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【漫画】よふかしのうた9 感想

【前:第八巻】【第一巻】【次:第十巻】
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※ネタバレをしないように書いています。

今日に満足できるまで夜ふかししてみろよ

情報

作者:コトヤマ

試し読み:よふかしのうた (9)

ざっくりあらすじ

七草ナズナの初めての眷属候補だった目代キョウコ。彼女がナズナと一緒に生きていく覚悟を決めた夜、待ち受けていた惨劇とは――。

感想などなど

第八巻を要約すると、七草ナズナに初めての眷属候補が出来た……完。

夜間学校の文芸部室にて出会った目白キョウコとの日常を通じ、人となっていく過程は読んでいて面白いものがあった。現在の彼女の人格は、かなりの部分で目白キョウコによるものが大きかったように思う。このまま何事も起こらなければ、目白キョウコは初めての眷属になっていたことだろう。

しかし、実際にはなっていないことは今が物語っている。

この事実が意味するのは、二人の関係を引き裂くような何かが起きたということ。その一連の事件の始まりから顛末までが、この第九巻では描かれていく。

そもそも第八巻での目白キョウコの境遇が救いようのないものだった。父親の浮気は確定し、母親もほとんど戻ってこない。父親にプレゼントしたライターは、机の引き出しにしまわれたままで使われた形跡がない。PCのパスワードが娘の誕生日なことだけが、父親としての威厳(?)を保っている。

そんな現実に嫌気が差して、吸血鬼になることに決めた目白キョウコ。早速、ナズナに血を吸って貰っている。やはり吸血鬼にはならないが、これから先、何度だって血を吸って貰う覚悟はしていた。

そんな彼女の覚悟をぐらつかせる事件が起きる。

父親が戻ってきたのだ。

 

「倒産は心を入れ替える お前を 母さんを大事にする」

「得るしてくれとは言わない でも…本当だ 変わるから」

父親が家に帰ってきていた。浮気をしていたことは事実だが、その相手とはちゃんと別れたらしい。今度こそやり直したいと、深く頭を下げる父の姿は、なかなかにショッキングな絵面であった。

そして母親も頭を下げた。娘のことをほったらかして、何もしてあげられなかったことを悔い、父親が帰ってきた今だからこそ、家族としてやり直そうとし、ゆっくりと言葉を紡いだ。

そんな両親の姿を見て、目代キョウコは涙を流した。これまでどれほど寂しかったか、その辛さを吐露した。ここからようやく、家族として再スタートできる。そして突発的に始まる誕生日パーティ。

実は目代キョウコは、今日が誕生日だったのだ。

まだ、ぎこちなさはある。それでも家族としての風景が形作られていく。

その日が、両親の命日になるなど誰に想像できようか。

血にまみれた惨劇は、幸せな時間が流れる中で突発的に起こった。血を欲する父親は、娘を思い切りぶん殴った。吹っ飛んで、何が起こったか理解出来ずに呆然とする娘。その父親を責め立てる母親。

自分の置かれている状況を夢だと言い聴かせ、母親に覆い被さって首筋にかじりつき、そのまま一気に血を吸い尽くす父親。母親はそのまま出血多量で死に絶えた。それでもこれは夢だと、血の美味しさに酔いしれる。次のターゲットは、殴られたことで負傷し、血を垂れ流す娘だった。

そんな狂った父親――つまりは吸血鬼を殺したのは他でもない。目代キョウコである。

つまり彼女は父親殺しだ。

 

吸血鬼が血を吸って人を殺す様を見て、ナズナに血を吸って貰おうなどとは思えない。ましてや好きになることはできない。彼女にとって吸血鬼は、自分の家庭を破壊した元凶であり化け物。

その想いは燃えたぎり、吸血鬼を殺す探偵として生きていく道を選んだ。

キャラデザから察した方は多いかと思う。目代キョウコ=鶯アンコだ。

そのアンコの復讐劇は、この第九巻から。吸血鬼を殺すために推し進める計画は、目代キョウコの誕生日であるハロウィンに始動する。こちらもまた、突発的である。街を練り歩く人混みの中、紛れ込んだ吸血鬼。彼らを狙った銃声が鳴り響いた。

それでも吸血鬼が死ぬことはない。

それでも銃声は止まない。

やっぱり死なない。でも止まない。

探偵の目的は一体何か? 先が気になる幕引きであった。

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