※ネタバレをしないように書いています。
愛の物語
情報
監督:クリストファー・ノーラン
脚本:ジョナサン・ノーラン、クリストファー・ノーラン
主演:マシュー・マコノフィー、アン・ハサウェイ、ジェシカ・チャステイン
ざっくりあらすじ
砂漠化など劇的な環境変化によって滅亡へと向かっている地球。そんな地球から脱出するため、人類が移住できる星を探すミッションに選ばれたクーパーは、愛する息子と娘を置いて宇宙船に乗り込んだ。
感想などなど
この映画を初めて見た時、感情が大きく揺さぶられ過ぎて良く分からなくなってしまった。ラストにたたみ込まれる展開によって、感情はグシャグシャになってしまい、正直、良く分かってなかったと思う。
この映画の本質は愛であるということは、二周目になって冷静に見ることでようやく理解できた。愛はSFとは対極にあるように思われるかもしれないが、SFというジャンルを下地に愛というものを映像で描いた挑戦作であり成功作だったのだと、今になってみれば分かる。
その成功の下地には、2014年という時代を感じさせない映像技術があると思う。ブラックホールの中という誰も見たことのない空間を映像化していることは、本映画が挑戦作であり、高い技術を持っているということの証明であろう。
そして何より個人的に驚いたのが、ブラックホールの中を描いたことに物語として大きな意味があったということだ。ブラックホールの中を描くという挑戦をすることは、この映画のストーリーを成立させる上で絶対に避けられないことだったのだ。
ただ技術を見せつける映像作品ではない。それらの技術を駆使しなければ映像化することは絶対にできなかったストーリーであり、映画という媒体を通じてでしか描けない世界が描かれていた。
そんな傑作『インターステラー』について語っていきたい。
この映画のプロローグにて、地球が崩壊に向かっていることが風景や会話から分かる。宇宙に行ったという過去がSFという絵空事として語られ、突如として現れた嵐に見舞われて家に閉じこもるしかできない人類の無力さを知る。
SFといえば科学技術が大いに発展した近未来的な世界観を想像するが、この映画は違うのだろうか? 科学は地球の寿命には抗えなかったのだろうか? という疑問をあっさりと打ち砕くのが、厳重に隠されたNASAの実験施設だった。
そこでは地球が寿命を迎えて人類が滅亡するよりも前に、人類が移住できる星を見つけ出して準備するために活動していたのだという。そんな一大プロジェクトは何十年も前から稼働し、実は既にいくつかの宇宙船が向かっていたのだ。
それら宇宙船は土星の近くに突如現れたワームホールを越えて遙か彼方の星へと向かい、本当に移住可能かを確認してその結果を報告するという重大任務を進めていたのだ。
それらの報告の大半は途絶えてしまっていたが、3つだけ通信が継続していた。つまり、生き残って通信を継続することができる星があるということだ。ここで注意しないといけないのは、地球とはワームホールを隔てた別銀河との通信であるということ。彼らとの通信が継続できているとはいっても、それはリアルタイムの通信ではない。数十年単位での時間の進み方に大きなズレが生じているということ。
今この瞬間、通信が来ていたとしても、その送り主が今も生きているとは限らない。生き残っている通信の情報を見るに、移住できる可能性はゼロではない。その可能性の確認をするためには、改めてチームを派遣して確認をするしかない。
その超重要な任務を、本作の主人公である元宇宙船のテストパイロット・クーパーは引き受けることになる。いわば人類の希望! 人類の命運はクーパーの手にかかっている!
しかし、彼にも家族がいる。
もしも宇宙船に乗って人類が移住できる星を見つけたとする。「よっしゃ、任務達成」と喜んで、そこから地球に戻って来たとしよう。その間に、何十年も経過することになる。娘と息子は成人していることだろう。孫もいるかもしれない。そもそも生きているかも怪しい。
この任務に参加するということは、実質的に二度と会えないことを意味する。覚悟を決めたクーパーと、まだ事実を受け入れきれない娘・マーフとの別れのシーンは、たった一度で終わらない。
どういう意味か?
宇宙船から地球とやり取りをしようにも通信にはラグが発生する。巨大な星の近くを通る場合(ましてや着陸する場合)には、強力な重力の影響で時間の流れも影響を受ける。つまり、宇宙船の上では一年しか経っていないと思っていても、地球上では何倍もの年月が経過していることが有り得る。
地球からの通信で、娘や息子の様子が定期的に送られてくる。彼、彼女の成長は父親であるクーパーの体感を大きく上回ってくる。自分たちがただ移動している間にも、時間の経過で人は死ぬ。時間は止まってくれないことを、宇宙という空間における時間と地球での時間の進みが違うということを、残酷にも突き付けてくる。
時間というリソースを最大限活用し、クーパー達は人類のために任務遂行のために動く。彼らの覚悟の物語を是非とも見て欲しい。
個人的にこの映画を一周で理解することは不可能だと思う。この感想記事は三周くらいして書いている。一周目見た時点で感想を書いていた場合、愛についての言及はできなかったし、もしかしたら「ブラックホールの中を映像化したのはただの技術のひけらかし」と書いたかもしれない。
改めて【技術を駆使しなければ映像化することは絶対にできなかったストーリーであり、映画という媒体を通じてでしか描けない世界】だったと強く主張したい。全てに意味がある映画だった。