※ネタバレをしないように書いています。
オグリキャップの物語
情報
作者:久住太陽
試し読み:ウマ娘 シンデレラグレイ 6
ざっくりあらすじ
世界から強者が集うジャパンカップが開幕。タマモクロスとオグリキャップをはじめとした日本勢は勝つことができるのか!?
感想などなど
天皇賞(秋)での最強と怪物の戦いは、最強・タマモクロスの勝利で幕を閉じた。ゾーンに入って白い稲妻となったタマモクロスの圧倒的な強さは、最強という名に恥じない走りだったと思う。オグリキャップの背後からのプレッシャーも、正しく怪物だった。
プリティ要素どこ……?
そんな疑問をお持ちの方も第六巻(の前半部分)は安心して読んで欲しい。海外からジャパンカップを走るためにやって来たウマ娘達の紹介と、オグリキャップとタマモクロス(とゴールドシチー)らのジャパンカップに向けての意気込みが描かれていく。
海外勢のウマ娘は下記五人。
英国の貴婦人・ムーンライトルナシー
アメリカの巨神・ミシェルマイベイビー
誇り高き美貌・エラズリープライド
欧州王者・トニビアンカ
GⅠ0勝・オベイユアマスター
ベルノ曰く、ムーンライトルナシーは「たぶん良い人」、ミシェルマイベイビーは「常にハイ」、エラズリープライドは「すごい美人さん」、トニビアンカは「本当に学生?」というような感想を語っている。
それぞれ方向性の違うプリティであり、読んでいて楽しい。話の合間に挟まっている小ネタの絵も可愛い。個人的には「早起きして縦ロールをこしらえる低血圧のトニビアンカさん」が好きだったりする(可愛い)。あと近所の子供達に慕われているエラズリープライドも好き。コンビニおにぎりに感動するルナシーさんも好き。普通にゴールドシチーのファンであるエラズリープライドさんも好き。つまりみんな好き。
もう名前を出してしまったがゴールドシチーも登場。オグリとタマモクロスと同じく、ジャパンカップに出走する先輩として、オグリと併走して練習する姿を見ることができる。オグリを後ろ方迫ってくるルーキーとして警戒しつつも、オグリの天然なプリティさに笑みを零す姿は美しい。
そんなプリティの合間に見える、勝負の顔の格好良さには惚れそうになる。その中でも異質なのは、アメリカから来たオベイユアマスターだろう。アメリカでは大した戦績を残せていないため、彼女の情報はないに等しく、しかしながらオグリとタマモを調べ尽くし、彼女らを下すために作戦を綿密に立てている一種の狂気が、これから始まるジャパンカップの苛烈なレース展開を予想させた。
そしてその予想は的中する。
前半部のプリティなウマ娘が、互いに煽り合いながら始まりを待っている。ちなみにオグリキャップは英語が分からないので、何を言われてもクエスチョンマーク状態だ。ゴールドシチーさんは英語がペラペラなので、煽りに煽り返している。頼れる先輩である。
レース展開としての見所はたくさんあるが、まずはオグリキャップが差しではなく先行策を選んでいることだろうか。これまで通りのポジションでは、最後の末脚でタマモクロスに勝てないという判断である。
その策が吉と出るかは置いておくとして。次点の見所は海外勢の体幹の強さだろうか。海外のウマ娘のレースは、身体がぶつかり合うことは普通にあるらしく、日本のレースではラフプレイと取られるような体力の削り合いが起きている。それに慣れていないオグリとタマモは顔を歪める。
それでも二人とも負けていない。とっさの判断で外に出るなどして、その状況を抜け出す。そしてタマモは白い稲妻モードへと入る。もうすっかりそのゾーンを、自分のものにしているらしかった。
これは勝負が決まったか?
その彼女の背後、同じくゾーンに入る者がいた。
それぞれのウマ娘のドラマと、勝負に向ける覚悟とひたむきな姿勢が、レースを面白くしている。誰が勝っても負けても、その勝負の裏には多くの涙があることを忘れてはいけない。
最後まで目が離せない戦いであった。