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アサシンズプライド8 暗殺教師と幻月革命 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

予言の少女

情報

作者:天城ケイ

イラスト:ニノモトニノ

ざっくりあらすじ 

王爵家セルジュはランカンスロープとの融和という革命を宣言。歳の公然と姿を現す夜界の住民・ワーウルフ族に、人々は恐れおののく。しかし希望は残されていた――メリダ=アンジェルが革命を止めると明記された予言が見つかったのだ。

感想などなど

第七巻にて自身が《侍》であるということを市民全員に知られてしまったメリダ=アンジェル。しかし黒幕であるウィリアム・ジンを倒したことで、貴族としての信頼を得ることが……おそらく、できたことでしょう。

そんな黒幕を演じたウィリアム・ジンも白夜騎兵団へと無事入団を果たし、物語は一段落ついたように見えます。

しかし、未だ解決すべき問題というものはたくさんあります。例えば、どうにも釈然としないミュールの立ち位置や、何かを企んでいるらしいセルジュ=シグザール……今回はそういった疑問に一歩踏み込んだ内容を取り扱っていくことになります。

あらすじでも示した通り、フランドールの王に君臨しているセルジュ=シグザールが、なんとランカンスロープとの融和を推し進めるという革命を起こしたのです。

これまでの貴族は、夜界からやって来るとされるランカンスロープからフランドールを守るために戦っていました。その必要性がなくなってしまう? そう考えると、かなり凄まじい革命だと分かって貰えるのではないだろうか。

街中には狼男が跋扈し……跋扈し、うん。跋扈してるだけで特段いつもと変わらない日常を過ごしているらしい。そう、ランカンスロープが歩いているというだけで、別に襲われる訳ではいし、経済的にダメージを受けるということもなく、犯罪率が急上昇したということもない。

ふむ……もしやランカンスロープとの融和が上手くいっているのだろうか。

これまで散々フランドールを苦しめてきたランカンスロープとの悩みの種が、こういった形で解決してしまうとは驚き。

そんな(一見すると)平穏な日常の中で、ビブリアゴートから予言の書が発見された。その予言の中身がとてつもなく問題なのである。

 

予言の中身では、なんと驚くことに『神の御子であるメリダ=アンジェル』が現れることで、融和が失敗することが描かれているのだ。融和を推し進めたい面々からしてみれば、メリダは殺さなければいけない敵となり、ランカンスロープをフランドールから押し出したい面々からしてみれば暁光という訳だ。

つまり、フランドール全体を巻き込んだ一連の騒動の中心にメリダ=アンジェルがいるということになる。

本作の本筋の流れとしては、『予言の子であるメリダ=アンジェルを殺そうとするランカンスロープ達から逃げる』というものになる。問題は、逃げるといってもフランドール中に散らばっているランカンスロープからいつまでも逃げ続けることは不可能であるということだ。

メリダが生き残るためには『ランカンスロープの目的』を突き止めつつ、『フランドールから救い出す』ということが必要になる。皮肉なことに予言を阻止するためにメリダを殺そうとするランカンスロープ達のおかげで、フランドールがかなり追い詰められているという事実を知ることになってしまう。

一見するとランカンスロープ達は平穏な日常を望み、フランドールの人々の日常に溶け込んでいるように見えた。しかし、その実態は間違っていたということが段々と分かっていくのである。

文字通り、化けの皮が剥がれていく訳だ。

フランドールにやって来たランカンスロープ達――正確には《狂人狼》という種族だが、は《無血主義》というものを掲げていた。その名の通り、一切の血を流すことなく人とランカンスロープの平和を実現しようというのだ。

なんと素晴らしく耳障りの良い言葉だろう。しかし、捻くれた捉え方をしてしまうブログ主は、そういった輩こそ警戒しなければいけないと考えてしまう。その言葉の裏側を認識しなければいけないと疑ってしまう。

本作を読み進めていくと、どうやらその捉え方は決して間違っていないということが分かってしまう。どうか存分に捻くれた思考で本作は読み進めて欲しい。いや、正確にはランカンスロープは人の命を屁とも思っていないんだろ? という先入観を持って読み進めて欲しい。

 

本作ではメリダとクーファの逃避行するシーンが多い。命の危険に晒されているにも関わらず、自身の手を引き守るために戦っているクーファの姿にドギマギするメリダ=アンジェルと、何とかして女性として意識して貰いたいメリダ様の熱い視線にドギマギするクーファ=ヴァンピール……かなりニヤニヤできるシーンが数多く用意されている。

これも吊り橋効果と呼んで良いのだろうか。

これまでの敵とは違い、かなり高度な情報戦だったり、セルジュという王爵が敵側であるために敵の親玉の警備がかなり厳重だったりと、今回はいつも以上に苦労させられている。

また、フランドール中を駆け巡ることになるため、これまで描かれてきた舞台が再び描かれていたりと懐かしい風景が描写されていることが多々ある。これまでの集大成のような物語……次々と回収される伏線に胸をドギマギさせながら読み進めることができる。楽しい作品だった。

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