※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
殺意を覚えまして
情報
作者:東出裕一郎
イラスト:品川宏樹
ざっくりあらすじ
コリキア・リンドマンを殺してから二ヶ月後。CIA所属のシャーリーと共に ”クラブ” の人間を刈り続ける赤神楼樹。今回の相手はドイツ人のマクシミリアン・ルートヴィヒ伯爵ことブライトクロイツ城の城主……赤神は ”ケモノ” を殺すべく城に忍び込む。
感想などなど
第二巻の話を少しさせて下さい……皆さん、二巻面白すぎません? 敵の絶望感もさることながら、ロキ(=赤神楼樹)が英雄になるまでの流れは完璧ですし、怒濤の伏線回収からラスボスの登場は燃えました。
そこから迎えた第三巻ッ! 期待せずにはいられないでしょう!
その期待は裏切られることなく――かなり変化球でしたが、高いハードルを越えてくれました。
本作の魅力は構成だと言えます。戦闘シーン、伏線回収、オチに至るまでが無駄なく綺麗に綴られています。べた褒めですが、嘘をついているつもりはありませんので。
今回の戦闘の舞台となるのは、ブライトクロイツ城と呼ばれる城です。この城は地元では ”苦痛の城” と呼ばれているらしく、張り巡らされた罠により侵入者は誰一人として許さない城といて有名なようです。
城に罠……創作においては定番ですが、城主が変人というオマケが付いてきます。本作も例外には漏れず、城主は変人を究めた男でした。元々 ”クラブ” に所属している時点で、頭のネジが一本か二本飛んでいるような気がします。
といっても城主らしき何かは、出てくるようで、中々姿を出してくれません。赤神楼樹と最初に戦うのは、防具を着けた犬ですし、忍び込んだ楼樹を襲うのは、仕掛けられた罠で、中に入ったと思っても、偶然やって来た観光客と共に部屋に閉じ込められ、怪しげなクイズを解くこととなる。
……クイズ? そう、クイズだ。しかし、ただのクイズではない。間違えると確実に死ぬ。圧死、水死、毒死、落下死――と死のバリエーションも豊富に取りそろえられ、観光客が次々と死んでいく様は読んでいて辛くなる。改めて楼樹の異常さも際立つこととなる。
異常な状況に対する冷静さ、死んでいく人に対する視線と、すぐに気持ちを切り替える冷徹さ。さすがは殺人の才能に愛された男……常軌を逸していた。
敵の狂気もまた、常軌を逸している。
本作では多数のキメラが登場する。例えば、鋼鉄製の鎧を着込んだゴリラ、右腕を改造された熊、歯が小刻みに回転振動するワニ、背中に機関銃を乗せたコモドドラゴン……キメラという表現が正しいか分からないが、酷い施術が施された生物となってしまっていることは分かるだろう。
しかし、これらよりもっと狂気に満ちた存在が生み出されていることを、読者は知ることとなる。それらを阻止しようと奮闘する者の希望をあっさりと打ち砕く存在を知ることとなる。
敗北者には死に方を選べない……そんな残酷な現実を突きつけてくる展開が待っている。これから読もうとしている人の期待は裏切らないことを約束しよう。