※ネタバレをしないように書いています。
絶望と仲良く
情報
作者:つくみず
試し読み:シメジ シミュレーション 01
ざっくりあらすじ
中学生の頃に引き籠もっていたら、頭からシメジ二本が生えてきた月島しじま。生まれつき頭に目玉焼きが乗っている山下まじめ。二人のほのぼの高校生活。
感想などなど
つくみず作品の世界観は、つくみず氏にしか描けない。ひとまずあらすじを眺めて欲しい。頭からシメジが二本生えている女子高生と、頭に目玉焼きが乗っている女子高生を想像し、それらが当たり前のように受け入れられている世界を夢想して欲しい。
できるだろうか。できないはずである。
この漫画の世界において、頭に目玉焼きが乗っていることも一つの個性として受け入れられる。無論、引き籠もっていたらシメジが生えてきたとしても、それも一つの個性として数えられている。二巻の話にはなるが、常にタコと生活している女子高生や、頭にサメを被っている女子高生も出てくる。言うまでもなく、それらも個性だ。
そんな見た目の奇抜さだけでなく、中身もぶっ飛んだ学生が多い。
国語の授業で音読を頼まれて歌い出す女子高生……まぁ、これは現実でもいるかもしれない。そんな世界を舞台にして描かれる内容というのが、月島しじまと山下まじめが友達になるまでの過程を描いているというのだから面白い。
だが、一重に友達になるといっても簡単ではない。
月島しじまは元引き籠もりである。「中学一年の時 色々あって学校がいやになり そこから二年間押し入れに引きこもった」と書かれている。もしかしたら虐めがあったのかもしれないし、何かそりが合わなかったのかもしれないが、とにかくそういった詳細は定かではない。
それでも「高校受験しなきゃ」と思い立って、合格して高校生になるのだから、いまいちよく分からない性格をしている。消極的なのか、積極的なのか。相反する行動が噛み合ったような人生を送っている。
それに対して山下まじめは、引きこもった経験はないようだ。だが、積極的に行動した果てに消極的な結果が待っているような人間であるらしい。高校に入学した初日から、友達を求めて月島しじまに話しかけた。だが、対人関係に非協力的な月島しじまの拒絶に合い、他の人に話しかけて見るも玉砕。
……悲しい。友達なんて頑張って作るものでもない……と本人たちも話している。
「友達って何だろ」「でもそんな契約みたいに なりましょうってなるものじゃなさそう もっと自然にというか」「難しいな……」
もうそんな感じでトークできる時点で友達と言って良い気もするが、まぁ、置いておこう。
そんな二人の日常は、基本的にだらだらしている。入った部活は『穴掘り部』。顧問であるもがわ先生が、穴を掘っているのを眺めるという文化部である。非常に文化的だ。本当に全く関係ないが、『女囚701号 さそり』を思い出してしまった。
部活を終えた放課後、部活が中止される試験期間は、試験に備えるため、ファミリーレストランデビューしたり、月島しじみの姉に勉強を教えて貰ったりという日常シーンが続いていく。その延長線上に、月島姉が作った謎機械による夢空間での冒険が入ってくる。
日常とSFがシームレスに繋がっていく。
その感じがたまらない。ときおり入ってくる、見開きの一枚絵が印象に残る。少女終末旅行とは一味違うつくみずワールド作品であった。