工大生のメモ帳

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ケモノガリ 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

才能を求めていた

情報

作者:東出裕一郎

イラスト:品川宏樹

ざっくりあらすじ

東欧小国で修学旅行中の生徒達が拉致された。犯行グループは財閥の好事家による「狩猟クラブ」であり、彼らに狩られるための餌として連れてこられたのだった。GPSを体内に埋め込まれた彼らの逃走劇が始まる。

感想などなど

狩猟とは食料を得るための手段である一方、生き物を狩るというスポーツ的側面も兼ね備えているようだ。人と獣の命を賭けた知恵比べ……そう考えると、なるほど、崇高なスポーツのような気がしないでもない。

そんな狩猟において、「どうせ狩るならば同種の方が良いのでは?」と疑問を呈する者がいたらしい。それは倫理に反するという反論が出ることだろう。警察に捕まる、と考える者もいるだろう。

しかし、そんな倫理観をすっ飛ばして、国――いや世界の上層部に君臨する人達は、「それでもやろう」と決めてしまった。それこそが、今回主人公達が戦うこととなるクラブである。

「人を狩る」ことを喜びとし、殺戮を楽しむ者達が集う戦場に挑む高校生達の物語を見ていこう。

 

舞台は東欧にあるレントブロア共和国。つい最近、戦争により独立を果たしたばかりの小国に修学旅行で行くこととなった主人公達一行は、バスの移動中に怪しげな連中に眠らされ連れて行かれることとなる。

その犯人こそが『人を狩るためのクラブ』であり、連れて行かれた理由は『狩られる側の人を用意するため』だ。眠らされていた主人公達が目覚めた時には、他のクラスメイトは全員殺された後という絶望的な状態からスタート……とかなり早く物語は展開していく。

それから人は次々と死んでいく。殺され方は様々、首を切られて死ぬ、銃で蜂の巣にされて死ぬ、毒に犯されて死ぬ、首を跳ね飛ばされて死ぬ……敵も味方も関係なく次から次へと死んでいくため、読んでいて『死』というものに慣らされていくような感じがした。

 

武器を持たない高校生達が生き残る上で鍵となるのが、主人公である赤城楼木だ。

ここで一つ、読者に聞きたいことがある。

「自分が殺されるという状況で、相手を躊躇わずに殺せるか?」

付け加えるならば、『相手の弱点を的確に攻め』、『冷静に状況を分析しながら』、『素早く一瞬で殺す』ことができるだろうか? 例え、必要に迫られていたとしても、できる人はいないと思う。

ただし赤木桜木は、それらができる。彼は登場してすぐに、暗闇で縛られている状況から拉致されたことを察し、決して泣きわめくなどのことをせず寝たふりをして、やって来た人の首を絞めて殺している。これを高校生がやってのけたのだ。

平凡な高校生が持っていた唯一の才能――人殺しの才が発揮され、『狩る側』が『狩られる側』に変わっていく物語を是非とも見て欲しい。また、そのまま狂気の渦に呑まれることなく(ある意味呑まれいてるかも)、好きな人のために拳を握りしめている様は好感が持てるし、人殺しと言えど応援したくなる。

 

本作において、魅力的な敵も登場する。

ただ人を殺すことに喜びを覚える三人の狩る者。『ポイズン・ウィドー』『ハリウッド・スター』『ロビン・フッド』……彼らとの手に汗握る死闘は、何度も読み返したくなるほどのものだった。

血と狂気に満ちた戦場へようこそ。

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