工大生のメモ帳

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アンダカの怪造学Ⅵ 飛べない蝶々の鳥かご迷路 感想

【前:第五巻】【第一巻】【次:第七巻】
作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

現界と虚界

情報

作者:日日日

イラスト:エナミカツミ

ざっくりあらすじ

卒業式の次は、新入生が入ってくる入学式がやって来る。ひょんなことで井伊と面識を持つこととなった新入生・志田桐涼女は、入学式早々、新入生代表として新入生歓迎イベントである魔王杯の開催を宣言する。

感想などなど

第五巻は情報量の暴力みたいに、数々の新情報が次々と出てくることで混乱と楽しいが混在する話だったように感じます。第六巻ではそれらの情報が繋がっていくようなエピソードであったように感じます。

これまではただ広がりを見せていた設定が、徐々に収束していく感じというのは、一つのシリーズが完結に向かって行く感じがして好きです。つまり、この第六巻も好き。

そんな第六巻で初登場の新キャラ・志田桐涼女は、可愛らしい外見と、どこかアホっぽい言動の裏に隠れた獰猛なヤバさを兼ね備えており、恐いながらも彼女の過去や行動理念というものが気になってしょうがないようになっています。

しかも、どうやらこの涼女は魅神香美とも知り合いであるようです。それがただの名前だけ知っている……とかその程度の仲であれば、良くある話だったのですが、どうにも二人の間にはただならぬ何かがあるようです。

分かりやすい一例として、涼女は香美のことを神様と呼んでいます。それに対して、まるで死人でも見たかのような視線を向ける香美。そして涼女と香美には、香美が絶対服従するという従属関係があることが段々と分かっていきます。

実際、香美は井伊に、彼女はもう死んだはず――と。ただ全てを語らず、意味深な言葉を残すだけなのでした。

 

涼女は入学式にて、新入生代表として挨拶をします。つまりはとても優秀な成績で入学を果たしたということなのでしょう。その際、彼女は新入生の歓迎会を兼ねて、魔王杯なる行事の開催を宣言します。

その魔王杯での優勝者には、この学校での生徒会長としての権力を与える……ということに。ちなみに現在の生徒会長は、校長に適当に任命された香美ですが、面倒くさいという理由で何もしていません。彼女としても別にどうでもいいということなのでしょうか。

香美が涼女のことを死んだはずと言っていたり、香美のことを涼女は神様と呼んでいたり、何かおかしい空気を感じ取った井伊。魔王杯という名前も気に食いません。香美が生徒会長なのに、魔王杯優勝者に与えられる商品にも納得がいきません。

もう納得いかないこと尽くしの井伊。涼女に詰め寄り、魔王杯のことしかり、特に香美との従属関係について辞めるよう告げるのでした。友達と言うのであれば(香美も涼女も従属関係であるとは一言も言いませんでした)、もっと正しい付き合い方というものがある……と。

それに対する涼女の答えは暴力でした。取り出されたカッターは、井伊の舌をざっくりと切り、口から滴る血がその痛みを物語るのです。

 

友達関係というのは難しいもので、信頼関係を築くまではとても大変なのに、壊れるのは一瞬だったりします。香美と涼女も、昔は本当にただの友達同士のようだったことが、過去の回想から読み取れます。

だとしたら、何が原因で壊れてしまったのでしょう?

その答えは魔王杯を勝ち上がっていけば分かります。

……あぁ、魔王杯について説明してなかったですね。魔王杯というのは、その名の通り魔王の杯です。

……という冗談はさておき。虚界から呼び出した怪造生物を使っての障害物競走で、最初にゴールにたどり着いた者が優勝というシンプルで分かりやすい競技です。ちなみに舞ちゃんは呼び出せないので参加できませんね。

時折、涼女視点と思われるエピソードも挟まっていくことで、徐々に涼女の目的というのも明かされていく構成となっている本作。全容が明らかになる前、「魔王杯が始まった時点で目的は達成されている」というように涼女は語ります。

その言葉の真意が明らかになり、物語が佳境に向かうにつれ、シリーズを通して明らかにされていなかった謎が次々と繋がっていきます。例えば魔王について、《肉体道楽》について、怪造学会総長・激流院潮静について……などなど。ここで繋がるのか! という衝撃と共に幕を閉じていく第六巻。

盛り上がって参りました。

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