※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
世界が美しく感じられる
情報
作者:時雨沢恵一
イラスト:黒星紅白
ざっくりあらすじ
喋れるモトラド(注:二輪車。空を飛ばないものだけを指す)エルメスと共に、世界を旅するキノの物語。
「道の国」「悪いことはできない国」「歴史のある国」「愛のある国」「ラジオな国」「救われた国」「船の国」
感想などなど
「道の国」
日本の道って綺麗に舗装されてますよね。良い国だなって思います。
「悪いことはできない国」
悪いこと=法律違反……というように単純ではありませんが、法治国家である国ならば法律に違反していない限り法で裁かれることはありません。これまで善悪の概念が異なる国がたくさん登場してきましたが、この国はいつか遠い未来の日本かもしれません。
……いや、というか中国はもうこれになってる?
そんな国を盛大に皮肉った本作、どんなに封じ込めようとしても悪いことなんていくらでもできるのです。
「歴史のある国」
今回はみんな大好き最強師匠の話。これまで細々とした悪いことをしつつ、散々相手の裏を掻いてきた彼女ですが、今回は珍しく(一度は)相手の策略に嵌まってしまいます。
なんと(盗んできた)宝石を売りに行った弟子が、罪をでっち上げられ監獄に投獄されてしまったのです。ちょっとでも金目の物を持っていそうな旅人がいたら、同様のことを繰り返し懐を暖めていたのでしょう。国が共謀しているため、皆が皆諦めて枕を濡らすことしかできなかったのでしょう。
……しかし、今回は相手が悪すぎた。
国家の軍隊が相手だろうが、一切の隙も無く戦いを挑む師匠の勇姿をご覧あれ。
そして、師匠と弟子の二人に国を滅茶苦茶にされたという過去をどのように未来に伝えていくのかまでが物語なのでした。物は言い様、メンツは大事。うんうん、仕方ない、仕方ない。
「愛のある国」
「道の国」の続き。道中で遭遇した国を追われた人々と、それを取り囲み監視する各国の軍隊の物語。
国を出て行かざるを得ない理由……世界的に見ても難民という存在は特段珍しいものではないですし、ある意味キノ達も難民に分類されるのではないでしょうか。まぁ、どこかに定住する気がないので、難民とは一線を画した旅人と呼ばれていますが。
自分がこれまで生活してきた国を捨てるというのは、相当の覚悟、それに準ずる理由があるはずです。しかも軍に監視されながらという奇妙な状況……そんな状況でも愛ってあるんでしょうね。いや、正気を保つために愛が必要と言うべきでしょうか。
「ラジオな国」
このブログの名前、『工大生のメモ帳』って言うんですけどね。いや、どう考えても『工大生』って名前とブログ内容に関連性がないように思うんですよ。だってですよ、記事の全てライトノベルなんですよ。もっと『ラノベのメモ帳』とか……ほらネーミングセンスは置いておくとしてですね、「ライトノベルのブログですよ」という自己主張がないのは奇妙だと思いませんか? だから、実はこのブログ主は「工大生じゃないのでは?」と最近、思うのですよ。えぇ、そうです。実際はもっと年取った社会人だと……まぁ、毎日のようにライトノベルを買って読んで感想を挙げるとなると社会人なみの金銭的余裕がないと無理じゃないですか? そう、このブログは『タイトル詐欺』なんですよ! だから、さっさと『工大生のメモ帳』なんてブログはさっさと消えて無くなるべきですね。
「救われた国」
数々の創作で悪役として描かれがちな宗教ですが、本作では宗教によって誰も不幸にならない世界を描いています。本来、宗教とはこうあるべきなんでしょうね。
「船の国」
今回のメインとも呼ぶべき物語。エピローグを名乗っておきながら百ページ近く割かれて描かれており、なんとキノとシズのダブル主役。基本的にはシズ様の視点で描かれており、「あぁ、やっぱキノはチートなんやな」とか「キノはシズのことが眼中にないんやな」とか新たな情報が判明。
それはさておき。
今回シズとキノが訪れることになる国はタイトルにもなっている『船の国』。海を横断しつつ、魚を釣り、商品の売買で生計を立てる船で生活する人々の話です。
代々、民衆を統べるのは黒ずくめの服に身を包んだ『塔の一族』で、船の甲板で生活していました。一方、民衆達は陽の届かない船内で生活しています。その環境は劣悪と言わざるを得ません。
しかもシズはそこで生活している内に、「船の老朽化が進んでいる」ということに気がつきます。ミシッ……ミシッという不気味な音が響いているため、「いや、考えるまでもなく壊れそうやん」と思うわけですが、生まれた頃からそんな音に慣れている民衆が気付くはずもありません。
さて、かつて国を守るため国王を殺そうとしたシズは、今回も民衆達を守るために案内人であるティーという少女と共に行動を開始します。
そんなシズの前に現れるは、かつて戦って負けたキノ。どうやら『塔の一族』の側についているようです。キノが敵側だと結構な絶望感があるものですね……良く言えば柔軟な発想、悪く言えば狡猾な戦略は、流石はあの師匠の弟子だなと感嘆の声が漏れます。
そして、いずれ滅びる国が辿る結末とは。