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ガーリー・エアフォースⅩ 感想

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作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

終わりは近い。

情報

作者:夏海公司

イラスト:遠坂あさぎ

ざっくりあらすじ 

ロシアと協力し、ゲートを破壊した慧達一行。祝賀ムードに包まれるが、ザイからの攻撃が尽きる訳ではない。予測できない次の攻撃に備えなければいけない、と気を引き締める。

感想などなど

ロシアとの協力を経て、無事にゲートの破壊に成功した第九巻(ガーリー・エアフォースⅨ 感想)。しかし、あくまでザイによる一つの攻撃を凌いだに過ぎません。

それでも、これまで妙な敵対意識を持たれていたロシアのアニマ達と、グリペンのループを知っている数少ない仲間として引き入れることができたのです。ザイという強大な敵に対して、勝つための小さな一歩を進めることができたのでした。

冒頭は、ミッション成功を祝う祝賀会。みんなが酒を酌み交わし、豪勢な食事舌鼓をうつ姿は、一見すると戦いの終結かのように見えてしまいますが、何人かは心から祝うことができていない人もいるようです。

その内の一人が、本作の主人公である鳴谷慧であり、彼の胸中には、もやもやとした疑問が渦巻いているのです。

 

「ガーリー・エアフォース」におけるタイムループは、いわゆるデータだけの移動です。「ドラえもん」でいうタイムマシンのようなものではなく、「Steins:Gate」のような記憶だけの移動……という説明が分かりやすいでしょうか?

つまり、「現代のグリペンをそのまま過去に送りたくても送れない」ですし、「ザイという存在のデータのみが送られている」という状況だからこそ、グリペンの情報と共に、永遠とループを繰り返すという一見馬鹿げた作戦が行えています。

さて、状況の説明はさておき。今回、第十巻にて問いかけられる命題を、ここでざっくりと説明しておきましょう。

「モンゴルで発見されたイーグルは、何故実態が残っているのか?」

これまで慧達がグリペンのこれまでの記憶から判別したストーリーはこうです。……。

グリペンはザイの核〈求核〉に過去へループするプログラムを注入し、自ら共々タイムループを行いました。その輪廻に巻き込まれたイーグルは千年前に移動し、”今” モンゴルで見つかった。

……ん? いや、質量のある物は送れないのでは? では、上記のストーリーが間違っていたのか?

正解は原作を読んで確認してもらいましょう。

 

今回はロシアのアニマ・パクファが日本にやって来て、てんやわんやする物語となっています。服装はメイド服であり、どうやらロシアでは正装だそうです。ロシアで住みたい……。

そんな彼女はロシア語しか話さず、自分の能力である ”クロマチック・ステルス” という背景に溶け込む能力を駆使して、日本の街へ駆け出す自由奔放ぶりを見せてくれます。

彼女が日本語を勉強する様や、航空隊の面々が彼女と仲良くしようと手をこまねく様は微笑ましいです。

しかし、命題に関しての伏線を張り巡らせ、キャラクターごとの掘り下げも行いつつ、物語の風呂敷を畳もうとしている雰囲気が全体的に漂います。

 

本作の感想を書くに当たっては、明華の存在は書かずにはいられないでしょう。言わずもがな、慧に思いをよせる幼馴染みです。慧は過去のグリペンの記憶を見ることで、彼女の思いに気がついてしまいました。

慧が思いを寄せる相手は、読者ならば分かるでしょう。特に隠されているものでもありませんし。ある意味、慧と明華――二人の行く末はもう決まっていたのです。

しかし、その思いに決着を付けない訳にはいきません。慧はいつ死んでもおかしくない戦場へと向かい、明華は疎開していくのです。別れは遅かれ早かれ来ることが、二人には何となく分かるのでした。

そんな物語の最後の締めが、これまた卑怯で……十一巻が待ちきれません。お涙頂戴のシーンはないのですが、色々と感慨深いシーンの多い物語でした。

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