※ネタバレをしないように書いています。
絶望してる暇があったら
情報
脚本: 野木亜紀子
主演:石原さとみ、井浦新、窪田正孝
全10話
ざっくりあらすじ
日本の不自然死の8割が解剖されないまま、謎が究明されようとしない現状を改善するために設立されたUDIラボ。今日も不自然死の解明のために活動する。
感想などなど
不自然死という言葉をドラマ『アンナチュラル』で初めて知った。
人が死ぬ時、そこには必ず原因が存在する。その原因が分からない自然ではない死を不自然死といい、その8割が原因を究明しないまま放置されている。この現状を改善するために発足した組織が、本ドラマの舞台となる架空の組織・UDIラボ(Unnatural Death Investigation Laboratory:不自然死究明研究所)だ。
……さて、この背景を聞いただけでドラマのストーリーを想像できただろうか。個人的にこの背景だけ知った時点での本ドラマへの印象は、「あまり面白くなさそう」だった。
おそらく不自然死を究明する意義を理解できなかったからだろう。不自然死の死因を解明することを、ドラマというエンタメのストーリーに昇華することを想像できなかったのだ。
死んでしまった後で死因を知ったことで何になるのか?
このドラマを見る最初のモチベーションは、そんな疑問に対する答えを求めてのものだった。そんな捻くれた視聴者である自分の疑問に対し、第一話から明確なアンサーを出してくれた。この時点で、ドラマ制作陣の術中に嵌まったのだといえる。すっかりドラマ『アンナチュラル』のファンになってしまった。
全十話、その全てに一切の無駄がない傑作ドラマの感想を語っていきたい。
基本的には一話完結型だが、それぞれの事件の裏で「過去の未解決連続殺人事件が再度発生」していたり、「とある雑誌に依頼されてUDIラボの内部事情を探るために潜り込んだ人の葛藤」があったりといったストーリーが進行していく。
それぞれ一話ごとに描かれるエピソードについても、ブラック企業が労働者から不当に搾取した事による悲劇、虐めによって狂わされた人生の悲劇……といったように社会的な闇に切り込んだエピソードも多い。そもそもUDIラボが不自然死という問題を取り扱っているもそもUDIラボが不自然死という問題を取り扱っていて、第一話なんかは、社会全体を揺るがす最低で最悪な隠蔽工作を暴き出している。
不自然死を究明する意義が分からないという疑問は、痛烈なエピソードによって解消されていく。死んだからにはそこに理由が絶対ある。それを暴き出すことで出てくる新たな物語は、人を救うかもしれない。
どれも痛烈なメッセージ性が込められたエピソードになっているが、個人的に印象に残っているのは、第四話「誰がために働く」である。
UDIラボに、バイク事故によって若くして亡くなった佐野という男性の遺体の解剖依頼が入った。彼はバイクの任意保険が切れていて生命保険にも未加入だったため、残された家族は途方に暮れていた。そんな状況でUDIラボが調査した結果、事故にあった原因の一つに「工場での過労」の可能性があることが浮上した。これが確定できれば工場を訴えることができる……そんな話だ。
彼が働いていた工場は、「しあわせの蜂蜜ケーキ」を作っていた工場で、社長の手腕により大人気のケーキとなったが、工場の生産量を上回る発注をこなすために、従業員達が残業をし続けるというブラックな環境となっていたのだ。この状況を甘んじて受け入れていた従業員達……今、この文章を書きながら心が苦しくなってきた。
なにせ彼らが作っているのは、「しあわせの蜂蜜ケーキ」である。このケーキが届ける幸せは、従業員達の犠牲によって出来ていて、そのことを客は知らない。知る由がない。
残された家族の苦しみ、今もなおブラックな環境で働き続ける従業員達。この状況をひっくり返したのは、UDIラボのメンバーだった。ラストシーンで事故に遭った佐野さんの回想シーンが入るのだが、彼にはどうにか生きて欲しかったと思ってしまう。残酷で、美しい物語だった。
第七話「殺人遊戯」も語りたいところだが、是非ともドラマを見て貰いたい。米津玄師「Lemon」のEDもまた最高だし、中堂系のツンデレな感じとか、三澄ミコトの優しさ(とくに第七話は彼女でないと駄目だった)とか、全てのパーツが綺麗に嵌まって構成されているようなドラマだったと思う。
見て良かったなと思えるドラマだった。