※ネタバレをしないように書いています。
信念と責任を背負う覚悟はあるか?
情報
作者:外薗健
試し読み:カグラバチ 1
ざっくりあらすじ
刀匠を目指す少年・チヒロは、英雄とされる刀匠の父と共に、毎日厳しくも楽しい日々を過ごしていた。しかし、そんな平穏は唐突な惨劇によって終わりを告げる。奪われてしまった父の作った妖刀を回収するため、戦いの日々が始まる。
感想などなど
刀を単なる殺人の道具としてしか見られないならば、この漫画は読めない。刀をただの鉄の棒きれとしか思えない者も、この漫画は受け容れられないかもしれない。名刀が何故に名のある刀となったかの意味を理解しようとしない者にもまた、この漫画は読めないかもしれない。
……長々と書いたが、そんな者は日本人に少ないので全員読める。
『カグラバチ』の主人公・チヒロは、魂を込めて刀を作る刀匠に憧れている少年だ。第一話ではチヒロと、国で最も有名な刀匠である父・国重と共に過ごす平和な日常が描かれていたかと思えば、唐突に38ヶ月後に飛ぶ。
刀を携えて、顔に出来た傷を隠そうともせず、電車に乗って訪れた街を牛耳るというヤクザの根城に切り込んでいく。血飛沫上げて、身体が二分されていく。モノクロ漫画であるけれど、鮮やかな血が吹き出ているのが分かる。ヤクザの門番が目を向けたら、既にそこに主人公はおらず、一足遅れた怒号が上がる。
あの平和な日々を過ごしていた少年の顔はそこにはなくて、妖術組織『毘灼』への復讐だけを考える鬼の顔がそこにはあった。そんな鬼に向かって、壊滅されたヤクザの頭は「勝機じゃねぇぞ」と言葉を投げかける。それに対してチヒロの答えは簡潔だ。
正気に見えてたのか?
『カグラバチ』は妖術と呼ばれる技術を持つ者が、妖術師として表から裏まで働いているような世界観だ。この妖術師同士の戦争を止めたのが、チヒロの父・国重が作った妖刀だった。
妖刀がどうして戦争を止めることができたのか?
この妖刀があまりに強すぎて、一方的に相手を屠ったからである。第一話、平和な日常から唐突に飛んだ38ヶ月の間に、謎の者達からの襲撃を受けて妖刀を奪取され、その際に父親も殺され、絶望したチヒロは父が命を賭して守った最後の妖刀を片手に、妖刀を奪ったと思われる組織『毘灼』への復讐のため妖刀を集めて回っているという訳だ。
この妖刀の強さは第一話時点では圧倒的なものとして描かれている。妖術を扱えない者は身を守ることすらままならず、気付いたら死んでいるという惨状である。なにせ斬撃が飛ぶ(妖術的に正しい観点かはさておき)。動く。
しかし妖術とはそれほど単純なものではない。
第一話、唯一生き残らされた頭は、チヒロの脅迫によって『毘灼』の情報を吐きそうになった。その瞬間、人間の身体が膨張して爆発、周囲には松の枝のようなものが張り巡らされ、周囲に散らばっていた死体という死体がさらに粉みじんにされている。
松の枝による影なのか、血による黒なのか分からない灰色の空間を歩く黒服の男・チヒロが画になる。もうすっかり、そっち側の人間なんだなと読者に突き付けてくるシーンだったと思う。
上記に示したシーンのように、漫画は印象に残るシーンが多い。
チヒロの持つ妖刀は、刀身を晒すとその周りを金魚が回る。鏡のような刀身に写る少年の目が冷たく写る。とある少女とチヒロの食事シーン、チヒロの後ろでは店員さんの首に割り箸が突き刺さっている。唐突に現れたダルマが爆発……色々オシャレだなと思いながら読み進めることとなる。
妖刀を探すという大目的へ向かって突き進んでいる最中、目の前にシャルという少女が現れた。理由は分からないが、妖術組織『毘灼』はこのシャルという少女も狙っているらしい。
となると、「シャルという少女を守ること」と「妖刀を探すということ」は両立する。シャルの言葉を借りるならば「利害は一致するに限る」。ただ待っていても、妖術師がわんさかやって来る。
第一巻で明かされている情報はあまり多くない。正直、チヒロが持つ妖刀の能力はちゃんと理解していないし、妖術が人間が持つ生命エネルギーの玄力というものを使っているらしいが、そこら辺も良く分からない。
雰囲気で戦闘を見ているし、何となくで勝ったんだなと分かる。
それでも違和感らしい違和感を、少なくとも自分は感じないのは、漫画を読み慣れているが故なのか、はたまたテンポ感の良さ故なのか。個人的には漫画を読んだことない人がどう思うのかを聞いてみたい漫画だった。
