工大生のメモ帳

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キーリⅧ 死者達は荒野に永眠る(上) 感想

【前:第七巻】【第一巻】【次:第九巻
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※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

幸せだった、あの頃を

情報

作者:壁井ユカコ

イラスト:田上俊介

ざっくりあらすじ

父親に会えることとなったキーリは、ハーヴェイ、兵長と一緒に首都へと向かう。移動の列車でヨアヒムも同行。この首都行きが、彼らの運命を決める。

感想などなど

キーリとハーヴェイ、兵長にベアトリクスの旅の終わり、その序章が幕を開けました。あとがきでも「物語には終わりがあるべきもの」だと書かれていて、「あぁ、終わってしまうんだな」と感慨深いものがあります。

物語の集大成に相応しく、これまでの物語で描かれてこなかった過去が明かされていきます。例えば、

『キーリの母について』

キーリⅡ(キーリⅡ 砂の上の白い航跡 感想 - 工大生のメモ帳)にてキーリの母が船に乗って、キーリをつれて逃げた末、死んだことが分かります。では、一体どうして逃げることになってしまったのでしょうか。

今回、キーリの父と会うことで……いや、父は過去の出来事を隠すつもりだったようですが、キーリの幽霊が見えるという能力によって判明します。その残酷な過去と、人間の闇の部分が顔を出しました。

『ユリウスについて』

上に同じくキーリⅡにて、キーリと一緒に遊んでいた少年・ユリウスを覚えているだろうか。その後も度々登場し、キーリと相対する教会側の人間であることが判明しています。

キーリが父と会うために向かった首都。そこではユリウスも住んでいました。どうやら教会において、それなりの地位に就いている神官の息子であるようです。彼にとってハーヴェイという不死人は、教会が殺すべき敵であり、キーリが恋する相手……幼き少年が神について考え、紡いでいく物語は必見です。

『ヨアヒムについて』

彼とハーヴェイの因縁は長く続きましたね。記念すべき第一巻であるキーリ(キーリ 死者達は荒野に眠る 感想 - 工大生のメモ帳)にて教会側につく不死人として登場し、キーリと共に旅をするハーヴェイにしつこい程つきまとい邪魔し、肉体をズタボロにされながら足掻き、生き続けた怨念のような男。

彼は結局の所、何を求めていたのか? 何を考えていたのか? 何故、今回もキーリ達についていくことを選んだのか? 彼の心については、推測することしかできないでしょう。彼が考え、突き進んだ行く末を是非とも見て貰いたい。

『ベアトリスについて』

いつの間にか(一見すると)幸せそうな生活を手に入れた彼女。魔女として殺され、しかし死ぬことができなかった彼女。その、どう足掻こうとなくならない過去を背負い、今は首都にいる彼女が幸せを掴むことはあるのだろうか。

物語中盤、彼女の過去の記憶が描かれる。戦争が起きる様子もなく、当然彼女は不死の存在という訳でもなく、幸せな家族の光景……ただ平凡とも言える光景で目が潤むとは思えませんでした。世界観的に幸せな光景が想像しにくいだけに、心が抉られてしまいました。

 

ただ辛く残酷な設定に世界観。その中にある幸せを追い求め、登場人物のみならず、背景のモブ達も動いているのです。

「神様なんていない」とキーリは何度も言います。何も与えてくれない神様なんて、と。これまで散々な扱いを受け、幽霊が見えるために死後の世界を信じることができない彼女にとっては至極真っ当な意見と言えるでしょう。

教会が過去にやってきたこと……不死人を作りました。そのせいで失敗作が下水道で跋扈しています。貧富の差は広がりました。しかし、戦争の際に人々に食事を提供していたのは教会でした。縋る者を失った人々が駆け込んだのは、神に祝福された教会でした。

宗教、教会、歴史について様々な要素が詰め込まれた物語。終わりが近づくにつれて心が抉られていくような感覚と感動が胸を打ちます。細部まで作り込まれた物語の結末を是非見て欲しいと思います。

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