※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
殺意を覚えまして
情報
作者:東出裕一郎
イラスト:品川宏樹
ざっくりあらすじ
聖父が集まる島を突き止め、乗り込むべく作戦を立てる。赤神楼樹にシャーリー、イヌガミ、ローマ法王面々などこれまで共に戦ってくれた面々と共に、最終決戦が幕を開ける。
感想などなど
第七巻、いよいろ “クラブ” との戦いは最後の舞台。どのような結末を迎えるのか、着実に風呂敷を畳んでいく戦いを見ていこう。
ケモノガリにおいては決着を付けるべき因縁が何個か存在しています。分かりやすいのは『ケモノを狩る赤神楼樹』と『楼樹と同種だと言い放ったアストライア』だろうか。彼ら二人は第三巻で戦い、決着はつきませんでした。遅かれ早かれ、彼ら二人は戦う運命にあるのです。
また、アストライアが『人類最強』と呼ぶ男サイクロプス・ジャックと赤神楼樹の間にも因縁があると言ってもいいでしょう。クラブを破壊させる上で、絶対に戦わなければいけない相手です。
他には『弟のイヌガミ』と『姉のゲルト(ロートケプヒェン)』の因縁。彼と彼女は互いに愛し合い、だからこそ殺し合うこととなりました。二人(一人と一匹)もまた、これまで度々戦いながら決着はついていません。最終決戦の場で出会い、愛を示し合う――一種のコミュニケーションとも取れる殺し合いをすることとなるのでしょう。
さて、当たり前のように最終決戦が幕を開けるように書いていますが、乗り込むことも簡単なことではありません。
”クラブ” 上層部が集う島には対空装備(対空ミサイルなど)が配備され、海には機雷が多数、 ”快楽提供者” の数々がそこら中にいるという地獄絵図。人工衛星で監視しようとするとよく分からない技術で破壊されるという徹底ぶり。ひぇっ……もう入る方法ないじゃんか。
しかし、そこはCIAに代表されるこれまで戦ってきた仲間達の協力がありました。その辺りの作戦立案は、これまでの戦いを思い起こさせ、人類はまだまだ捨てたもんじゃないな、と思わせてくれるようなものとなっています。
と言っても、最初に島に潜り込める人員は、シャーリー・イヌガミ・赤神楼樹を含めて十人。敵の包囲網を掻い潜り送り込めるだけの最高戦力を見極めて、最善を尽くそうとするのでした。
そんな彼らはギリギリ島に上陸できました。当たり前ですが、戦いの本番はそこから。
やるべきことは大きく二つ。
一つ目は『敵の ”快楽提供者” や上層部を殺す』こと。 ”快楽提供者” を一人でも逃してしまえば街一つが軽く滅びます。上層部を取り逃せば、再びクラブが復活してしまうやも知れません。一人であろうと逃がすことはできません。
二つ目は『武力放棄させる』こと。島を調査している過程で、 ”クラブ” が核ミサイルを所持していることが判明します。クラブは人を狩ることを趣味で行う組織。いざとなれば核ミサイル発射を躊躇うことはないでしょう。 ”クラブ” に解体させる際には、武力解放は必要不可欠なのです。
まとめると『クラブを潰しながら、核ミサイルを発射されないように牽制する』ことが必要となるのです……あと何人残っているのか考えたくもありませんが、たったの十人でそれほどの仕事ができるのでしょうか。
これ以上はネタバレになると思うのであまり語りたくはありません。しかし、この作品の素晴らしい点としては構成の綺麗さが挙げられます。これまでの作品で立てられたフラグや伏線をしっかりと回収し、説得力を持って描かれる展開は感動すら覚えます。