まず最初に
「歪曲王」さんの正体と目的も分かって……きてないですね。しかし、色々な設定が明かされ物語は確実に進んでいます。何が起きているのか、を登場人物ごとに整理しつつ解説記事を書いていきます。かなり核心は突かれていることを、とりあえず覚えておきましょう。
今回のメインは「ゾーラギ」でしょう。ブギーポップさんの戦闘シーン、音楽による演出……盛り上がりましたね。個人的には飛んできた瓦礫を片手で止めたシーンが好きです。
用語・人物解説
新刻 敬
- 予備校への願書を提出しに行く過程で巻き込まれる風紀委員長。
- 志願書を出した後、ハンバーガーでも食べようと思っていたので、お腹が空いているらしい。
- 可愛い。
宮下 藤花(=ブギーポップ)
- ムーン・テンプル事件に自ら進んで巻き込まれていく ”世界の敵の敵”
- 今回の事件における ”世界の敵” は、ブギーポップにも分かっていないようだ。
- ブギーポップさんが怪我をする珍しいシーンを見ることができる(詳しくは後述)。
道元 咲子
- 暴言を吐いた次の日に、事故で死んだ日奈子という友人のことが心残りだった。
- そんな過去から「自分は醜い」という自己嫌悪が、彼女を支配していた。
- 「これ以上醜くなる前に、一番美しい状況で殺してくれる」という噂を聞き、ブギーポップに殺して貰いたがっていた。
橋坂 真
- 橋坂静香の息子。父親は分からない。
- 幼稚園児の頃から、『父親はいない』ということを知って理解していた。しかし、寂しいと思ったことはないらしい。
- 彼は父親の姿として『ゾーラギ』(後述)を描いた。
竹田 啓司
- 宮下藤花とのデートをすっぽかされたが、あまり気にしていないようだ。
- 奇妙な現象の数々から、ムーン・テンプル内で何かが起きていることを察して、ブギーポップに会えるかもしれないと考える。
- ムーンテンプルに走って行く彼に何ができるのか? 楽しみにしておこう。
ゾーラギ
- 真の父親……何てはずもなく、日頃から何となく ”近くにいると感じていた” 存在。
- 原作内でも正確な名前の由来は説明されていないが、「怖いもの全ての象徴」だと真は説明している。
- ゾーラギ(ZORAGI)はゴジラ(GOZIRA)のアナグラムである。
注目すべきポイント
新刻敬の話
ここでは新刻敬の行動を一度にまとめておく。まずは前半部分『新刻敬とブギーポップの会話』からまとめておこう。ここでは『ブギーポップの存在』と『竹田啓司との関係性』の二つの観点から考える。
- ブギーポップの存在
ブギーポップとは、かなり謎の多い存在である。精神科医によれば『二重人格』、ブギーポップ自身に言わせれば『自動的存在』、”世界の敵” から言わせてみれば『世界の敵の敵』……新刻敬は『二重人格』であると疑っているようだ。
ここで大切なのは、博士こと末真和子の話である。博士は『二重人格』をはっきりと否定した。
「証明することはできない」と。
なるほど。『二重人格』という演技をしている場合、その嘘を嘘だと証明する方法が存在しないのだ。また同時に真実だと証明することもできない。ブギーポップが宮下藤花とは別の人格であると証明することも同様だ。こう考えると『二重人格』はひどく不安定な存在であるように思えてくる。
- 竹田啓司との関係性
新刻敬と竹田啓司との関係性を一言で言うならば、『先輩と後輩』である。
ブギーポップと竹田啓司の関係性は『友人』と言っていいだろう。
一方、宮下藤花と竹田啓司の関係性は『恋人関係』である。
ここで面白いのが、新刻敬は竹田啓司に対して好意を抱いているということ。ブギーポップが竹田啓司に対して抱いている感情は何とも名状しがたいが、ここでは好意としておこう。
次に後半部分『早乙女正美(歪曲王)と新刻敬の会話』について。彼と彼女の一連の会話から分かることを、ここではまとめておこう。この部分は後々の説明でも利用するので、良く読んで貰えたら幸いだ。
- 一つ目『歪曲王が引きずり込まれた側』
これまでは、『歪曲王が作り上げた空間に人々が巻き込まれた』とされていた(それっぽく演出されていた)。しかし、実際は逆で、『人々が作り上げた空間に歪曲王が巻き込まれた』のではないか? と新刻敬は指摘している。
- 二つ目『歪曲王は自らの姿を表に出すことができない』
一つ目の指摘が正しいとすれば、「歪曲王は何故、色々な姿をしているのか?」という疑問が生じる。新刻敬はこれを、『歪曲王は人が心に閉じ込めている一つの姿を借りないと姿を現せない』から、と説明しているのだ。
もう少しかみ砕いて説明しよう。原作の表現とは少し異なっているが、一つの解釈だと思って読んで欲しい。
まず、 ”人が心に閉じ込めている一つの姿” とは『願望』や『心残り』と言い換えられる。道元咲子の場合は「日奈子に謝りたかった」、橋坂静香は「寺月恭一郎と家族になりたかった」……とそれぞれ『願望』なり『心残り』がある相手が登場していることが、分かって貰えるだろう。つまり、そういった存在に取り付き歪曲王は現れる。
では、どうすれば消えるのか。その方法は実に簡単、『心残り』が消えれば良い。
だからこそ早乙女正美(歪曲王)は、
「あなたは僕を生んだ、その『願望』を見つけなければならない」
と新刻敬に対して告げたのだ。これはある意味、彼女と彼女自身との決着をつける戦いと言えよう。
道元咲子の話
道元咲子にとっての『願望』は何かを考える必要がある。これまでの話から、道元咲子にとっての『願望』は『日奈子に謝りたかったこと』と推測できる。
問題はこの『心残り』をどのように解決するか? だろう。日奈子に謝ろうにも、彼女は死んでいる。実際に羽原健太郎(歪曲王)は、
「問題は、君が日奈子君に許しを請うた所で誰も答えられない、ということだ」
と咲子に対して告げている。だからこそ、ブギーポップに殺して欲しいと思うほど拗れたのだ。今後、彼女がこの『願望』をどう消していくのか、に注目して見ていこう。
竹田啓司の話
竹田啓司は唯一、部外者として事件の流れを見ている。どうやらムーン・テンプル内の騒動は世界にも影響を与えているようだ。また、ブギーポップが中にいることを察し、中に入ろうと動き出していることも分かる。
彼については、もっと先の方で語りたいので、ここではこの辺にしておこう。
田中志郎と羽原健太郎の話
この二人については現状、特に説明すべきことはない。ハッチを見つけたり、外に出るための穴を探しているということを理解して貰えれば問題はない。また田中志郎にとっての『願望』は何なのか、を考えてみると楽しいかも知れない。
橋坂真の話
ゾーラギとは彼の『願望』が生み出した存在である。もっと正確に言うならば『彼が生み出した父親』がゾーラギだ。
……ここで思い出しておきたいのは、『彼の父親は誰なのか分からない』ということだ。母親としては寺月恭一郎であって欲しいと願い、しかし断られ(金は貰った)、彼にそのことを後悔させるために子育てをしていた。つまり父親の情報を得ることなど不可能、では何を元に父親という存在を、真君は描いたのだろうか?
真実はもう少し後で明かされる。ここでは『ブギーポップとゾーラギの戦い』から分かることをまとめておこう。
- ゾーラギは真君を殺そうとしている。
これは第十五話からも何となく分かって貰えるだろう。ゾーラギは真君を殺すべく追いかけている。
- ゾーラギは外に出るために、誠君を殺そうとしていた。
アニメではあまりにも説明が足りない(原作ではゾーラギ視点の物語が存在するため分かりやすい)ので、ここでは結論から書こうと思う。詳しくは原作を読むことをおすすめしたい。
まず第一に、ゾーラギは誠君の『願望』(父親が不在という漠然とした恐怖)から生み出された怪獣。
次に、そのゾーラギは外に出るために誠君を殺そうとした(ここがアニメでは分からない)。
最後に、ブギーポップは誠君の恐怖を取り去り、『願望』を解消した。そのため、ゾーラギも去って行く。
最後に
歪曲王の核心とも言える設定に触れられた今回。しかし、まだまだ謎は多い。
歪曲王は誰なのか?
歪曲王の目的とは何なのか?
ムーン・テンプルは何故作られたのか?
また、自分の『願望』を理解し、解消すべく動く登場人物達の活躍にも期待していこう。自分としてはゾーラギと戦うブギーポップが見ることができたので、大満足である。
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