工大生のメモ帳

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【映画】キサラギ 感想

※ネタバレをしないように書いています。

彼女はどうして

情報

監督:佐藤祐市

脚本:古沢良太

主演:小栗旬、ユースケ・サンタマリア、小出恵介、塚地武雅、香川照之

ざっくりあらすじ

売れないアイドル・如月ミキの一周忌に集まった五人のファンは、彼女との思い出を振り返っていく。話の流れはいつしか彼女の死因について追及していくことになる。

感想などなど

この映画のジャンルを調べてみると、ミステリーとギャグという相反する言葉が横並びになっている。ミステリーというからには視聴者の前に魅力的な謎が提供されることが予想され、ギャグというからには小粋でクスリと笑える展開が立ち並んでいるのではと期待する。

少なくともブログ主はそうだ。ミステリを名乗るからには解決が欲しいし、ギャグというからにはニヤリとできるシーンの一つや二つはあるはずだ。なければ詐欺だ。

しかし安心して欲しい。

本映画『キサラギ』は最初から最後までギャグであり、ミステリーでもある。笑えるし、スッキリする。そんな物語としての完成度を裏付けるように、第31回日本アカデミー賞では優秀作品賞・優秀監督賞・優秀脚本賞を受賞している。

売れないアイドル・如月ミキの一周忌に集まった五人のファンが、彼女のことについて語っていく中で、謎に包まれていた死因が徐々に明かされていく……これまで知り合うことのなかった五人を繋ぐ如月ミキというアイドルを中心にして繋がっていくことで、全ての謎が解き明かされていく。この感動はそう簡単に語れない。

しかし、何とかして頑張って語っていこうと思う。最後まで読んでいただければ幸いだ。

 

まず本映画の面白いところは、視聴者に提供される情報の出し方の巧みさだと思う。

一貫して、とあるビルの最上階にある物置のような一室の中でのみ物語が展開していく。部屋の外の具体的な描写は一切ない。登場人物も五人だけであり、如月ミキという物語の根幹とも言えるアイドルについては、EDになるまで顔すら出てこない。

アイドルの顔が一切出てこない中、五人が語る如月ミキの魅力を聞いていくことで、自分の中で「売れなかったけれど可愛らしく純情な乙女の姿」が形作られていく。そうなるような情報の小出しの仕方が上手いのだ。

そうして巧みに形作られることになる心の中の偶像は「自殺した」という事実でかき消されてしまう。どうにも明るく活発な彼女の姿とは、「自殺」というワードが噛み合わないのだ。彼女の姿は描かれないのに、である。

この噛み合わない気持ち悪さを打ち砕くように「彼女は自殺じゃない、殺されたんだ」というフレーズが飛び出してくる。ここから一気に五人の情報が明かされていき、自らの心に現れた如月ミキというアイドルの姿の線が濃くなっていく。

この一連の流れが、集まった五人の男の会話のみで展開していくこと……改めて脚本が上手い。

五人の内、誰かが真実を知っているという訳ではない。ただ五人の語る情報が繋がっていくことで、彼女が自殺したとされる日が分かってくる。それぞれが漠然と抱えていたモヤが、ゆっくりと晴れていく。

この感覚は紛れもなくミステリーであろう。

そんな五人の会話はウィットに満ちている。そもそも五人は如月ミキのファンサイトでチャット上でやり取りしていたため、ネット上でしか使わないハンドルネームで会話している。本名も名乗ったような気がするが覚えていない。そんな五人のハンドルネームは、それぞれ家元、オダ・ユージ、スネーク、安男、いちご娘。となっている。

ちなみに「いちご娘。」は、香川照之が演じる無職中年男性だ。この時点でちょっと面白い。オダ・ユージは、某レインボーブリッジ封鎖できないドラマの主人公から名前を取ったのではと弄られる。ちなみに演じているのは、その某ドラマで交渉人をすることになるユースケ・サンタマリアだ。

それぞれ五人の意外な過去であったり背景が明かされるのだが、天丼のようなお約束の繰り返しであったり、それまでのツッコミとボケが入れ替わるような展開があったりと、コント的なギミックが入っていたりと飽きない。

この感覚は紛れもなくギャグであろう。

 

あまりストーリーに対する言及はできなかった。実はとある人物が○○○だったりするのだが、そういったネタバレをしてしまうと、この映画を初見で楽しむことができなくなってしまう。

作中の人物と同じタイミングで驚き、同じタイミングで気付く。まだ、そういった見方ができる可能性がある皆さんが、正直、少し羨ましい。見たことを誰かに共有したくなる映画だった。