※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
世界が美しく感じられる
情報
作者:時雨沢恵一
イラスト:黒星紅白
ざっくりあらすじ
喋られるモトラド(注:二輪車。空を飛ばないものだけを指す)エルメスと共に、世界を旅するキノの物語。
「狙撃兵の話」「人を喰った話」「過保護」「魔法使いの国」「自由報道の国」「絵の話」「帰郷」「本の国」「優しい国」
感想などなど
「狙撃兵の話」
この作品の感想はあまりに複雑なので省略する。
「人を喰った話」
季節は冬で、場所は山。”あなた” は乗っていた車に閉じ込められました。自分の国に帰る道中であった ”あなた” は、限りある食料と仲間達と共に、寒く冷たい一冬を越えなければいけません。体の芯から冷え切った ”あなた” は、震える肩を抱き、ジッと動かず、ただ死を覚悟しました。脳裏に浮かぶのは、自分の帰りを待つ家族の姿……時は刻一刻と過ぎていきます。
しかし、お腹は空くのです。
寝ても覚めても外の景色は白一色の銀世界。音すらも吸い込んでいくフワフワの雪を眺め、冬の過酷さを噛みしめました。自然と瞼が降りていき、夢見心地に沈んでいきますが、一度寝てしまえば再び起きることが出来ないと、 ”あなた” は仲間に起こされます。
しかし、お腹は空くのです。
食料が尽きた ”あなた” は一体どのような行動を取るのでしょうか。楽しみですね。
「過保護」
子供ができました。大切に育ててあげようと思います。具体例を挙げるとすれば……そうですねぇ、大学は出て貰わないといけませんよね。この学歴社会において、大学を出ないことなんて考えられません。幼い頃から英才教育を施し、語学堪能、成績優秀、運動神経抜群な子供に育てようと思います。
そして、息子にはしっかりと社会に溶け込んで欲しい……たくさん友人を作って、生き生きと生きて貰いたいです。だからアニメも漫画も見せません。あんなものを見ていては心が荒み、引きこもりになってしまうでしょ? あぁ、勿論ゲームなんて論外ですよね。
友人関係はしっかり考えて貰わないといけません。オタクの友達はいりませんから、何とか拒絶して貰いたいですね。そんなの友人としては認められません。
「魔法使いの国」
実は皆さんに隠していたことがあります。実は自分、魔法が使えるんです。
扉に近づくだけで開けることができます。
スイッチを押せば部屋を明るくすることができます。
ボタンを押せば画面に光を灯すことができ、適当に弄れば「動く画」を映すことができます。
掌サイズの小さな箱で遠くの人と会話することができます。
いやぁ、実は魔法使いだったんですよ。隠しててごめんなさい。だからといって恐れたりせず、今後ともお付き合いよろしくお願いします。
「自由報道の国」
Aさん:30代半ばの男が、拳銃を街中で乱射した。
Bさん:20~40、もしくわ50~60の男性か女性が、街中で拳銃を撃った。
Cさん:パンパンと音が2発鳴り響いて、女性が倒れました。
Dさん:ワンワン……ガルル
Eさん:ナイフを持った女性が男性に襲いかかって、怪我を負って、血を流してました……怖かったです。
Fさん:目を血ばらせた女性が「殺してやる」と叫んで街中を走り回ってました。
「絵の話」
我々は戦争を忘れてはいけない。
多くの人々が死にました。戦争を生き延びた人達の言葉でしか知ることのできない物語はいずれ廃れ、忘れ去られていくのです。所詮は過去のものである……血と死が漂う国の戦争の様子は、想像できるものではない。
でも、戦争を忘れてはいけない。過ちを繰り返してはいけない。
そのために彼は絵を描くのです。血で汚れ、死の蔓延る風景を描ききった作品である……こちらを一千万……いや、五百万円で販売致します。何と、今なら半額の五百万ですよ! このチャンスを逃すわけにはいきませんよ! ここでしか手に入らない絵をあなたに!
「帰郷」
こないだ久々に実家に帰ったら、近所のコンビニとレンタルショップが潰れてました。悲しかったです。
「本の国」
本が好きです。
自分の知らない世界を知ることができる本が好きです。人々の複雑な関係性と心の機微が織りなす物語が溜まらなく好きです。愛しさすら覚える恋愛は、読んでいて飽きません。物語に隠された謎が解き明かされる瞬間は、鳥肌が立ちます。
そんな本との出会いが、私は大好きです。だから、本の感想を書き続けるのでしょう。
……だから、物語を綴りたくなるのでしょう。
「優しい国」
タイトルのまま、優しさに溢れた素晴らしい国のお話です。しかし、自分は絶対に行きたくありません。だって、一生忘れられないですから。