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※ネタバレをしないように書いています。

二つの世界と二つの正義

情報

作者:賀東招二

イラスト:村田蓮爾

ざっくりあらすじ 

海に突如として異世界と繋がる穴が現れた。新たな人種や価値観が現れ混乱する世界で、蔓延する新しい犯罪の数々。サンテレサ市警のケイ・マトバは、ある日、異世界の騎士ティラナ・エクセディリカと共に合同捜査を命じられて、罵り合いながらも共通の敵を追っていく。

感想などなど

「フルメタル・パニック」「天城ブリリアントパーク」の作者である賀東招二による刑事ドラマ的ライトノベル。どうやら実在する海外ドラマ「DRAGNET MIRAGE」を元に作成した作品……という体で書かれているらしい。あとがきでは「DRAGNET MIRAGE」のこと細かな設定や、エピソード名が書かれ、現在は第三シーズンまで放映されているということになっている。危うく信じそうになった(というかAmaon Primeで検索して探してみた)。

作品全体に海外ドラマ的ノリが漂っている。また、ライトノベルにしては珍しく、本格的な刑事ドラマ的ノリもある。

そんな作品のノリが伝えられるように書いていこう。

 

この作品では『現代社会』と『異世界(作品内ではセマーニ世界と呼ばれているが、ここでは異世界と呼ぶことにする)』が交錯した設定となっている。『現代社会』に関しては説明はいらないだろう。『異世界』と繋がっているという設定以外は変わりない。

問題は『異世界』だ。ラノベの読者が『異世界』と聞けば、ゲーム世界だったり、中世ヨーロッパの外観を想像することだろう。しかし本作において、主人公達は異世界に一歩も足を踏み込まない。つまり、『異世界』の様子や文化に関しては伝聞形式で描かれることとなり、外観については想像で補うこととなる(今後行くことになるかもしれないが)。

その情報は『異世界』の文化や歴史、技術などかなり細部まで作り込まれている。戦争が最近まで行われ、日本で言うところの切腹のような考え方があり、貴族が力を持ち(ちなみにヒロインであるティラナ・エクセディリカは貴族の出)、妖精が存在する。

海の上に現れたゲートから出てくる船はどれも木製であり、風を読んで帆を立てている。万有引力の概念も、相対性理論も存在しない。発展が遅れた途上国と同様の扱いを一時受けることとなる。

しかし、『異世界』では魔法が存在している。科学では決して解明できない魔法が、科学で発展を遂げた世界に入ってくるとどのようなこととなるか? これまで魔法しか知らなかった異世界人が、科学の世界を知るとどうなるのか?

その疑問は本作を読んで確認して貰いたい。

 

ここで事件の概要を説明しよう。

簡単に説明すると「全く新しい麻薬が世間に蔓延る」というものだ。この事件における最大の問題は、その麻薬の作り方にある。

なんと『妖精』の死体を素材にしているのだ。

『異世界』において妖精は、ただの動物としてペットのような扱いを受けている訳ではなく、妖精達が一つの国として存在しており、我々が言うところの狩りとは全く違う。『異世界』において妖精を殺すことは、国家間の信頼関係を大きく揺るがす深刻な問題となるのだ。

そんな信頼関係の回復、もとい条約に則りやって来たのが、本作におけるヒロイン・ティラナ・エクセディリカだった。当然、躍起になって、かなりの思い入れと共に捜査に参加することとなる。

当然だが『現代社会』においても深刻な問題となる。どうやら妖精は犬や猫と同等な扱いらしく(ただ表社会では流通していない)、妖精を守ろうという意思もあまりない。また、麻薬捜査の延長線上にしか考えていない節がある。

そんな妖精に関して捜査するケイ・マトバもそんな一般社会と考え方は大差ない。しかし、作品の冒頭、妖精の密輸入に関する捜査で相棒を殺される。そのため、一連の事件にかなりの思い入れを持ち、捜査に参加していく。

『異世界』のティラナ・エクセディリカ、『現代社会』のケイ・マトバ。

二人の利害関係が一致した瞬間である。

 

こうして二人は事件の捜査をしていくわけだが、価値観や捜査に対しての認識が大きくことなっている。

まず『異世界』において明確に言ってしまえば捜査という感覚が伝わっていないように思う。刀を持った貴族である彼女は、「脅せばいいのでは」という意識が滲み出ている。

しかし『現代社会』において犯罪は法律によって裁かれる。当然、捜査にも手順というものがある。逮捕するにしても、抵抗でもされない限り、私怨で殺しては駄目だろう。

そんな捜査に対する意識だけではない。常識も大きく異なってくる。

『異世界』では魔法が存在する。今回の事件でも魔法が使われ、魔法の知識から犯人に対する情報を引き出していくこととなる。

一方『現代社会』では科学捜査が主となる。司法解剖の結果から、犯人の特徴などが分かっていくこととなる。

こうして凸凹でありながらも、互いの弱点を補う形で捜査は進んでいく。

まぁ、最初は互いに色々なことを言い合い、意見の食い違いも起きた。それでも段々と仲良くなっていく過程は、読んでいて心地が良い。斬新なミステリの形として楽しめる作品でした。

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