※ネタバレをしないように書いています。
誇りを持って生きるということ
情報
監督・脚本:ウェス・アンダーソン
主演:レイフ・ファインズ
ざっくりあらすじ
移民で無一文の少年・ゼロは、名門ホテル『グランド・ブダペスト・ホテル』のボーイとして働き始める。そんな彼は当ホテルの初老のコンシェルジュ・グスタヴに気に入られ、仕事を教えられることとなる。
感想などなど
この映画を見ての一番感じたことは、画としての強さだ。名門ホテル『グランド・ブダペスト・ホテル』の名門たる所以が散りばめられた外観、部屋から廊下に至る全ての洗練された背景。そこを颯爽と歩き仕事をこなすコンシェルジュ・グスタヴまでもが、一種の芸術のようにオシャレなシーンが連続していく。
そもそも1人の作家が聞いた話を語るという伝聞形式であるが故、語り口もウィットに富んでおり、こちらもまたオシャレだ。
ストーリーもまたオシャレである。大富豪の死、ホテル継続の危機、大富豪殺害の濡れ衣を着せられたグスタヴの投獄からの逃亡、真犯人を追い詰める……100分という時間に詰め込めるだけ面白い要素を詰め込んだような怒濤の展開が、世界観によって無理なく進んでいく。
作中でたくさんの人が死ぬ。文章であらすじだけ見ると無惨でむごたらしい映画に見えてしまうのではないだろうか。それくらい結構な数の人が死んでいる。しかも結構な死に方を。
それでも残酷だったという感想は抱かない。死ですらオシャレだった。
そんな映画の感想をもっと深掘りしていこう。
架空の中欧の国ズブロフカ共和国である。皆さんはヨーロッパの名門とされるホテルに泊まったことがあるだろうか。残念ながらブログ主にはそのような経験はない。しかし、きっと本映画で描かれるような洗練された空間がそこにはあるのだろう(たまにサボってるボーイがいたりするがご愛敬)。
その国には移民が多数いたり、軍の権力が強かったりと、不穏な社会情勢であった。主人公であるゼロは移民としてやって来た少年であり、そのことを軍に目を付けられて、強制送還されそうになるシーンもある。
そんな彼を自らの誇りから守り切った男が、コンシェルジュ・グスタヴであり、ホテルを中心に発生する事件を解決に奔走して、投獄され、殺されかけ……それでも『グランド・ブダペスト・ホテル』のコンシェルジュであるという誇りを決して捨てず、文明の微かな光であり続けた男である。
思い返してみても、「これほどのことを100分で描ききったのか?」と思うくらい、彼の生き様は壮絶であった。(最高のサービスを提供するために)死にかけの大富豪と肉体関係にあったことは序の口に過ぎない。その大富豪が死んでから、その遺産争いに巻き込まれてからの怒濤の展開は目まぐるしい。
この遺産争いによって死にすぎるくらい人が死に、グスタヴは全てを丸く収めるために奔走した。そのためならばスキーだってするし、脱獄するために穴だって掘るし、変装だってするし、香水だってちょっとだけ我慢できる。「香水がないなら出ない!」と駄々をこねることもあるけれど、それはご愛敬。
そんな彼を支えたゼロのことも忘れてはいけない。彼もまた付き合っている彼女・菓子職人アガサも守りつつ、グスタヴのために奔走した。コンシェルジュとしての誇りや生き様は、こうして引き継がれていくのかと勝手に納得しつつ、あっという間に物語は終幕へと向かっていく。
申し訳ないが、この映画の細かなストーリーは記憶に残っていない。しかしながら印象に残っているシーンはたくさんある。猫を窓から投げ捨てたヤベー奴とか、スキーを滑っての逃走劇とか、男が何人も集まって穴を掘るシーンとか、まず最初に香水を欲するオッサンとか……色々。
とにかく満足度が高く、画が強い映画だった。