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わたしたちの田村くん2 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

初恋は甘酸っぱい

情報

作者:竹宮ゆゆこ

イラスト:ヤス

ざっくりあらすじ

松澤小牧との遠距離恋愛は不安だけが募り、相馬広香との関係性は縮まるがどこか罪悪感を抱えている田村くん。何故か松澤には相馬との関係性が伝わっており、彼女が戻ってくるという話を聞いていても、生まれてくる感情は複雑で……。

感想などなど

ブログ主はこの作品を勘違いしていたのかもしれない。

どうしようもない二股関係に陥って、相関図だけみれば屑の田村くん。だが、彼を責める読者がいるだろうか? ……いや、結構いそうだな。彼の場合、相馬と松澤がともに心が広すぎたからこそ救われた感もある。

第一巻で松澤と相馬はともに涙を流している。その涙は悲しみの涙ではなく、未来に希望あるすっきりとした涙だった。彼女達が心に抱えた過去と決別し、ようやく大きな一歩を歩み出すためには、どうしたって流す必要のある涙だったのだ。

第二巻でも彼女達は涙を流す。

しかしそれは痛みから来る涙だった。痛みというのは、怪我をして身体的に受ける傷ばかりではなく、心に受けた傷によっても痛くて痛くて涙が出る。

第二巻はそういう涙を見ることになる。

そんなことを書いてしまうと、どうしようもないバッドエンドが脳裏をよぎる人がいることだろう。だが、これらの涙だって、彼・彼女達が未来に向けて大きな一歩を歩むために必要だったと、読み終えた今なら分かる。

彼女達は強かった。しかし同時に恋する乙女なのだ。

 

何を隠そう、本作は二股男視点で描かれる二股しちゃった話である。彼を擁護するとすれば、相馬を救える男はこの世界で彼ただ一人(これはあまりに傲慢か?)だった。彼女のためにあそこまで行動できる人間はそういない。惚れられようという下心があれば、彼女はきっと彼に惚れなかった。

松澤だってそうだ。毎朝かかさず一緒にランニングに付き合って、本気で助けようとした男が彼女の前に現れたとは到底思えない。タクシーに乗る彼女をめざとく見つけて、街中にて大声で告白できるだけの覚悟が、あなたにはあるだろうか。

……こうして書くと、彼って女たらしなのかもしれない。

とりあえず。

第一巻では松澤からの「相馬さんって、誰?」というはがきが届くラストを迎えた。遠く居るはずの彼女が、相馬という名前を知ることは不可能。そう超能力者にでもならないと。あぁ、もしや宇宙人って言い過ぎて、宇宙人になっちゃった可能性が無きにしも非ず。

それにより序盤は胃を痛める田村くん。学校に行けば距離感が異様にまで近い美人こと相馬がいる。あまり学校に来ていなかった相馬にノートを見せるため、二人きりの放課後の教室に残る。そうしてできあがった空間で、誰にも見せない嬉しそうな笑みを浮かべる相馬。

あぁ、辛い。全てを知っている読者まで心が痛くなる。彼女を冷たく突き放すことなんてできない。どこか様子がおかしい彼のことを本気で心配してくれる彼女の優しさが、さらに心を痛めていることを彼女が気付くはずもない。

やっぱりつれぇよ。読むのが。でも読んじゃう。田村くん特有の視点とノリで紡がれているため、軽くなっていることがその要因かもしれない。単純に先が気になるように展開が用意されていることも原因かもしれない。

 

そんな一触即発の状況を変える展開として、『同窓会』が開かれることになった。中学の仲間達が集まってワイワイガヤガヤと楽しい時間を過ごす……という風になるはずもない。驚くことに、遠くの地に引っ越したはずの松澤が帰ってくるというのだ。

喜べ田村。彼女が帰ってくるぞ! と皆言うが、彼の胃痛は更に増す。

そこではっきりしない辺りが駄目なのかもしれないが、どうか最後まで読んであげて欲しい。

この第二巻を読んで、松澤も小牧がもっと好きになった。恋する女性は美しくなるというが、それは本当なのかもしれない。涙で顔をぐしゃぐしゃにして、心がぐわんぐわんに揺さぶられ、もう滅茶苦茶になりながら終わりへと向かって行く。

どうか……どうか皆に幸あれ。

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