まず最初に
「小説家になろう」よりアニメ化されました本作。オー〇ロードと比較されがちですが、どのような違いがあるのでしょうか。実際よくよく見れば設定は大きく異なっています。解説の方でも書きますが、ここでも書いておきましょう。
まず、大前提として本作の舞台はゲーム世界ではありません。魔法を使ってはいますが、あくまで王道のファンタジー世界でありステータスやレベルといった概念も存在しません。そんな世界にゲーム世界の魔王がやって来て、ゲーム世界の概念を持ち込むことで無双していくのが本作となります。
詳しくは記事の続きにて。
用語・人物解説
大野 晶
- 元々『極東都市』と呼ばれるゲームの管理人だったが、突如として閉鎖。1000人以上が遊んでいる当時としてはかなり大きな(しかも個人管理)ゲームだったため反響も大きかった。閉鎖した理由としては『不完全だから』。
- その一年後『Infinity Game』を発表。ゲーム内容に関しては後述するが、総アクセス数414万3792人を叩き出した。
- 両親の残した田舎の土地を売却してまで、このゲームを完成させ、無料で公開・運営を行っている。第一巻にて「長い趣味になったな」と呟いているため、単純に趣味でやっていると思われる。
九内 伯斗
- 『INFINITY GAME』において、世界の大半を支配している大帝国の頂点に君臨する魔王。ゲームについては後述。
- 武器は『ソドムの火』であり回数無限の投・斬共に使える万能なナイフ。追加効果として火傷を与える。防具は『アサルトバリア』、LV30に達していないプレイヤーからの攻撃を無効化する耐久力無限のバリア。ゲーム世界には魔法が存在していなかったため、この世界の魔法は通してしまう。所持品は『マイルドヘブン』、吸えば気力が回復する仕様となっている。
- 現在は管理人である大野晶の人格が入っているが、体の奥底には元の魔王の人格も残っている。
アク
- 浜風でもラムでもレムでもないし、胸もない。本作におけるヒロインの一人。
- 碧色である左目を隠すように髪を伸ばしている。碧色の目による虐めの対象となることを防ごうとしたためだ。決してただのお洒落ではない(彼女にお洒落をする余裕はないです)。両親は若くして病死しているため、そんな努力もむなしく虐められることとなる。
- 右足は大きな裂傷を負い、大した治療もされぬまま塞がってしまった。そのため歩く際に不自由となっている。
グレオール
- 悪魔王という仰々しい二つ名を持っている最上位悪魔だが、九内の手によって滅ぼされた。正確に言うと、九内は手を下そうとすらしていない(後述)。
- 何年か前に復活した悪魔王は、周辺の村に生け贄を要求した。あまりに僻地だったため、国も対応を取ろうとはしなかった。
- ステータス画面のような物がアイキャッチで表示されたが、『INFINITY GAME』のキャラクターではないため、あくまでゲームに登場させるとしたらどうするか? という設定だろう。
願いの祠
- 過去に悪魔王を封印したとされる智天使様が祭られた祠。やって来た人の願いを叶えるとされている。
- 悪魔王は自力で封印を解き、この森を縄張りとして周辺の村に生け贄を要求した。祠で殺されていた面々は魔王の降臨を願い、敵になりうる魔王がやって来ると面白くない悪魔王が彼らを皆殺しにした。
- 悪魔王の殺戮むなしく、魔王である九内伯斗がやって来る。「魔王の降臨」という願いを反故にする「九内を元の世界に戻す」という願いは叶えられないということで、代わりに指輪を託された。
神像
- 元は悪魔王を封印した智天使であり、白く美しい姿をしていた。
- 多くの人の邪悪な願いを叶えすぎて、その身は穢れてしまった。最後の来訪者である九内の願いを叶えることはできないが、代わりに指輪を託し消えていった。
- 元々、祠がある森は神聖な場所として扱われ人は入らないようにしていたらしい。しかし、願いが叶う祠があれば無理矢理入って願いを叶えようとする人間がいても何もおかしくないだろう。
INFINITY GAME
- 九内伯斗が治める大帝国が世界の大半を支配した世界が舞台。征服した国の支配を盤石にするため、反逆の目を摘むために、属国となった国からランダムにプレイヤーを集め、最後の一人になるまで殺し合いをさせるという設定。プレイヤーは実際に殺し合いの参加者としてゲームを行う。
- 殺し合いの期間は現実時間の七日間。その間は二十四時間、リアルタイムに殺し合いが行われる。なのでトイレ休憩に立っている間、学校や仕事に行っている間に殺されるということもしばしば。七日間が終わった後は、全てリセットされ新たなゲームが始まっていく。
- 初期装備、ステータス、スポーン位置は完全にランダム。敵を殺すことでSPや経験値、お金などを獲得し、スキルやアイテムを入手することで強くなっていく。これらは七日間が終われば全てリセットされる。
注目すべきポイント
『INFINITY GAME』サービス終了
利用していたサーバの契約が切れるために、多くの人を熱狂させた殺し合いゲームは幕を閉じることとなる。ゲームが動き出したのは2001年、ゲームが終了したのは2016年であるため、15年という長い期間たった一人の手で運営された。その苦労たるや相当のものだろう。
そんな手塩にかけたゲーム最後の時間は、たった一人でゲームフィールド内を周り、感傷に浸っていたようだ。最後の瞬間である00:00までゲームに浸っていたのだが、異世界に転移させられることとなる。
この世界はゲーム世界ではない?
まず理解しないといけない点は『ゲーム世界ではない』ことである。
大野晶が作っていない魔物やアクというゲーム制作者が知らないものが現れ、魔物がゲームには存在しないはずの魔法を操っていることが、それを物語っている。
また、管理者権限を発動させることでも確認を行おうとした。結果、『規定条件を満たしていません』ということで管理者権限は使えないようだ。この管理者権限を解放していくことが当面の目的となる。
しかしゲーム世界ではないにしても、その世界の言語は理解できるようだ。九内伯斗が言っているように理屈は分からない。
最初の戦闘
アクや敵である悪魔王に関しては、用語・人物解説を参照して欲しい。ここでは『戦闘において九内伯斗が行ったこと』と『SPの獲得について』をまとめていく。
- 戦闘において九内伯斗が行ったこと
この戦闘において大野晶は何もしていないと言える。もう少し詳しく言うと、九内伯斗という人格が行った自動反撃が悪魔王を倒したのだ。
原作小説では
『普段の声とは違う、低い声が喉から漏れ』(本文より抜粋)、
『――自動反撃発動!』(本文より抜粋)、
『自分の意思とは裏腹に、手足が勝手に動き出す』(本文より抜粋)
といったように戦闘シーンが描写されている。明らかに大野晶が意識して攻撃したというものではない。アニメでは謎のオーラが発せられ、声も少し低くすることで表現している。
また、戦闘では九内伯斗の武器である『ソドムの火』が使われている。詳しくは用語・人物解説を参照。
- SPの獲得について
この戦闘により一部の規定条件を達成することで管理者権限の一部が解放され、同時にSPを獲得することができた。
SPとは『INFINITY GAME』において戦闘に勝利した際に入手できるスキルポイントである。これを元に、他の管理者権限を解放したり、新たなスキルやアイテムを生成したりすることが可能となった。
最初に九内伯斗が作成したアイテムはバスローブと石けん。この世界では貴族しか扱うことのできない贅沢品である。それ以前に、この世界における平民の風呂は、時々振る雨による水浴びらしいので、石けんがどれほど贅沢なものか分かって貰えるだろう。
祠
悪魔王が封印されていたという祠にやって来た九内。用語・人物解説でも書いたが、ここでは改めて順序立てて現状を説明しよう。
- 大昔、智天使によって悪魔王を封印
その封印された場所が願いの祠と呼ばれ、九内が足を踏み入れた場所である。
- 悪魔王が自力で封印を解く
封印を解かれた魔王は、周辺の村に生け贄を差し出させた。それに対し、国は辺境の地に手を差し伸べることなく放置。
- 魔王を降臨させようとした集団が、悪魔王に殺される
この魔王を降臨させようとした集団に関しては、現時点で何とも言えない。とにかく、魔王を降臨されては困る悪魔王は、魔王の降臨を阻止するために彼らを惨殺。
- 魔王(=九内伯斗)が降臨する
悪魔王の惨殺は間に合わず、魔王である九内伯斗が降臨。九内を生け贄の人間であると勘違いした油断もあるだろうが(開口一番「矮小なる人間」と九内を呼んでいる)、呆気なく悪魔王は殺されることとなる。
- 願いの祠に魔王がやって来る
願いの祠にやって来た者の願いを叶える神像(=智天使と思われる)。九内の願いは『元の世界に戻ること』だが、それは『魔王を降臨させる』という願いを反古にするために叶えられない。そのため代わりに指輪を託した。
村にて
この世界のことを理解するために、ひとまず神都へ向かうことにした九内。アクの同行も許可し、彼女の荷物を取りに村に向かう。この一連のシーンで理解すべきは『九内が使っているのは魔法ではない』という点だ。
どれもSPを使い既定条件を達成させ、解放された管理者権限なのである。今後もこれらを使い無双していくこととなるのだ。そういった説明をするという意味で、このシーンは重要となっている。
隠密姿勢は管理人がプレイヤーの邪魔をせずに見守るため、通信はその名の通りプレイヤー間の通信を行うためのもの……そう考えると分かりやすいのではないだろうか。
最後に家を燃やして逃げ去る九内とアク。この家を燃やしたことが、色々と厄介な事象を引き起こすことなど二人は知るよしもない。
最後に
この作品において一番注目すべきは、勘違いである。第一話では、設定や目的の説明となっているが、今後はただの社会人が賢明に魔王として振る舞おうとする様と、それによる周囲の人々の勘違いが生み出す展開が見所となってくる。
アニメがどこまでするか分からないので、立てるだけ立てて回収せずに終わるフラグが何個も出てくることだろう。何とも煮え切らず消化不良で終わりやしないかと不安で仕方がない。とりあえず、今後の脚本には注目である。
この記事では覚えておけば楽しめるフラグをさりげなく教えたり、細かな設定の説明に注力したい。では、また来週お会いしよう。
アニメを見るなら
「魔王様、リトライ!」一巻の感想はこちら