工大生のメモ帳

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アサシンズプライド10 暗殺教師と水鏡双姫 感想

【前:第九巻】【第一巻】【次:第十巻】
作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

無慈悲な任務

情報

作者:天城ケイ

イラスト:ニノモトニノ

ざっくりあらすじ 

聖フリーデスウィーデ女学院に新たな理事長が着任。様変わりした全寮制の学院生活でメリダとクーファは離ればなれになってしまう。そのことクーファはレイボルト財団の社長クローバーを調査していた。

感想などなど

第九巻にて暗殺者としての矜恃を失うことなく、メリダ嬢の家庭教師としても責務を全うし、フランドールを守り切ることができたクーファ達。セルジュという黒幕は、サラシャが倒すという結末を迎えました。それはあくまで表向きの情報ではありますが、影で生きる黒幕の活躍は表に出てきてはいけないのです。

上記のように、細かな伏線を回収しつつ、いったん綺麗な終幕を迎えたアサシンズプライド。しかしながら、神の御子と予言されたメリダや、《聖騎士》であるエリーゼ、一国を救ったサラシャの生活には平穏はやって来ないようで、また新しい戦い、もとい冒険が幕を開けていきます。

毎回、ストーリーを理解するための陣営や情報をまとめている本ブログですが、今回はそう簡単にまとめることはできそうにないことを最初に書いておきます。どうにも敵の正体や目的というものが、ずっとぼやかされているのです。

メリダ達の生活を脅かすという意味での敵であれば、ある意味クーファが所属する《白夜騎兵隊》も敵といえるでしょう。しかしその目的は、フランドール全体の平穏を守るということであり、平和こそが絶対であり法のような組織として描かれています。俯瞰的に、理論上に考えていくと、その行動に間違いはないようにブログ主は感じます。

新たな理事長であるベラーヘディアも、クーファとメリダを引き剥がし、マナを使わせないように懲罰で縛り上げていくという分かりやすい悪役な訳ですが、彼女が語る口先だけの理論を聞けば、「まぁ、そういう見方もできなくもないかもしれないね」という感じがするような気がしなくもないような感じです。

どれもこれも絶対的な悪という印象がありません。よく考えるとこれまでも絶対的な悪というものはあまり出てこず、実は良い人だった的な展開が多いですが。

 

クーファが調査を命じられたレイボルト財団の社長クローバーは、第七巻の鋼鉄博覧会にて登場し、『マナではない科学の力でランカンスロープに対抗する』ための武器を作っている財団の長でした。覚えている方はいらっしゃいますでしょうか。第七巻のラストでは、モルドリュー卿を連れていくシーンがあり、怪しさ満点の輩です。

見た目がキャッチーなピエロで、喋り方もピエロの見た目に沿ったふわふわとしたもの。メタ的な見方をしてしまう読者からしてみると不穏な空気を感じてしまいますが、その世界を生きる住民からしてみれば、怪しさとは程遠いちょっと変わった頭良い人という認識なのでしょう。

これまでの革命により、貴族に対する信頼が地に落ちたフランドール。なにせランカンスロープを受け入れ国を滅ぼそうとしていた(実際は違いますが)のは、貴族のトップに君臨したセルジュ=シグザールなのですから仕方ありません。

それにより高まる平民が力を持つことに対する欲求。積もり積もった不満が、怒りとして爆発し革命に発展するということは珍しいことではないでしょう。そこを上手く突く形で、レイボルト財団が手を差し伸べ、貴族に対抗する意識を生み出していきます。その時の話術がもう達者で。このままいくとテロまっしぐら。

それを良しとしないのは、フランドールの平穏を裏から支える《白夜騎兵団》。クーファの任務は、財団の目的や弱みを握ること。

調査の結果として、『エリーゼを殺さなければならない』ということになってしまった訳ですが、そんな予測できる人がいたでしょうか。

一人の犠牲により、フランドールを守ることができる――すごく立派なことだと思います。暗殺者の矜恃をその身に宿し、クーファは黒装束に身を包んで女学院へと向かうのでした。

そのような状況に陥っても尚、自分のいる環境というものを守ろうとし、肉体をボロボロにしていく姿をみて、「すっかり丸くなってしまって……」と拳を握りしめてしまったのはブログ主だけではないだろう、と信じている。

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