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【漫画】ザ・ファブル(16) 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

プロやからな――

情報

作者:南勝久

試し読み:ザ・ファブル (16)

ざっくりあらすじ

二郎が組長を毒殺し、砂川の思惑通りにことが進みつつあった。ファブルと同じ組織の顔役・山岡は、そんな砂川に協力していくが――。

感想などなど

砂川の依頼で山岡が用意したフリーの殺し屋・二郎は、「組長か若頭のどちらかを殺して欲しい」という依頼を見事に遂行した。検死の結果、急性肝硬変を起こした――つまりは殺人ではないと診断された。

つまり完全に砂川の思惑通りにことは進んでいる。

現若頭・海老原が繰り上がりで組長となり、空いた若頭の枠に砂川が入る。そこで組長が死ねば、繰り上がりで砂川が組長になるということだ。そこまでなってしまえば、砂川に逆らえる者はいない。ファブルのボスもコンタクトを取ってくる、砂川の望みは全て叶うという寸法だ。

しかし、世の中そう上手くはいかない。

まず海老原は組長の死を疑ってかかった。直前まで焼き肉屋で一緒に食事をしている時は元気だった。急性肝硬変といっても黄疸が出たりといった段階があるはず。今回の死の裏に殺人の匂いを嗅ぎつけた訳だ。

そんな疑惑を佐藤に話し、彼はその考えに同意した。同じ組織の人間や、同じ匂いの人間が街を出入りしていることに勘づいていた佐藤。あれらも組長殺しの前準備だと考えれば納得できる。

おそらく砂川が裏で手引きしていると察した海老原だったが、責めるにしては証拠がない。親殺しという御法度を許すことはできない。

砂川と敵対していた幹部の一人・水野が、もしかしたらボロを出すかもしれないと語る佐藤。これから幹部、若頭、組長と上り詰めていくとなると、砂川からしてみれば避けては通れない水野との争い。その当たりを監視することで、何かしら確証が得られるかもしれないという訳だ。

そしてその予感は的中する。さすがは最強の殺し屋という訳か。

 

砂川の次の一手は、「水野を引き入れるために脅しつける」というものだ。それをするのは当然ながら山岡である。といっても顔役である彼が直接出張ってくることはそうそうない。映画監督のように上に立って指示を出すのが、彼のやり方だ。

彼は早速、中国で仕事をしていた殺し屋を二人日本に呼び出した。一人は用事があるので遅れるようだが、もう一人は無事に帰国。早々に仕事に取りかかった。変態にして性欲の権化のような男・水野が、お抱えの社長達と興じる乱交パーティが終了後にカチコミし、水野の部下をぶち殺す。

その仕事はあまりに見事。拳銃が本物か、偽物かの判断は殺し屋に標準装備されている特殊技能なのかもしれない。そして銃口を向けられたことを察する程度のことできなければ、命がいくつあっても足りない。

対する水野の態度は肝が据わっていた。ついさっきまで乱交していたため、その格好は酷いものであるが、部下が銃で撃たれても気にしている様子はなく、状況を冷静に分析して、むやみな抵抗はしなかった。相手との力量を測ることは、生きていく上で重要な力なのかもしれない。

こうして砂川の思惑通り、水野は砂川に強力することと相成った。幹部の中でも実力上位の者達が手を組んだ訳だ。海老原が組長になるということは覆らないが、それにしたって状況は悪い。

海老原に殺し屋が差し向けられる日も近いかもしれない。

 

組長が死んだとて、本当ならば佐藤に火の粉が降りかかるというようなことはないはずだった。そもそもファブルのボスと組が結んだ契約は、そういった内容だったのだから。

しかし佐藤達には組長や海老原には恩があった。だからこそファブルの関係者が街にいるというような話や、海老原の相談にも乗ったのだろう。ただ組のメンツに関わる事件、海老原が佐藤達に救援を求めるとは考えにくい。

このまま目を背けていれば、普通の生活だってできたかもしれない。

しかしそれを許さない者――ボスの最高傑作と名高い佐藤達と戦いたいという者達もいた。それが砂川の話に乗って仕事をこなす山岡である。彼は佐藤明の顔を是非とも拝んでみたいと何度も語る。そのために佐藤洋子の情報も調べ、彼が気に入っている同僚もしっかりと調査した。

どのように殺すか? どのように殺されるか?

山岡が本格的に動き出し、不穏さが増していく佐藤の環境。山岡の本気が見られる日も近いかもしれない。緊張感のある十六巻であった。

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