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ガーリー・エアフォースⅦ 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

ザイの正体が明かされる。

情報

作者:夏海公司

イラスト:遠坂あさぎ

ざっくりあらすじ

バディを撃墜され、F-15Jから降ろされた蛍橋三等空尉。失意に沈む中、彼をスカウトしに枝元室長の知寄蒔絵がやって来て、彼を自らの薦めるプロジェクトに誘う。

彼を待っていたのは、ポルトガル語を操るピンク髪のアニマだった。

感想などなど

前回は異物として発掘されたドーターかと思われる戦闘機とリンクを結ぶことで、何かザイの正体に関して情報が手に入るのではないか・・・・・・ということで、慧とグリペンがリンクを結んだとことで終了。

つまり、今回は戦闘機の乗り主の記憶の物語。これまで分かってこなかったザイに関して、正体から目的、何処から来たものなのか、などなどほぼ全ての疑問が解決します。

もう少し引っ張るかなと思っていたのですが、物語の終焉も近いということなのでしょうか。

さて、物語について深く掘り下げていきたいのですが、ある意味全てネタバレなもので・・・・・・。まぁ、可能な限り書いていこうと思います。

 

まず物語を読み進めていく上で一つ考えて貰いたいことがあります。

今回のリンクすることとなった遺物は千年以上昔のものです。千年以上昔に、モンゴルでは今以上の戦闘機を組み上げたことになるけれど、そんなことはありえない。では、何かしらザイが関わっているはずだ・・・・・・という結論に前回達したはずです。

しかし、戦闘機の持つ記録を辿ってみれば、今と似たような変わらない世界が広がっていました。F-15がザイと空戦を繰り広げ、人類が追い詰められている世界が。

これは何を意味するのでしょうか? 実は千年前の地球にもザイが現れ、世界を滅ぼした? では、その話が現代に伝わっていないのは何故なのでしょう? 人類はその時、どうなってしまったのでしょう?

考えれば考えるほどに、頭が混乱してしまいます。

読み進めていくとさらに大きな問題が出てきます。あらすじにて示した「ポルトガル語を操るピンク髪のアニマ」は何とグリペンなのです。

まとめると、千年以上昔『ザイが襲来し、人類は対抗するためにアニマを作り上げた。その内の一つがピンクが身のアニマ・グリペンだった』ということ。

・・・・・・あれ、これと似たような話、どこかで聞いたような・・・・・・。これは(登場人物は違えど)ガーリー・エアフォースの簡単なあらすじのように思えませんか?

 

ガーリー・エアフォースには読んでいると多くの疑問が浮かんでくると思います。読んでいる人は、それらの疑問が解決されると信じて読み進めていきます。

個人的に一番気になっていたのは、物語における主人公の立ち位置です。

大抵の物語で、最も大切な役割を担うのは主人公であると相場が決まっています。本作の主人公の慧は、グリペンと ”たまたま” 波長が合って、 ”たまたま” 戦闘機に乗ることができて、 ”たまたま” ザイを恨んでいました(まぁ、この世界の人間は全員ザイを恨んでいるでしょうが)。そこに何か作為を感じてしまうのは、自分だけでしょうか。まるでザイに呼ばれているような、気持ち悪さを覚えてしまいます。

今回読んで、「物語の主人公は慧でなくてはいけない」という妙な安心感を覚えました。

 

ここまで読んで、ザイの正体や目的に関して多くの仮説が渦巻いていることでしょう。SFに精通した方などは、分かってしまう方もいるかもしれません。

しかし、これまでガーリー・エアフォースを追っかけてきたならば、とりあえず七巻まで読んでみましょう。伏線が回収されていき、最後のどんでん返しまで楽しんで貰いたい。

これからは風呂敷を畳む作業に入っていくのでしょうか。ただ攻めてくるザイから人類を守る物語はここでおしまいです。これからは、ザイに対して人類が攻める物語が始まっていきます。

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