まず最初に
乙女ゲームの主人公であるマリアと無難な出会いをはたし、互いに互いをおとしあうという展開を見せてくれた第四話。第五話ではいよいよ本格的にマリアを攻略しにかかります。まぁ、完全に無意識ではあるのですが。その辺りの過程において、アニメオリジナルの演出が差し込まれるなど、制作陣の原作に対する理解度の高さが伺える第五話の感想・解説に進んでいきましょう。
用語・人物解説
カタリナ・クラエス
- 相手が誰であろうと(誘拐犯だろうが、危険な相手だろうが)警戒心なく接する貴族令嬢。
- 一応、令嬢としての振る舞いなどは母親やメイド達の協力により教育されている。そのためお茶会での最低限のマナーは守れるようにまで成長したが、お菓子をバクバクと食べる食欲まで制限する気はないようだ。
- キースは男として意識していない節があり、幼い頃には寝起きに抱きついたり、風呂に一緒に入ろうとしたりしていた。その度に「義弟とはそのようなことはしない」と怒られ、どうにも納得していないような気がする。
トム・ウィズリー
- 貧しい田舎の村に生まれ、若くして奉公に出されてから、各地を転々としながら生きてきた。喋ることが下手で、顔が厳ついという理由から、基本一人で仕事をしてきたらしい。
- 手先の器用さと植物との相性の良さから庭師となり、先代のクラエス侯爵家の当主にその才を認められて雇われて以来、二人は『友』として一緒に街へ行くなどしていたようだ。
- しかし、先代の当主が亡くなって以来、彼の世話した庭を褒めてくれるような者などいなくなり寂しい日々を過ごしていた。そんな彼を退屈から救ったのが、「畑を作りたい」「精巧な蛇のおもちゃを作りたい」などの仕事(?)を持ち寄ってくるカタリナであった(第五巻のエピソードの要約)。
メイド頭
- それなりの商家の三姉妹の三女として生まれる。長女・次女が次々と嫁いでいく中で人付き合いが苦手だったために嫁ぎ先が見つからずに、カタリナ侯爵家のメイドとして働くこととなった。
- そんな彼女は黙々と仕事に取り組み、若くしてメイド頭に抜擢される。若いからという理由で舐められないように、さらに仕事に打ち込むようになり人との付き合いはさらに疎遠になっていく。
- そんな彼女を救ったのは、お菓子が大好きでせがんでお菓子を作って貰えるように頼むカタリナ・クラエスであった。今はメイド頭も結婚し家庭を持ってい(第五巻のエピソードの要約)。
注目すべきポイント
夏休み
学園も夏休みに突入し、キースと共に寮から実家へと戻って来た。そこではトムさんに作って貰った精巧な蛇のおもちゃを投げる練習をしたり、カタリナの夏休みに合わせて戻って来ていたメイド頭さんの作ってくれたお菓子に舌鼓をうちながら優雅に過ごしている。ちなみにトムさんは今後もこの蛇のおもちゃを量産し続け、屋敷の至る所におもちゃが置かれるようになっていく。
トムさんとメイド頭に関するエピソードは用語・人物解説にて示した通り。共に第五巻の短編集に掲載されている数ページほどの短いエピソードであり、カタリナが無駄に優しさを振りまいているということを教えてくれる。現世でのあっちゃんもそうだが、コミュ障は基本的に彼女に救われているようだ。
また、伏線というほどではないが、夏休みの宿題があるということについて、キースはしっかりとカタリナに言及している。まず間違いなく、カタリナの耳には届いていないし、現世でも夏休みの宿題で苦しんでいたという経験が生かされることはない。
キースと過ごす夏休み
夏休みのエピソードというよりは、キースが過去にカタリナに救って貰ったという回想が描かれる。これはトムさん達のエピソード同様に第五巻で描かれているエピソードの情報を元に書かれたアニメオリジナルである。
原作では幼い頃のカタリナ視点(最後はキース視点も入ってくるが)で「弟と仲良くしたい!」という彼女の突飛な行動により、振り回される周囲の様子というものが描かれる。
例えば。
寝起きでカタリナに抱きつかれるキース、風呂に入ろうとしたらカタリナに一緒に入ろうと誘われる、夜は一緒のベットで眠る……というように。最後の夜は一緒に眠るというカタリナの行動により、キースは悪夢から解放された。人肌が恋しかったのかもしれない。
ジオルドと(?)過ごす夏休み
愛しのカタリナを湖に涼みに行こう、と誘うジオルド王子。ニッコニコで幸せそうで何よりだが、この笑みもすぐに歪むこととなる。カタリナの有能な防波弟であるキースの登場であった。
キースは次期当主として、現当主から色々と仕事を見て回っていることが多く、社交界の集まりもその一つだと考えられる。アラン王子も参加している辺り、それなりの集まりと言えるだろう。「ジオルド王子は何故参加していないのか?」と問われれば、考えるまでもなくカタリナと二人きりの時間を作り出すためである。
ジオルド王子は(この段階では)カタリナの速度に合わせ、ゆっくりと友好を深めつつ、既成事実も作っていこうと考えている。キスもまだだが。ある意味、夜に一緒のベットで寝たこともあるキースの方が進んでいると言えるかもしれない。
カタリナといえば勝手に脳内で思考を進め、目の前でバチバチと戦っている弟と婚約者の様子を、「楽しそう」と表現するように勘違いが加速していく。ジオルド王子の気など通知らず、メアリ達まで巻き込んでの涼みへと発展していく。
みんなで過ごす夏休み
いつのまにか増えていたアランにメアリ、ソフィアにニコルにマリア達。キースにジオルド王子は集まりに参加していないと教えたアランよ、集まりはもういいのだろうか。笑みを浮かべるメアリの裏の顔は、あまり想像したくない。そしてソフィアは可愛い。ニコルは……うん、多分笑ってる。それにしてもマリアはどうやって来たんだい?
カタリナの一言で王子や宰相の息子や、貴族界で一目置かれている令嬢や、光の魔力を扱える学生まで集めるというのは凄すぎる。流石は「彼女に嫌われたら生きていけない」とまで噂されるカタリナ・クラエスである。
それは噂ではなく、カタリナの悪い噂を流して潰そうとした貴族を田舎送りにしたジオルドや、情報を探ってジオルドに協力したメアリなどの行動により事実となってしまっているが、そんなことカタリナが知るはずもない。
ソフィアとニコルで過ごす夏休み
ニコルとソフィアと共に、『魔性の伯爵シリーズ』の最新刊を買いにやって来た。猿卓会議メンバー達が出会ったニコルのような男が、魔性の伯爵その人である。過去にソフィアが兄(=ニコル)に似ていると言っていた登場人物がそれである。
しかし本を買うだけではつまらない。互いに似合うといって買って交換したヘアピンや服など、街での買い物を楽しんでいる様子が描かれる。それにていもソフィアが可愛い。ニコルも街中で色気を振りまきつつ、何だかんだで楽しんでいるようだ。
そして最後は、ニコルにカタリナを略奪して欲しい、と願うソフィアの策略により二人きりにされてしまう。ニコルは表情にはあまり出てこないが、カタリナにベタ惚れで、どの女性と出会ってもカタリナと比較してしまい真面に見ることができないほどなので、饒舌に喋って感謝を伝える。
ちなみにカタリナ以外の女性は同じような状況におかれた場合、逃げ出してしまうことが多いらしい。というかニコルと目を合わせて話すことができる数少ない女性がカタリナなのであった。ニコル関連のエピソードは原作でも外れがないので、是非とも読んであげて欲しい。おそらくアニメで受ける印象とは少しばかり異なっていくはずだ。
アランとメアリと過ごす夏休み
アラン王子の演奏会も開催される社交界にお呼ばれしたカタリナ達。残念ながらマリアは貴族ではないので参加できない。ドレスも持っておらずマナーも学んでいないため仕方がない。
会場にはアラン王子のファンである令嬢が多いようだ。素晴らしい外観と、素晴らしい音楽の才能を持ったアランは、やはりモテモテであるらしい。アニメではそんな彼の演奏を、キラキラとして表情で見つめるカタリナのシーンが挿入されている。個人的にはアニメで一番評価したいシーンである。「この顔を見るためにもアランは演奏してるんだな」と思うと、アランの恋路を応援したくなる。
一方メアリはというと、アランが自らが抱く恋心に気付きそうになることを必死で妨害しようとしていた。メアリからアランに対する恋心がそうさせている……という訳ではなく、単純にライバルを増やしたくないからという理由である。彼女の腹黒さはここまで来ると清々しい。今後とも頑張って欲しい。
シリウスと過ごす夏休み
シリウスも侯爵家の子息として参加している。やはりモテモテであられるようで、アプローチというものは相当にあるのだろうことは、女性に囲われているシーンからも想像できる。
そして今回も彼に関する不穏なシーンが挟まれる。
「誰か気になる方がいらっしゃるとか?」という貴族達の世間話としては、まぁ、普通の内容である。というか婚約が決められないと語っている時点で、そのような推測をするというのは、至って普通のことだろう。
そこで咄嗟の二の句が継げないシリウス。そんな彼の行動の意味が分かるのは、もう少し後になりそうだ。
その後、シリウスの背景にいる女性達の周りに黒い靄のようなものがかかっていくようなシーンが挟まる。この意味というのもまたいずれ。
宿題と過ごす夏休み
宿題は夏休みの友であり、もはや夏休みといえば宿題といっても過言ではない。何も書かれていない白紙のノートは、夏の様式美を感じさせてくれる。最終日なので、これから徹夜が始まることが確定した。
まぁ、カタリナが好きでもないことで徹夜などできるはずもなく、あっちゃんの夢を見ながらの寝落ちで幕を閉じていく。彼女が学校でどのような目に遭うのかは、想像で補っておこう。
最後に
次話からはオリジナル展開になっているという話を聞き、この記事の構成をどうしようか真剣に思い悩んでいます。まぁ、原作の知識をフル動員した記事を書くと思いますので、その時はよろしくお願いします。
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