸血鬼の小繁縷ミドリだ。この手の業界は、吸血鬼に牛耳られているのではなかろうか?

この事件では盗撮事件の時だけIQが上がる天才探偵・夜守コウが大活躍する……いや、エッチぃ事件だけ推理力が上がる探偵か……いや、変態になるとIQが上がる……? とにかく彼の活躍で事件は万事解決する。

と探偵の才能に目覚めたところで、彼の前に現れたのは本物の探偵だった。

彼女の名前は鶯餡子。くたびれた大人の女性で、タバコがよく似合う格好いい人だ。どうやら彼女は、行方不明になったメンヘラさんのことを捜索しているらしい。吸血鬼になって、人間社会にいられなくなった彼は、社会的に行方不明者扱いということなのだろう。

彼のことを探して届け出を出したか、探偵に相談したのだろうか。そう考えると、彼を吸血鬼にして人間社会から切り離した行動は、どうだったのだろうかと考えてしまう。しかし眷属となった彼が幸せそうなのは疑いようもなく……これは考えた程度では答えがでない問題のような気がする。

吸血鬼になりたいという願望を持ち、叶えた者達ばかりが登場するが、世間的にはそういった存在の方が少数派なのではないだろうか。そう思えてならない。色々なことを考えさせながら、颯爽と探偵さんは去って行く。

不穏さを際立たせて終わった第四巻。温度差が凄まじい内容であった。

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